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六話 暴かれた目論見
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ガルガンド伯爵家の屋敷の玄関でエリーズとヴィオルを出迎えたのは、王国の紋章を左胸につけたきちんとした身なりの男性だった。ヴィオルが先に向かわせたという使いだ。ヴィオルの近衛、ローヴァンだけでなくエリーズたちが乗った馬車の扉の開け閉めをした従者も、重厚な作りの鞄を持ってついてきた。
使いの後について二階へと上がる。もちろんエリーズはこの屋敷のどこに何があるかをすべて把握している。向かう先は客間だ。
先頭を切る使いが部屋の扉を開いた。ほとんどの調度品が売られてしまった中で残った数少ない品の、中央に据えられたテーブルに並んでついていたのはエリーズの義父ゲオルグと義妹のジェゼベルだ。訪れた国王とその隣にいるエリーズを見て、二人は息を飲んだ。
「こ、国王陛下、はるばるようこそいらっしゃいました……」
「お会いできて嬉しいです、歓迎いたしますわ!」
ゲオルグとジェゼベルが席を立ち、ぺこぺこと頭を下げる。ジェゼベルの声は普段より半音高いような気がした。
「こちらこそ突然の訪問で申し訳ない。気を遣わなくともいい。手短に済ませるつもりだ」
ヴィオルはそう言いながら、彼らの向かいの椅子を手ずから引いてエリーズを座らせた。ヴィオルがその隣に座ると、鞄を持った従者がさっと横に来て鞄を開け、羊皮紙とペンを取り出した。
「ガルガンド伯爵、エリーズ嬢を我が妃として迎える許しを頂きたい」
羊皮紙に書かれているのは、結婚に関わる文言のようだった。署名する欄が三つあり、一つにはすでにヴィオルの名が書かれている。結婚の手続きというものをエリーズはよく知らなかったが、許しを得た証として花嫁の家族の署名が必要なのだろう。
「ええ、ええ。もちろんですとも! エリーズをどうぞよろしくお願い致します。とても気立ての良い娘ですよ」
ゲオルグがにこにこと笑いながらペンを取り、署名欄に走らせる。彼はエリーズのことを一度だって褒めたことはないのだが。
「エリーズ、幸せになってねっ」
ジェゼベルも、今までエリーズに向けたことがない明るい笑顔を見せた。昨日、エリーズを夜会に連れて行くと言い出してから今まで、彼らはまるで違う人物と中身が入れ替わったみたいに優しい。一体どうしてかしら、とエリーズが心の中で首を傾げていると、今度はエリーズの目の前に羊皮紙が置かれた。
「エリーズ、僕の求婚を受け入れてくれるならここに君の名前を」
ヴィオルが空いた署名欄を示す。エリーズは緊張で震える手に力をこめ、丁寧にそこに名前を記した。これで名実共に、エリーズはヴィオルの婚約者だ。
従者が慎重に羊皮紙を巻き、鞄の中にしまった。
「すまないけれど、君の荷物をまとめておいてくれる? 彼らに手伝ってもらって」
そう言いながらヴィオルが二人の従者の方に目をやった。
「僕はもう少し、ご家族と話さなければいけないことがあるから」
「ええ、分かったわ」
エリーズがこの屋敷を出て行けば、使用人が誰もいなくなってしまう。きっと彼が良いように図らってくれるのだろう。
「お父様、ジェゼベル、今までありがとうございました。あんまりお役に立てなくてごめんなさい」
両親亡きあともエリーズを使用人としてここに置いてくれたことは有難かったが、文句を言われながら朝早くから夜遅くまで働き詰めの日々から解放されることに安堵する気持ちが強い。有能な使用人ができれば何人かここに来てくれることを祈って、エリーズは従者たちと一緒に部屋を後にした。
***
「……さて、と」
