俺を見てよ

水ノ瀬 あおい

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俺にしなよ……

好き

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「私が居ない方が岬も素直になれるだろうし……」

 ほぅっと白い息を吐き出して、さおさんは空いている左手で真っ白なコートの襟元を合わせる。

「え?」
「岬と高晴は両想いなのよ。どっちも告白しないけど……」

 さおさんは笑っているつもりかもしれないけど、目がかなり潤んでいた。
 岬さんも兄貴のこと好きだったんだ……。
 泣きそうなその顔を見て、俺はぎゅっと握っていた手に力を込める。

「……何で兄貴なの?」
「え?」
「俺だってさおさんが好きだよ」

 しっかりさおさんを見た。
 ここが参道だとか、周りに人が居るなんて関係ない。
 俺が真剣だって……本気だって伝える為に。

「基晴……くん?」

 さおさんの目も声も混乱が滲んでいる。

「そんな泣きそうな顔しないでよ。俺は絶対にさおさんを泣かせない!ねぇ……俺もちゃんと見てよ」

 さおさんの後ろからぶつかった奴が居て、よろけるさおさんを抱き止めた。

「ごめ……」

 小さく謝るさおさんをしっかり抱き締めて耳元に口を寄せる。

「さおさんが好き……」

 ピクッと肩を震わせたさおさんはそれきり俺の腕の中で動かない。
 前が進んだことに気づいて、俺はまたさおさんの手を握ってそっと手を引いた。
 さおさんは下を向いたままゆっくり歩く。
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