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許さないと言われても

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「クソがっ!!」

 ドカッとモヤつきをそのままに車に乗り込むと、ドアを閉めて運転席に回ったリックが何か言いたそうな顔をしてくる。

「……何だよ」

 睨みつけると、リックは首を振って前を向いた。
 結局、リューラを拒みきれなかった自分に腹が立つ。
 俺があいつをちゃんと正しい方向に導いてやらないといけないのに。

「旦那様からの言付けをお話してもよろしいですか?」

 いつもより慎重な物言いのリックに耳を傾けた。

「明後日の昼食はリオッター家の方々がお見えになるそうです」

 その言葉で俺は動きを止める。

「方々?」
「えぇ。初対面、ということになっていますね」

 車が動き出して俺は窓の外を眺めた。
 近衛兵がピシッと姿勢を正していてその間を車は抜けていく。

「サフィナと初めて会ったフリしろって?」

 遠くで聞こえる騎士たちが鍛錬をする声と剣のぶつかる音。

「さぁ、それは私は存じ上げませんので」

 咲き乱れる花とはアンバランスだが、これがリューラの住む世界だ。
 リューラの言葉一つでこの花は増えていくし、逆に兵たちだって戦闘を始める。
 それにもう俺の縁談話はかなり進んでいるらしい。

「……どうしろってんだよ」

 シートに凭れ掛かって目を閉じた。
 俺なんてただの公爵子息だし、あんな公爵家としてもかなり格上の縁談なんて断れるわけがない。
 いくらリューラが「許さない」って言ってもこれはどうにもできないことだ。
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