客間の扉が閉まる音がしたのを聞き届け、ヴィオル王が再びゲオルグたちに向き直る。
その目つきは先ほど、エリーズに向けられていた優しいものとはまるで違う。氷のような冷たさに、ゲオルグとジェゼベルは揃って身をすくませた。和やかだった部屋の雰囲気が、一瞬にしてぴりつく。
「確認しておきたいことがいくつかある」
王の声も数段低くなっている。
「エリーズは幼い頃にご両親を亡くしている。君たちは先代ガルガンド伯爵の縁者で、代理としてここに来たわけだ」
「お、仰る通りでございます」
「だが、ガルガンド家の正統な跡取りはエリーズだ。彼女が十八歳を迎えた時点で、財産も領地もすべて彼女に引き渡されるべきだった」
ゲオルグはごくりと唾を飲み込んだ。全身から冷や汗が吹き出すのを感じる。エリーズが王に見初められたと知った時は娘と共に王城に移り住めるかもしれないと浮かれていたが、その幻想は一瞬にしてかき消えた。
「ところが君たちはそうしなかった。それどころか財産を使い込んで、あろうことかエリーズを使用人扱い。いや、奴隷扱いと言った方がいいか」
ヴィオル王の語気がどんどん強まっていく。
「更には膨らんだ借金を返す金を何とか工面するため、彼女を売ろうとしたね?」
「そ、そんな、滅相もございません!」
ゲオルグはぶんぶんと首を振った。しかしテーブルの下に隠れた膝は、王が放つ殺気にも似た威厳にあてられてがくがくと震えている。
「エリーズには……確かに無理をさせてしまっていたところもありましたが、どうして家族を売ることなどできましょうか!」
「ええ、そうですわ! あたし達はそんなひどいことはしません!」
ジェゼベルも一緒になって抗議したが、王は眉の一つも動かさなかった。
「……しらを切るか。余計な悪あがきはしない方がいい。リートベルフ子爵の息子はあっという間に白状した」
ひっ、とジェゼベルが息を飲んだ。
「ヘロルフから金を受け取る代わりに、エリーズの身を差し出すと君たちは約束した。昨日の夜会にあの子を連れて行ったのも、ヘロルフに引き合わせるため……彼は素行の悪い連中と繋がりがあったそうだ。そんな男に若い女性を売って、どんな末路を辿るかなんて想像に難くないはずだろう」
「あ、あう……」
間抜けな声がゲオルグの口から漏れる。ヴィオル王は声を荒げることなく淡々と話しているものの、その瞳は怒りに燃えていた。睨まれれば本当に体に火がついて焼かれてしまいそうな程だ。彼の後ろには甲冑姿の騎士が立ち、無表情のままこの様子をじっと見つめている。ゲオルグたちが妙な真似をすれば、腰に下げた剣が喉元に突き付けられるだろう。
「目的もなければ、使用人扱いのエリーズを夜会に連れて行くなんて真似をしないはずだ。昨日まで、あの子は一度も貴族の催しに参加したことがないと言っていた」
「も、申し訳ございません、申し訳ございません!」
恐怖が限界に達し、ゲオルグは椅子を蹴るようにして立ち上がり、王から見える位置の床に平伏した。
「せっかく手に入れた豊かな生活を手放すのが怖くなってしまったのです! エリーズに家督を継がせれば、我らは追い出されるのではないかと考え、あの子にはこれからもずっと使用人として生きる道しかないと思い込ませました!」
ジェゼベルも席を立ち、父の隣で頭を垂れる。
「国王陛下、お許しください! あたし達、ヘロルフがそんな悪い人だなんて知りませんでした! エリーズをお金で買うけれど大事にするからと言ったんです!」
「知らなかったでは済まされない」
床に這いつくばる二人を見下ろし、ヴィオル王は冷ややかに言い放った。
「身売りなんかさせなくても、金を稼ぐ方法ならいくらでもある。自分たちで作った借金を、どうして何の罪もないエリーズに背負わせることができる?」
