俺を見てよ

もう……無理!!

言って……いいのか？

「ん？何だよ……」

　きょとんとしながらボールペンをクルッと回す勇。
　さおさんからもらったシャーペンに触れられたくないなんて……言える訳がない。

「何でもねぇよ」

　さっと机の中に筆箱をしまってそっぽを向いた。
　明日の卒業式を意識して連絡先を交換し合っている奴も居れば、明後日の入試にむけて必死に問題集をめくっている奴も居る。

「もー告ればいいんじゃねぇの？」

　言われて、さっさと色紙に書き終えてこっちに寄越す勇に目を戻した。

「お前、簡単に……」
「簡単じゃねぇの？嫌われてる訳じゃねぇんだろ？」

　伸びをしながらちらっと見られて俺は学ランの隙間から見えるミサンガを見つめる。
　さすがにもう弟って扱いではないと思うし、嫌われているとは思えない。
　どっちかと言えば……めちゃくちゃいい感じだ。
　言って……いいのか？
　今まで何度だって告っている……情けなさ過ぎるくらい諦められなくて、兄貴ばっか見ているさおさんを無理矢理こっちに向けた。
　いつもふわふわかわいいくせにバスケの時はキリッとしていて、いつもにこにこ笑っているくせに本当に辛い時は１人で歯を食いしばって涙さえ堪える。
　優しくて、ちっちゃくて、かわいくて、強いさおさん。