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帰路

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「先輩、ありがとうございます 。ありがとう」
心から感謝を述べ、彼を見つめる。
「良いよ、どういたしまして」
楓先輩は少し困ったように笑い、笑顔を浮かべる。
本当に気持ちが伝わった時、いつも楓先輩はこうやって眉を少し下げて微笑む。
その後朝食を済ませ、帰路に着く。この後どうしたら良いのか隣に先輩がいるというのに心配と不安で苛まれた。
「一緒に行くよ、大丈夫」
そう言うと家まで本当に送ってくれた。家と言っても今の私には全く馴染みもなく他人の家同然なのだが。ゴクリと生唾を飲み建物の全貌を見上げて確認する。
インターフォンを押して、呼び出す。
「はい」
昨日聞いた遥さんの声が聞こえた。少しググもった声だった。心配させてしまったに違いない。申し訳無さが溢れてくる。
「私です」
「今開けるっ」
それと同時に、ロックが解除される。後ろを振り向き楓先輩と目を合わせる。
「大丈夫、一緒に行くからさ」
全てを見透かされているような気持ちになった。けれど、どうしても不安だったのだ。
「ありがとうございます」
一緒にエレベーターで登っている時に先輩の横顔を見ると安心した。ここまで来てくれるのは覚悟が要るに違いない。それなのに、本当にありがとう。心の中でその思いを告げて、また前を向く。着いたあとに、二人で目的地の部屋へと向かう。
「待ってて」
そう言うと先輩がチャイムを鳴らす。
「はい」
遥さんは玄関から顔を出し、二人とも入ってと声を掛けてくれる。
私はこの後離婚の話をされるのだろうか。もしくはこの異世界に閉じ込められたまま、死んでしまうのだろうか。改めて自分の考えの浅はかさに後悔する。

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