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愛される王とその幼馴染

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「あれ?今日は機嫌いい?」

 声がして顔を引き締めると、そこに居たのは同じ公爵家の令息であるドラモント。
 俺と同い年で昔から何かと俺と競い合ってきた男だった。
 まぁ、全て俺の圧勝で相手にもならなかったんだが。

「何か用か?」

 腕を組んでとりあえず聞いてやると、ドラモントは二つ持っていた片方のグラスを差し出す。
 仕方なく受け取ると、ドラモントはグラスを掲げて口を付けた。
 俺もとりあえず口を付けて息を吐く。
 飲み干したドラモントは満足そうに頷くと、懐から紙を取り出した。

「シーバ国の銀を安く手に入れたい」

 見せられたそのメモを見て俺は眉を寄せる。

「お前、この値段では無理だろ。粗悪品を掴まされるのがオチだぞ」

 シーバ国の銀は良質で移動距離もあるため、書かれていた十倍を払っても簡単には手には入らない。

「だから、お前に頼んでるんだろ?」

 頼む態度には見えなくて睨むと、ドラモントは口の端を上げる。

「シャンタス国の小麦……今お前が交渉してるんだって?明後日、港に着く前に海賊が出たら大変だよなぁ?」

 厭らしく歯を見せるその横っ面を殴ろうとした俺の腕が誰かに掴まれて止まった。
 ニタァと笑う卑しい男。
 明らかに舞踏会に呼ばれてはいない格好の男の後ろにも更に三人居るように見える。
 だが、見える……はずなのに目が霞んで上手く捉えられない。
 頭がグラグラと揺れて、カクンも膝も抜けてしまった。

「サライド。お前、ちっとは大人しくしろよ?な?」

 ドラモントの声も遠くなっていく気がする。
 目も開けられなくて、俺はそのまま倒れ込んだ。
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