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透明なガラス
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教室を後にし、急いで人気の少ないところへ移動した。
「はあ…」
少し苦しくなった呼吸を落ち着かせ、頭を抱えた。
「成功したのか」
カルテをなぞる。今の今まで、全く思い出すことが出来なかったがどうやら過去に来れた。来た当初は記憶があったのに。何故なのだろうか。少し違和感を感じつつも、喜びの方が大きかった。
「みみ…」
気がつくとそう口に出していた。はっと、息を飲み驚き手で口を抑えた。今までファーストネームで名前を読んだことなど無かった分、尚更驚いた。
何故か記憶までも戻ってもなお変わらずあった。皺が入った手ではなく、若く健康な手だった。拳を握りそれを確かめる。歯の感触も目の潤いも全てが全然違った。
「若いって凄いことだな」
なんてぼそっと吐き、呼吸を整え帰路にたった時だった。
空がとても明るく頬を照らし、とっさに眩しさを遮るために手で抑えた。
あろう事か手に持っていたカルテを落としてしまい、しゃがんで1枚ずつ拾い最後の1枚を広いバインダーに挟もうとした時だった。
「なんやこれ」
それを拾ったのは剛だった。
「患者のカルテだ」
「えっ」
「何だよ、大切なものなんだ。返してくれ」
「やだっ…遥っ…まじなの?」
「おい、なんの事だ」
「キャーー」
と大声を出し、その紙を持って廊下を走っていく。
「なっ、何してんだよ」
慌てて体勢を整え、後を追う。カルテは個人情報の塊だ。そんなものをばらまかれたり破かれたり無くしたりなんてしたらたまったもんではない。
急いで追いかけなくては。
「はあ…」
少し苦しくなった呼吸を落ち着かせ、頭を抱えた。
「成功したのか」
カルテをなぞる。今の今まで、全く思い出すことが出来なかったがどうやら過去に来れた。来た当初は記憶があったのに。何故なのだろうか。少し違和感を感じつつも、喜びの方が大きかった。
「みみ…」
気がつくとそう口に出していた。はっと、息を飲み驚き手で口を抑えた。今までファーストネームで名前を読んだことなど無かった分、尚更驚いた。
何故か記憶までも戻ってもなお変わらずあった。皺が入った手ではなく、若く健康な手だった。拳を握りそれを確かめる。歯の感触も目の潤いも全てが全然違った。
「若いって凄いことだな」
なんてぼそっと吐き、呼吸を整え帰路にたった時だった。
空がとても明るく頬を照らし、とっさに眩しさを遮るために手で抑えた。
あろう事か手に持っていたカルテを落としてしまい、しゃがんで1枚ずつ拾い最後の1枚を広いバインダーに挟もうとした時だった。
「なんやこれ」
それを拾ったのは剛だった。
「患者のカルテだ」
「えっ」
「何だよ、大切なものなんだ。返してくれ」
「やだっ…遥っ…まじなの?」
「おい、なんの事だ」
「キャーー」
と大声を出し、その紙を持って廊下を走っていく。
「なっ、何してんだよ」
慌てて体勢を整え、後を追う。カルテは個人情報の塊だ。そんなものをばらまかれたり破かれたり無くしたりなんてしたらたまったもんではない。
急いで追いかけなくては。
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