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言わずにいられない

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「リグさん、大丈夫?」

 目に涙を滲ませた男にエプロンを着けた女たちが駆け寄る。

「指摘とかはさすがだと思ったけどそれ以外がねぇ」

 男の背中を擦りながら女が文句を口にすると、

「頭もいいし凄いんだろうけど?」
「あの態度はないでしょ!!」
「何でも思い通りになると思ってんでしょ?」

 口々に言いたい放題なのが聞こえてきて舌打ちした。

「サライド様!あちらにお食事の用意が……」
「要らねぇ」

 走ってくるエミリオを見てから足を踏み出す。
 それに気づいたらしくあれだけ勢いよく話していた女たちは縮こまって口を噤んでいた。
 通り過ぎる時に睨んでやると俯いてカタカタと震え出す。

「ちょっ!お待ち下さい!」

 俺の前に回り込んできたエミリオが息を切らして膝に手を付きながらこっちを見た。

「このお食事は召し上がって頂かないといけません」

 まだ息は整わないまま小声で言いつつ腰を戻すと、俺より背が高くなってムカつく。

「歓迎なんてされてねぇだろ?しかも、あんな要領も頭も悪い奴らの作るもの……」

 鼻で笑うと、そっと口を塞がれた。

「ここのパンは絶品ですよ?それにこの村で採れた木苺で作ったジャムも……きっとお気に召すはずです」

 さっき走ったせいで額にじんわり汗を滲ませているくせに柔和な笑みを浮かべるエミリオ。
 父さんがここのジャムをかなり評価しているのは知っている。
 だから、取引に成功したシャンタス国の小麦を……と思っていた俺はその食事の場に足を運ばざるを得なかった。
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