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揺れるキーホルダー

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「なんや、役に立たないキーホルダーやと思っとんやろ」
ぴょんぴょん跳ねて怒りを表しているのか知らないが、キーホルダーのため可愛くしか見えない。
「はあ」
どうしてこんなとこに来てしまったんだろう。クローゼットを閉め、そこに寄りかかり遠くを見るようにフグを見る。
「役に立つって話せるだけ凄いけどさ、私は帰りたいし」
「せやな」
「うん」
「楓先輩とも会いたいし…」
「せやな」
「うん……うん?」
このフグなんで楓先輩のこと知ってるの。
「何で知ってるの」
「そんなことどうでもええやろ」
「良くない、怪しい」
柔らかいモフモフのキーホルダーの取っ手を掴む。
「ゆ、揺らすなや」
「白状しなさい」
「や、やめろや」
「これが本体じゃないなら大丈夫でしょ」
「そうゆうことやないねん」
音が揺れるんやと騒ぎ立てるフグのキーホルダー。
その時だったコンコンと叩かれる扉。
「大丈夫……?寝れそう?」
「ほらっ、あんたが騒ぐから気づかれちゃったじゃない」
 「どう考えてもあんたやろ」
「何言ってんのよ、黙んなさいよ。フグが喋ってるなんてあの人見たら卒倒しそうよ」
「せやな」
そう言うと急に話さなくなったフグのキーホルダー。
「ちょっと、なんで話さないのよ」
これじゃあ変な人みたいになるじゃない。
ガチャと扉が開く音がする。
「ごめん、随分騒がしかったから大丈夫かなと思って。誰かと話してた?」
「いや、寝てただけですけど」
クローゼットにつけてた背中から身を外しベッドに戻る。
如何にも納得いかないというような顔をするが、一瞬考えたのか
「何か食べたいものとかしたいことある?」
と話題を変えた。
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