俺を見てよ

カッケぇ……

あんな風に

　竜太くんにダブルチームを組まれると、竜太くんは振り向きつつ視線は逆サイドのスリーに移す。そのまま片手でパスをしてボールはペイントエリア（フリースローラインからゴール下へ真っ直ぐ下ろした四角の内側）ギリギリに居た春馬くんへ。
　確実に春馬くんがシュートを決めても、みんなすぐにディフェンスへと意識を切り替えている。

「５、４、３……」

　オフィシャルのタイマーが見える位置からはカウントダウンが始まった。
　ビーッという音を聞いて兄貴が竜太くんに抱きつく。
　竜太くんは兄貴の頭をぐしゃぐしゃにして、やって来た春馬くんとハイタッチ。
　集まってきたメガネのPGの肩を叩くと、笑っているSGと思いっきり笑った。

「……あんな風に笑いたかった？」

　手すりに両肘を付いて勇が首を傾げる。
　誰のせいで負けてここに居ると思ってんだよ。
　無神経な勇にイラつきつつ、無視をしたまま下を見ると挨拶が終わって両チームベンチを空けるところだった。
　赤いユニフォームに上は白いＴシャツを着たさおさんと岬さんが兄貴たちと笑って話をしている。
　遠いみんなを見つめていると、

「頑張れよー！」

　勇がにこにこと笑って白いユニフォーム姿でポニーテールの女と手を振り合っていた。

「……お前、彼女高校生だったのな」
「んー？高２、かわいいだろ？」

　勇のキャラ崩壊。
　いつもの無気力でダラダラしてるのはどこ行った？