ヴィオル王は今朝からガルガンド家を訪ねるまでの間、半日あるかどうかの時間を使い徹底的にゲオルグたちの行動を調べ上げたのだ。
いよいよ終わりだ。どのような罰が下るのだろうか――ゲオルグが額を床にこすり付けたままでいると、突如ジェゼベルの金切り声が響いた。
「し、仕方ないじゃない! あの子、綺麗なんだから!」
ゲオルグは青ざめた顔を上げ、娘の方を見た。ジェゼベルは立ち上がり、両手の拳を強く握り顔を歪めて王を睨んでいた。
「あたしがどんなに綺麗なドレスを着ても、お化粧してもあの子には勝てないの! ぼろぼろを着ててもエリーズは綺麗なのよ! ずるいじゃないの! あたしがあの子に勝つには、あの子の人生をぐちゃぐちゃにするしかなかったのよっ!」
幼子のように泣きわめく姿は、とても一国の王に見せて良いものではない。ゲオルグは必死に娘を押さえつけた。
「や、やめろ、ジェゼベル! 申し訳ございません国王陛下!」
騒ぎ立てるジェゼベルを見てもヴィオル王は表情を変えることなく、やがて冷ややかに言った。
「……本当にあの子が美しいと思うなら、それがなぜなのかを考えてみることだ」
その言葉にジェゼベルはぐっと唇を噛み、それ以上反論することはしなかった。王が続ける。
「お前たちがしようとしたことはエリーズには今後も黙っておく。事実を知ってあの子が傷つかないためだ。王国法によりお前たちはここを退去し、使い込んだ財産と同等の金額を返済する義務を負う。それからこの屋敷と領地の所有者をエリーズとするようこちらで処理を進めさせてもらう……明日、使いの者をまた寄越す。それまでに出て行く準備をしておくように。負っている借金も、今後お前たち自身で返すことだ。援助は一切しない」
「は、はい……」
蚊の鳴くような声でゲオルグは答えた。
「もし王家の使いに逆らったり、エリーズに危害を加えようとするならば容赦はしない……肝に銘じろ」
「お、仰せの通りに致します……」
立ち尽くすゲオルグとジェゼベルをよそに、ヴィオル王はすっくと立ちあがった。
「ではこれで失礼する。見送りは結構だ」
ゲオルグたちが何か言う前に、王は騎士を連れて早足で部屋を出て行った。
使いの後について二階へと上がる。もちろんエリーズはこの屋敷のどこに何があるかをすべて把握している。向かう先は客間だ。
先頭を切る使いが部屋の扉を開いた。ほとんどの調度品が売られてしまった中で残った数少ない品の、中央に据えられたテーブルに並んでついていたのはエリーズの義父ゲオルグと義妹のジェゼベルだ。訪れた国王とその隣にいるエリーズを見て、二人は息を飲んだ。
「こ、国王陛下、はるばるようこそいらっしゃいました……」
「お会いできて嬉しいです、歓迎いたしますわ!」
ゲオルグとジェゼベルが席を立ち、ぺこぺこと頭を下げる。ジェゼベルの声は普段より半音高いような気がした。
「こちらこそ突然の訪問で申し訳ない。気を遣わなくともいい。手短に済ませるつもりだ」
ヴィオルはそう言いながら、彼らの向かいの椅子を手ずから引いてエリーズを座らせた。ヴィオルがその隣に座ると、鞄を持った従者がさっと横に来て鞄を開け、羊皮紙とペンを取り出した。
「ガルガンド伯爵、エリーズ嬢を我が妃として迎える許しを頂きたい」
羊皮紙に書かれているのは、結婚に関わる文言のようだった。署名する欄が三つあり、一つにはすでにヴィオルの名が書かれている。結婚の手続きというものをエリーズはよく知らなかったが、許しを得た証として花嫁の家族の署名が必要なのだろう。
「ええ、ええ。もちろんですとも! エリーズをどうぞよろしくお願い致します。とても気立ての良い娘ですよ」
ゲオルグがにこにこと笑いながらペンを取り、署名欄に走らせる。彼はエリーズのことを一度だって褒めたことはないのだが。
「エリーズ、幸せになってねっ」
