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お出かけ3
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「久しぶりだな。」
声はたまたま会った友達に話しかけるような気さくさを持っていたが、一年前の記憶がよみがえり震えだす手を握って、真っ直ぐにこちらを射止める瞳に向き合う。
「なんで、達也...。」
久しぶりに顔を見る達也は、あの頃と少し雰囲気が変わっていて、髪は高校の時から染めたのか、銀色に近い色で、ピアスが耳に多くつけてある。だが、声はちっとも変わらない、あの頃のままで。
「なんで?それは俺のセリフだよ。ま、お前から来てくれて手っ取り早かったよ。」
「...どういうこと?」
「あの時のこと、謝りたかったんだ。今少し時間あるか?」
「あ、謝るって..今更でしょ」
急に何なんだ。散々僕の体に傷をつけておいて。
連絡もよこさずに今更?
目を合わせると、達也は人のいい笑みを浮かべた。だが、瞳の中は依然として氷のような冷たさと鋭さを持っていた。
(何を、、考えてるの、、)
訳が分からないよ。どうして、どうして...?
僕の脳内は錯乱しきっていて、声が出なかった。ただ、あの時のことが、あの時の達也の瞳が頭から離れなくって、ただただ怖かった。
「ね、ねぇ、蓮都。この人って...?」
「....」
碧兎が僕の袖をつかんでそう尋ねる。声は頭に入ってくるのに、返すことができない。
「ごめんね、蓮都のこと、借りていいかな。」
そう生ぬるい声で言って、達也は僕の腕をつかんだ。無理矢理に伝えられる体温にぞくりと肌が急激に冷えていくのを感じる。
(....やめて...!)
声が、出ない。
あぁ、まるであの時に逆戻りしてしまったみたいだ。コマンドを出されたわけでも、glareを浴びせられたのでもないのに。
「ま、待って!蓮都のこと、どこに連れていく気ですか...!」
「...君に関係ある?」
「あります..!あなた、蓮都の何なんですか!」
腕を掴まれて動けなくなった僕を不審に思ったのか、碧兎が抵抗する声が聞こえた。
(だめだ、、碧兎!)
「うるせえな!!」
達也の怒号が飛び交ったその時、鋭く冷たいglareがその瞳から放たれた。そのglareはよく切れるナイフのように治りかけていた心を容赦なく切りつけた。
痛い、涙が出そうなほど痛かった。油断すれば目の前が真っ暗になってしまいそうで、足に力を込めてなんとかよろける足を支えた。
これ以上碧兎のことを巻き込んでしまうのは嫌だ。
「ま、って、いく。行く、から。」
がさがさの声で何とか振り絞って達也に応える。碧兎を被害者にしてはだめだ。パートナーになってんだ、って嬉しそうに笑う碧兎の笑顔を壊したくなんてなかった。
達也はその声が聞こえたのか、乱暴に僕の腕を引っ張る。振り払おうとしたが、あまりに強い力で抵抗ができない。早歩きでその場を離れようとする達也に、やめてほしいと伝えたかった。だが、出るのは荒い息遣いだけで。
――こんな感覚はプレイバーにいたとき以来だろうか。
なんて妙に冷静に考えてしまう自分が怖かった。
後ろから、僕を呼ぶ碧兎の声が聞こえる。
声はたまたま会った友達に話しかけるような気さくさを持っていたが、一年前の記憶がよみがえり震えだす手を握って、真っ直ぐにこちらを射止める瞳に向き合う。
「なんで、達也...。」
久しぶりに顔を見る達也は、あの頃と少し雰囲気が変わっていて、髪は高校の時から染めたのか、銀色に近い色で、ピアスが耳に多くつけてある。だが、声はちっとも変わらない、あの頃のままで。
「なんで?それは俺のセリフだよ。ま、お前から来てくれて手っ取り早かったよ。」
「...どういうこと?」
「あの時のこと、謝りたかったんだ。今少し時間あるか?」
「あ、謝るって..今更でしょ」
急に何なんだ。散々僕の体に傷をつけておいて。
連絡もよこさずに今更?
目を合わせると、達也は人のいい笑みを浮かべた。だが、瞳の中は依然として氷のような冷たさと鋭さを持っていた。
(何を、、考えてるの、、)
訳が分からないよ。どうして、どうして...?
僕の脳内は錯乱しきっていて、声が出なかった。ただ、あの時のことが、あの時の達也の瞳が頭から離れなくって、ただただ怖かった。
「ね、ねぇ、蓮都。この人って...?」
「....」
碧兎が僕の袖をつかんでそう尋ねる。声は頭に入ってくるのに、返すことができない。
「ごめんね、蓮都のこと、借りていいかな。」
そう生ぬるい声で言って、達也は僕の腕をつかんだ。無理矢理に伝えられる体温にぞくりと肌が急激に冷えていくのを感じる。
(....やめて...!)
声が、出ない。
あぁ、まるであの時に逆戻りしてしまったみたいだ。コマンドを出されたわけでも、glareを浴びせられたのでもないのに。
「ま、待って!蓮都のこと、どこに連れていく気ですか...!」
「...君に関係ある?」
「あります..!あなた、蓮都の何なんですか!」
腕を掴まれて動けなくなった僕を不審に思ったのか、碧兎が抵抗する声が聞こえた。
(だめだ、、碧兎!)
「うるせえな!!」
達也の怒号が飛び交ったその時、鋭く冷たいglareがその瞳から放たれた。そのglareはよく切れるナイフのように治りかけていた心を容赦なく切りつけた。
痛い、涙が出そうなほど痛かった。油断すれば目の前が真っ暗になってしまいそうで、足に力を込めてなんとかよろける足を支えた。
これ以上碧兎のことを巻き込んでしまうのは嫌だ。
「ま、って、いく。行く、から。」
がさがさの声で何とか振り絞って達也に応える。碧兎を被害者にしてはだめだ。パートナーになってんだ、って嬉しそうに笑う碧兎の笑顔を壊したくなんてなかった。
達也はその声が聞こえたのか、乱暴に僕の腕を引っ張る。振り払おうとしたが、あまりに強い力で抵抗ができない。早歩きでその場を離れようとする達也に、やめてほしいと伝えたかった。だが、出るのは荒い息遣いだけで。
――こんな感覚はプレイバーにいたとき以来だろうか。
なんて妙に冷静に考えてしまう自分が怖かった。
後ろから、僕を呼ぶ碧兎の声が聞こえる。
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これから前途多難な2人と、作者様もマイペースに投稿お身体気をつけて❣️応援してます〜🌸☺️
白雪様、いつもコメントありがとうございます!文面からこの作品を好きな気持ちがひしひしと伝わってきて嬉しい限りです✨️🥰
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