わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

愛される王とその幼馴染

5

　翌日、舞踏会といっても表面上の華やかさの下ではあちこちで挨拶が交わされ、それぞれ動向の探り合いが行われている。
　ここは商売の場でもあり、政治の場でもあった。
　一時でも気は抜けない。
　きらびやかなドレスを着て踊る女たちから目を背けつつ、俺は主要な人物の動きに目を光らせる。

「サライド。顔が怖いよ」

　そんな俺に父は柔和に微笑んでグラスを渡してくるが、酒を飲む気分ではない。

「リューラ様はさすがだねぇ。さっきから姫たちも途切れない」

　確かに姿を見せてからずっと他国の王や公爵たちが娘を連れて周りを囲み、次々と笑顔で対応しているようではあった。
　親友だった先代の王に頼まれていたのもあって、父はリューラのこともいつも気に掛けている。

「明日で十八だからねぇ。成人して結婚……それもめでたいよねぇ」

　先代に見せてあげたかった、そう呟く父は少し寂しそうだ。
　俺はそんなのどうでもよくて、近くテーブルにグラスを置くと外に出る。
　フワリと吹く風が咲き誇るバラの香りを運んできて俺は目を細めた。

　いい匂いだと走って転んだリューラ。
　泣き止ませるためにバラを取ろうとして棘が刺さった俺を見て、リューラは大慌てで医者を呼んできたことがあった。
　たかが棘で。
　そんなの何ともないのに。
　涙でグチャグチャの顔で必死に医者たちを連れて走ってきた姿は今思い出しても笑ってしまう。