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溢れた感情
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遥さんがハンカチを持ってきて、優しく拭ってくれる。
「不安だったね、みみ」
「夏野くん君は先に上がってくれないか」
「はい…」
楓先輩は何か言いたげだったが拳を握り先にリビングに行ってしまった。
行かないで欲しかったが、このまま居て欲しいとも言えなかった。
「おいで」
手を広げられたが、その胸に飛び込む勇気は無かった。
どうにか自分で立ち上がり、タオルで目を覆いながら前に進む。
不安なのは誰なんだ。本当に不安なのは誰なんだろう。私じゃない。私では無い。隣にいる彼だ。決して私ではない。
「良いんだよ、大丈夫」
そう告げられたが、私は悲しみが止まらなかった。
ああ、私は怒って欲しかったんだ。駄目だって何でって。どうしてなんだって止めて欲しかったんだと思う。自分勝手だがそんなことを願ってしまっていた。自己嫌悪に陥り、目が腫れて鼻も出てぐちゃだった。
「今日はやっぱり帰ります」
楓先輩が私の様子を見かねたのか、そう言う。本来なら置いていかないで欲しいとすぐ言いたい。言えるはずなのに、黙って頷いてしまった。
「安藤ちゃん、これを」
そう言われて楓先輩に渡されたのは卒業アルバムだった。
「えっ」
「これで何かヒントが得られるかもしれない」
楓先輩が持っていたのは彼が卒業した年のアルバム。
「朝からすみませんでした、一度家に帰りますが何時でも呼んでください。安藤ちゃんもいつでも連絡してね」
そう言うと楓先輩はおじぎをし、帰って行った。
「不安だったね、みみ」
「夏野くん君は先に上がってくれないか」
「はい…」
楓先輩は何か言いたげだったが拳を握り先にリビングに行ってしまった。
行かないで欲しかったが、このまま居て欲しいとも言えなかった。
「おいで」
手を広げられたが、その胸に飛び込む勇気は無かった。
どうにか自分で立ち上がり、タオルで目を覆いながら前に進む。
不安なのは誰なんだ。本当に不安なのは誰なんだろう。私じゃない。私では無い。隣にいる彼だ。決して私ではない。
「良いんだよ、大丈夫」
そう告げられたが、私は悲しみが止まらなかった。
ああ、私は怒って欲しかったんだ。駄目だって何でって。どうしてなんだって止めて欲しかったんだと思う。自分勝手だがそんなことを願ってしまっていた。自己嫌悪に陥り、目が腫れて鼻も出てぐちゃだった。
「今日はやっぱり帰ります」
楓先輩が私の様子を見かねたのか、そう言う。本来なら置いていかないで欲しいとすぐ言いたい。言えるはずなのに、黙って頷いてしまった。
「安藤ちゃん、これを」
そう言われて楓先輩に渡されたのは卒業アルバムだった。
「えっ」
「これで何かヒントが得られるかもしれない」
楓先輩が持っていたのは彼が卒業した年のアルバム。
「朝からすみませんでした、一度家に帰りますが何時でも呼んでください。安藤ちゃんもいつでも連絡してね」
そう言うと楓先輩はおじぎをし、帰って行った。
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