ジェゼベルも、今までエリーズに向けたことがない明るい笑顔を見せた。昨日、エリーズを夜会に連れて行くと言い出してから今まで、彼らはまるで違う人物と中身が入れ替わったみたいに優しい。一体どうしてかしら、とエリーズが心の中で首を傾げていると、今度はエリーズの目の前に羊皮紙が置かれた。
「エリーズ、僕の求婚を受け入れてくれるならここに君の名前を」
ヴィオルが空いた署名欄を示す。エリーズは緊張で震える手に力をこめ、丁寧にそこに名前を記した。これで名実共に、エリーズはヴィオルの婚約者だ。
従者が慎重に羊皮紙を巻き、鞄の中にしまった。
「すまないけれど、君の荷物をまとめておいてくれる? 彼らに手伝ってもらって」
そう言いながらヴィオルが二人の従者の方に目をやった。
「僕はもう少し、ご家族と話さなければいけないことがあるから」
「ええ、分かったわ」
エリーズがこの屋敷を出て行けば、使用人が誰もいなくなってしまう。きっと彼が良いように図らってくれるのだろう。
「お父様、ジェゼベル、今までありがとうございました。あんまりお役に立てなくてごめんなさい」
両親亡きあともエリーズを使用人としてここに置いてくれたことは有難かったが、文句を言われながら朝早くから夜遅くまで働き詰めの日々から解放されることに安堵する気持ちが強い。有能な使用人ができれば何人かここに来てくれることを祈って、エリーズは従者たちと一緒に部屋を後にした。
***
「……さて、と」
客間の扉が閉まる音がしたのを聞き届け、ヴィオル王が再びゲオルグたちに向き直る。
その目つきは先ほど、エリーズに向けられていた優しいものとはまるで違う。氷のような冷たさに、ゲオルグとジェゼベルは揃って身をすくませた。和やかだった部屋の雰囲気が、一瞬にしてぴりつく。
「確認しておきたいことがいくつかある」
王の声も数段低くなっている。
「エリーズは幼い頃にご両親を亡くしている。君たちは先代ガルガンド伯爵の縁者で、代理としてここに来たわけだ」
「お、仰る通りでございます」
「だが、ガルガンド家の正統な跡取りはエリーズだ。彼女が十八歳を迎えた時点で、財産も領地もすべて彼女に引き渡されるべきだった」
ゲオルグはごくりと唾を飲み込んだ。全身から冷や汗が吹き出すのを感じる。エリーズが王に見初められたと知った時は娘と共に王城に移り住めるかもしれないと浮かれていたが、その幻想は一瞬にしてかき消えた。
「ところが君たちはそうしなかった。それどころか財産を使い込んで、あろうことかエリーズを使用人扱い。いや、奴隷扱いと言った方がいいか」
ヴィオル王の語気がどんどん強まっていく。
「更には膨らんだ借金を返す金を何とか工面するため、彼女を売ろうとしたね?」
「そ、そんな、滅相もございません!」
ゲオルグはぶんぶんと首を振った。しかしテーブルの下に隠れた膝は、王が放つ殺気にも似た威厳にあてられてがくがくと震えている。
「エリーズには……確かに無理をさせてしまっていたところもありましたが、どうして家族を売ることなどできましょうか!」
「ええ、そうですわ! あたし達はそんなひどいことはしません!」
ジェゼベルも一緒になって抗議したが、王は眉の一つも動かさなかった。
「……しらを切るか。余計な悪あがきはしない方がいい。リートベルフ子爵の息子はあっという間に白状した」
ひっ、とジェゼベルが息を飲んだ。
「ヘロルフから金を受け取る代わりに、エリーズの身を差し出すと君たちは約束した。昨日の夜会にあの子を連れて行ったのも、ヘロルフに引き合わせるため……彼は素行の悪い連中と繋がりがあったそうだ。そんな男に若い女性を売って、どんな末路を辿るかなんて想像に難くないはずだろう」
「あ、あう……」
