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おかしい

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 吊りバンドと靴も持った俺を見てもう一度小言を言うと、やっとリックの淹れたお茶に手を伸ばした父さん。

「そういえば、シャンタス国とはうまくいったようだな?」
「はい、陛下にも既に報告済みです」

 あえてその言葉を使うと、父さんは僅かにその表情を緩めた。
 とりあえずは言葉には気をつけていくしかないらしい。

「リールの村の領主からも素晴らしい小麦だと手紙が届いている」
「そのことで……」

 指に手紙を挟んで見せられて、パンやこれからの村の開発についても話そうとすると、

「あぁ。リューラ様から伺った」

 父さんは手紙を置いて先に頷く。 

「素晴らしいパンができたそうだな。それにあのジュースは亡くなる前……最後にアーリンが口にして「うまい」と言ったものだ」

 リューラの父、前国王のことを名前で呼んだのを俺は初めて聞いた。
 目元が少し潤んで眉の下がった顔。
 亡くなった後も親友として、リューラの後見として、キリッとしたままあれこれ取り仕切ってきたが、裏では何度も涙してきたのかもしれない。

「必ず成功させます」
「あぁ」

 やっと微笑んだ父さんに頭を下げて俺は部屋を出る。
 抱えるものが多すぎて格好はつかないがしょうがない。
 つか、リューラのせいだっ!!
 ドアを閉めてから舌打ちをする。
 イラッとするのに、あの時の見つめてきた真剣な目が頭から離れなくて落ち着かなかった。
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