トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

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母の思い

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「おい、そこ寝転ぶな」
痛みで悶えてる私に涼しい顔でそういう川神。
「貴方私のこと何だと思ってるの」
人がこんなに痛がってるのに、なんて奴なの。
「決まってるだろ、被検体だよ」
「最低っ!!」
思わず枕を投げつける。
「悪いけど、ちゃんと安静にしてくれる?血圧上がるよ?」
何食わぬ顔で枕をキャッチし、そのまま廊下に出ていこうとする。
「あんたが上げてるんでしょ!ち、ちょっと…!」
「何ですか?食事持ってきたいんですけど、僕一応まだ学生なんですよね、入り浸れないんですよね」
「枕返して!」
「返してくださいだろ」
「何ですって!?」
いつの間にか足の痛みを忘れて、兎に角目の前のこの人の言いなりにはなりたくない。そんな気持ちに駆られていた。
「はあ、呆れた。骨折したにも飽き足らずなんてざまなの」
川神の後ろから現れたのは私の母だった。
「すみませんね、うちの娘が」
如何にも不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、スーツのままこちらに向かってくる。
「いえ、お元気なお嬢さんで何よりです。ただ、検温だけは」
「早く検温しなさい、たくっ。あんた来年受験なのよ!どうするつもりなのよ。すみません、ちょっと席を外していただいても良いでしょうか」
「ええ」
そう言うと元の場所に枕を戻し立ち去る彼。
「みみ、あんたね。聞いたわよ」
そう言うと近くにある椅子に腰をかける母。
「何よ」
「何よじゃないわよ、あんたって子は。好きな人追いかけて道路飛び出したんでしょう。呆れてモノが言えないわ」
けれど、母は泣きそうだった。
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