間抜けな声がゲオルグの口から漏れる。ヴィオル王は声を荒げることなく淡々と話しているものの、その瞳は怒りに燃えていた。睨まれれば本当に体に火がついて焼かれてしまいそうな程だ。彼の後ろには甲冑姿の騎士が立ち、無表情のままこの様子をじっと見つめている。ゲオルグたちが妙な真似をすれば、腰に下げた剣が喉元に突き付けられるだろう。
「目的もなければ、使用人扱いのエリーズを夜会に連れて行くなんて真似をしないはずだ。昨日まで、あの子は一度も貴族の催しに参加したことがないと言っていた」
「も、申し訳ございません、申し訳ございません!」
恐怖が限界に達し、ゲオルグは椅子を蹴るようにして立ち上がり、王から見える位置の床に平伏した。
「せっかく手に入れた豊かな生活を手放すのが怖くなってしまったのです! エリーズに家督を継がせれば、我らは追い出されるのではないかと考え、あの子にはこれからもずっと使用人として生きる道しかないと思い込ませました!」
ジェゼベルも席を立ち、父の隣で頭を垂れる。
「国王陛下、お許しください! あたし達、ヘロルフがそんな悪い人だなんて知りませんでした! エリーズをお金で買うけれど大事にするからと言ったんです!」
「知らなかったでは済まされない」
床に這いつくばる二人を見下ろし、ヴィオル王は冷ややかに言い放った。
「身売りなんかさせなくても、金を稼ぐ方法ならいくらでもある。自分たちで作った借金を、どうして何の罪もないエリーズに背負わせることができる?」
ヴィオル王は今朝からガルガンド家を訪ねるまでの間、半日あるかどうかの時間を使い徹底的にゲオルグたちの行動を調べ上げたのだ。
いよいよ終わりだ。どのような罰が下るのだろうか――ゲオルグが額を床にこすり付けたままでいると、突如ジェゼベルの金切り声が響いた。
「し、仕方ないじゃない! あの子、綺麗なんだから!」
ゲオルグは青ざめた顔を上げ、娘の方を見た。ジェゼベルは立ち上がり、両手の拳を強く握り顔を歪めて王を睨んでいた。
「あたしがどんなに綺麗なドレスを着ても、お化粧してもあの子には勝てないの! ぼろぼろを着ててもエリーズは綺麗なのよ! ずるいじゃないの! あたしがあの子に勝つには、あの子の人生をぐちゃぐちゃにするしかなかったのよっ!」
幼子のように泣きわめく姿は、とても一国の王に見せて良いものではない。ゲオルグは必死に娘を押さえつけた。
「や、やめろ、ジェゼベル! 申し訳ございません国王陛下!」
騒ぎ立てるジェゼベルを見てもヴィオル王は表情を変えることなく、やがて冷ややかに言った。
「……本当にあの子が美しいと思うなら、それがなぜなのかを考えてみることだ」
その言葉にジェゼベルはぐっと唇を噛み、それ以上反論することはしなかった。王が続ける。
「お前たちがしようとしたことはエリーズには今後も黙っておく。事実を知ってあの子が傷つかないためだ。王国法によりお前たちはここを退去し、使い込んだ財産と同等の金額を返済する義務を負う。それからこの屋敷と領地の所有者をエリーズとするようこちらで処理を進めさせてもらう……明日、使いの者をまた寄越す。それまでに出て行く準備をしておくように。負っている借金も、今後お前たち自身で返すことだ。援助は一切しない」
「は、はい……」
蚊の鳴くような声でゲオルグは答えた。
「もし王家の使いに逆らったり、エリーズに危害を加えようとするならば容赦はしない……肝に銘じろ」
「お、仰せの通りに致します……」
立ち尽くすゲオルグとジェゼベルをよそに、ヴィオル王はすっくと立ちあがった。
「ではこれで失礼する。見送りは結構だ」
ゲオルグたちが何か言う前に、王は騎士を連れて早足で部屋を出て行った。
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