28 / 35
来客 1
しおりを挟む
長いと感じていた冬休みもあと一週間に差し掛かった。僕はたまにお店のお手伝いをしながら日々を過ごしていた。でも、たまに少しだけしんどくなる時があって、柊さんは僕が少しでも疲れた様子を見せると、お店のお手伝いはさせてもらえなかった。
柊さんの力になれなくて歯がゆい気持ちもあったけど、それよりちゃんと自分のことを見てくれていることがうれしくて仕方がなかった。そういう日は柊さんは早めにお店を切り上げて、ずっと僕のそばにいてくれるのだ。一緒にご飯を食べ、一緒のベッドで抱きしめて寝てくれた。
これまでにないほどの温かい日々に、ずるずると浸っていった。
「蓮都、今日は来客があるんだ。だからお店は休みだよ。」
朝、お店の清掃の準備をしていた時に、そう言われた。来客?仁さんだろうか。今まで来客など少なかったから首を傾げた。
「そうだね、、まぁ来れば分かるよ。」
僕の様子を見て、柊さんは楽しそうにくすくすと笑っていた。
お昼時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「来たみたいだね、一緒に行こうか。」
柊さんはそう言って僕の手を引き、扉を開けた。そこにいたのは、、前に診察してくれた福先生だった。
「福先生!」
「蓮都くん、久しぶりだねぇ」
先生は白いひげを揺らしおおらかに笑った。
(ん?でも、どうして福先生が柊さんの家に?)
「家で診察をしてもらえる訪問診療のサービスがあったからね。頼んでみたんだ。」
「そうなんだよ。蓮都君。お家のほうがリラックスできるしねぇ。」
訪問診療、、そういうサービスがあること自体は知っていたが、初めて見たときにかなり値段がかかるため、選択肢に入れなかった記憶がある。いま診療に来ているということは、柊さんがその高額なお金を支払ったということだろう。
ちらりと柊さんを見ると、柊さんはさわやかな笑みを浮かべた。
―――――
「――それだったら、抑制剤はいまの強さのままで様子を見ようか。」
「はい、おねがいします!」
「体重はどう?前より増えた?」
「少しだけ増えました」
「ならよかった。おいしいものたくさん食べて健康になるんだよ。あとはちゃんと寝ることだね。」
「、、はい、、」
柊さんの隣で問答を続けていると、だんだん眠くなってくる。まだ全然夜ってわけでもないんだけど、、。最近何もしていないのに眠くなることが増えてきていた。うとうとしていると、柊さんが頭を撫でてくれた。
「眠い?」
「はい、、すこしだけ、、。」
「すまないねぇ、質問ばかりで疲れただろう。休んできたほうがいいよ。」
申し訳なさそうに福先生が言った。謝るのは僕のほうだ。せっかく家まで来てもらったのに寝こけるなんて失礼だろう。
「ご、ごめんなさい、、」
「大丈夫、ベッドまで運ぶから。」
そういって柊さんが僕のことを抱っこしてベッドがある部屋まで運ぼうとする。福先生がいる前で気恥ずかしいけど、あまりの眠気にそんなことを考える余裕はなくなっていて、揺られるうちに眠ってしまった。
柊さんの力になれなくて歯がゆい気持ちもあったけど、それよりちゃんと自分のことを見てくれていることがうれしくて仕方がなかった。そういう日は柊さんは早めにお店を切り上げて、ずっと僕のそばにいてくれるのだ。一緒にご飯を食べ、一緒のベッドで抱きしめて寝てくれた。
これまでにないほどの温かい日々に、ずるずると浸っていった。
「蓮都、今日は来客があるんだ。だからお店は休みだよ。」
朝、お店の清掃の準備をしていた時に、そう言われた。来客?仁さんだろうか。今まで来客など少なかったから首を傾げた。
「そうだね、、まぁ来れば分かるよ。」
僕の様子を見て、柊さんは楽しそうにくすくすと笑っていた。
お昼時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「来たみたいだね、一緒に行こうか。」
柊さんはそう言って僕の手を引き、扉を開けた。そこにいたのは、、前に診察してくれた福先生だった。
「福先生!」
「蓮都くん、久しぶりだねぇ」
先生は白いひげを揺らしおおらかに笑った。
(ん?でも、どうして福先生が柊さんの家に?)
「家で診察をしてもらえる訪問診療のサービスがあったからね。頼んでみたんだ。」
「そうなんだよ。蓮都君。お家のほうがリラックスできるしねぇ。」
訪問診療、、そういうサービスがあること自体は知っていたが、初めて見たときにかなり値段がかかるため、選択肢に入れなかった記憶がある。いま診療に来ているということは、柊さんがその高額なお金を支払ったということだろう。
ちらりと柊さんを見ると、柊さんはさわやかな笑みを浮かべた。
―――――
「――それだったら、抑制剤はいまの強さのままで様子を見ようか。」
「はい、おねがいします!」
「体重はどう?前より増えた?」
「少しだけ増えました」
「ならよかった。おいしいものたくさん食べて健康になるんだよ。あとはちゃんと寝ることだね。」
「、、はい、、」
柊さんの隣で問答を続けていると、だんだん眠くなってくる。まだ全然夜ってわけでもないんだけど、、。最近何もしていないのに眠くなることが増えてきていた。うとうとしていると、柊さんが頭を撫でてくれた。
「眠い?」
「はい、、すこしだけ、、。」
「すまないねぇ、質問ばかりで疲れただろう。休んできたほうがいいよ。」
申し訳なさそうに福先生が言った。謝るのは僕のほうだ。せっかく家まで来てもらったのに寝こけるなんて失礼だろう。
「ご、ごめんなさい、、」
「大丈夫、ベッドまで運ぶから。」
そういって柊さんが僕のことを抱っこしてベッドがある部屋まで運ぼうとする。福先生がいる前で気恥ずかしいけど、あまりの眠気にそんなことを考える余裕はなくなっていて、揺られるうちに眠ってしまった。
40
お気に入りに追加
280
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~
金色葵
BL
創作BL
Dom/Subユニバース
自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話
短編
約13,000字予定
人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる