上 下
45 / 66
バカなのか?

7

しおりを挟む
「いい香りだ」

 まずは微笑んだリューラと公賓であるロザーナの前にパンが置かれる。
 いつもの俺の前とは違う王らしく余裕のある話し方はさすがだ。

「温かいうちにお召し上がり下さい」

 俺も運ぶのを手伝う手を止めて頭を下げると、二人はパンを手にして目を見開く。

『柔らかいっ!!』

 ほぼ素のその反応はかなり嬉しかった。

『えぇ。生地でこちらにお持ちしたので、これは今焼き上げたんです』

 他の王族たちにも運ぶと、連中もすぐに驚きの声をあげる。

『ですが、これも焼き立てでなければその柔らかさとしっとりとした食感は損なわれてしまいます』

 俺はあの男、スイームが村で焼いて持ってきたパンを切り分けてまたそれもそれぞれの皿に乗せた。

「確かに……味も違う気がするな」

 パンを少し口にしてじっと見つめているリューラに頷く。

『これはどちらも今回取り引きを成立させて頂いた小麦で作りまして、この数日でも素晴らしい出来になっていると思います』
『確かに!こんな素晴らしく素材を活かして頂けるなら、喜んでこれからも取り引きさせて頂きたいです』

 すぐにロザーナが反応して、その反応にホッとした。だが、

「凄くても流通させるとこの硬くなったパンだろう?」

 すぐにさっきも水を差してきた連中が鼻で笑う。

「えぇ!だから、私はこれは流通させるつもりはございません」
「何っ!?」

 だから思いっきり微笑んでやって、その反応に内心ほくそ笑んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

処理中です...