わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい

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おかしい

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「調子に乗るなよ」

 力を込めて押してやると、さすがに女の足も堪えきれずに下がっていく。
 すぐに躱したのを追うと、キンと剣のぶつかる音が響いた。
 激しくぶつけ合っても女はまだ音を上げない。
 こんな本気でやれるのは久々だった。
 楽しく思いながらも汗が滲んでしっかり剣を握る。
 女も握り直しているその一瞬の隙をついて剣で思いっきり弾くと、女の剣は空高く飛んだ。
 それでも拳で来ようとする女の拳を左手で受けて足を払う。
 地面に倒して顔の横に剣を突き刺してやると、クルクルと弧を描きながら落ちてきた女の剣もカランと音を立てた。

「……さすがね」

 息の上がった女の言葉で周りは一気に歓声を上げる。

「お前も……女にしとくにはもったいねぇな」

 女の上から退いて手を差し出しやると、女は笑いながら俺の手に掴まった。

「それは差別発言じゃない?」
「差別ってか区別だな。女だと力はどうにもなんねぇだろ?」

 立ち上がって二人で笑っていると、遠くから執事服を着た男が走って来るのが見える。
 こんな場所にそんな黒のフロックコートとグレーのストライプ入りのパンツで来るのはリックくらいだと思っていたが黒髪でまだ二十代に見える男は焦ったようにこっちに向かってきた。

「ちょ、ちょっ!ちょっっ!!」

 その必死の形相は見てはいけない気もする。

「サライド様じゃないですかっ!!」

 女の剣も気にせず走ってくると、執事服の男は女に慌てて言い寄った。
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