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診察
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「うん、、ダイナミクスの数値がかなり安定してるよ。パートナーの和倉君ともうまくいっているようで良かった。」
いつも診てもらっているお医者さんの福先生ははそう言って顔を綻ばせて笑った。これまで沢山お世話になってきたけど、こんな嬉しそうな笑顔を見るのは久しぶりだ。多分、、それは、抑制剤をもらいに行くたび顔に傷ができていたり、痣があったり、気分がひどく落ち込んでいたりと、ずっと心配させるような状態だったからだろう。今ではそんなことがあったのかというくらい気分がよく、体がふわりと軽い。
「でもね、蓮都君。数値が上がったり下がったりするのが大きいからねぇ、、どうしても不安定になりやすいんだ。だから、パートナーの、和倉 柊さん、かな?今はそういう時期だから、落ち着くまで支えてあげるんだよ。」
「はい。もちろんそのつもりです。」
「うんうん。ならいんだ。抑制剤はもう重いのは必要なさそうだから、軽いものに変えておくよ。」
「福先生、ありがとうございます。」
「蓮都くん、副作用が弱いからと言って、体に害が無いわけではないからね?和倉さん、そこもちゃんと見ててやってくださいね。」
「はい。」
「じゃあ、1ヶ月分くらい出しとくから。また近いうちに診察に来るんだよ。」
そうして診察は無事に終わった。久しぶりだったからか、なんだか体が緊張していたのが分かる。家に帰るとふっと身体から力が抜けるとともに、疲れを感じた。
靴を脱いで立っていることもできずにそのままリビングのソファーにもたれかかって、一息つく。
「大丈夫?疲れた?」
隣に座った柊さんが心配そうにそう言って背中をさすってくれた。正直自分でも出かけるだけでこんなに疲れるとは思っていなかった。全然外に出ていなかったから体力が落ちてしまったのかも。まぁ、そもそも言うほどの体力など元々ないのだけど。
「はい、、」
力無く返事をすると、柊さんは優しく頭を撫でてくれる。
(きもちいいなぁ、、、)
わざわざ着いてきてもらったのに、申し訳ないとも思いつつこの手に甘えてしまう。柊さんと2人きりの時間はすごく穏やかで、それ以上に甘い。
「晩御飯、作ってくるね。」
撫でる手が止められて柊さんが台所に向かおうとする。
「あ、、なにか、手伝えますか。」
「座ってて。疲れてるんだから。」
「、、、ありがとうございます。」
やさしいな、柊さんは。暖かい部屋で、隣にあったクッションを抱きしめる。
(柊さんにまで捨てられちゃったら、きっと今度こそ死んじゃう…。)
ふと、そんなことを考えた。
柊さんの居ない未来を想像して、少し背筋が冷たくなる。考えないようにしよう、考えたくもない。
しばらくするとリビングはおいしそうな晩御飯のにおいで満たされた。
いつも診てもらっているお医者さんの福先生ははそう言って顔を綻ばせて笑った。これまで沢山お世話になってきたけど、こんな嬉しそうな笑顔を見るのは久しぶりだ。多分、、それは、抑制剤をもらいに行くたび顔に傷ができていたり、痣があったり、気分がひどく落ち込んでいたりと、ずっと心配させるような状態だったからだろう。今ではそんなことがあったのかというくらい気分がよく、体がふわりと軽い。
「でもね、蓮都君。数値が上がったり下がったりするのが大きいからねぇ、、どうしても不安定になりやすいんだ。だから、パートナーの、和倉 柊さん、かな?今はそういう時期だから、落ち着くまで支えてあげるんだよ。」
「はい。もちろんそのつもりです。」
「うんうん。ならいんだ。抑制剤はもう重いのは必要なさそうだから、軽いものに変えておくよ。」
「福先生、ありがとうございます。」
「蓮都くん、副作用が弱いからと言って、体に害が無いわけではないからね?和倉さん、そこもちゃんと見ててやってくださいね。」
「はい。」
「じゃあ、1ヶ月分くらい出しとくから。また近いうちに診察に来るんだよ。」
そうして診察は無事に終わった。久しぶりだったからか、なんだか体が緊張していたのが分かる。家に帰るとふっと身体から力が抜けるとともに、疲れを感じた。
靴を脱いで立っていることもできずにそのままリビングのソファーにもたれかかって、一息つく。
「大丈夫?疲れた?」
隣に座った柊さんが心配そうにそう言って背中をさすってくれた。正直自分でも出かけるだけでこんなに疲れるとは思っていなかった。全然外に出ていなかったから体力が落ちてしまったのかも。まぁ、そもそも言うほどの体力など元々ないのだけど。
「はい、、」
力無く返事をすると、柊さんは優しく頭を撫でてくれる。
(きもちいいなぁ、、、)
わざわざ着いてきてもらったのに、申し訳ないとも思いつつこの手に甘えてしまう。柊さんと2人きりの時間はすごく穏やかで、それ以上に甘い。
「晩御飯、作ってくるね。」
撫でる手が止められて柊さんが台所に向かおうとする。
「あ、、なにか、手伝えますか。」
「座ってて。疲れてるんだから。」
「、、、ありがとうございます。」
やさしいな、柊さんは。暖かい部屋で、隣にあったクッションを抱きしめる。
(柊さんにまで捨てられちゃったら、きっと今度こそ死んじゃう…。)
ふと、そんなことを考えた。
柊さんの居ない未来を想像して、少し背筋が冷たくなる。考えないようにしよう、考えたくもない。
しばらくするとリビングはおいしそうな晩御飯のにおいで満たされた。
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