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売れっ子スターはお母さんが好き

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 季節は春。
街ゆく至る所に幼馴染のポスターが貼ってある。
 大画面では、MVが流れたり、家に帰って動画を見ている時も合間にCMで流れたりととても人気の様子。
  とても頑張ったと思う。私のお母さんの為に。
彼は幼い頃彼のお母さんの浮気により、お母さんが出ていってしまった。
 そんな彼を見越して、私の母が家へ招待して私とほとんど毎日一緒に育った。初めて彼が私のお母さんを見た時に凄く輝いた顔で見ていた。
 そして、毎回来る時に私のお母さんにお花を摘んできたり、綺麗なシーグラスを取ってきたりと幼い頃から私の母が好きだった。
 彼のお父さんは、仕事で忙しくしており、息子のその様子を聞いた時はスーツのまま高級な菓子折りと、何万もの包みを持ってきてご迷惑をお掛けしましたと訪ねてきたこともあった。
 けれど、その頃にはもう私の家の一員のようになっており、気にしないでくださいと父と母と私も口を揃えて言い妥協点として、娘に手を出さないことと彼が持ってきたものは受け取ることだけに最終的になったらしい。私に手を出す理由などこれっぽっちもないだろうからそんな案を出した二人は親バカなのだと思う。でも、そんな二人が私はとても好きだ。
現在私は大学二年生。勉強に少し慣れてきて遊びを入れ始めた頃だ。
今日は日曜日。休日に布団の中でダラダラと過ごす。気持ちがいい。何も考えずにこうやって過ごす時間はとても大切だと思う。布団を足に挟んで横向きになり充電器と共にスマートフォンを取り時間を確認する。今は8時36分。9時過ぎて起きると損した気持ちになるが、7時若しくは8時に起きると何だか得した気持ちになる。
「おはよう、そしてお休み」
   待受の彼はこちらを見るでもなく、窓に腰かけ柔らかく微笑み夜空を眺めている。髪は漆黒で目にはカラコンの紫色を入れていた。本当に生きているのかとさえ思わせる位に美しい顔をしている。そう、彼は幼馴染と同じグループにいる。三十分ほど経っただろうか。スマートフォンのバイブレーションで目を覚ます。



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