トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

文字の大きさ
上 下
110 / 182

焦燥

しおりを挟む
「はい」
「彼の話をすると安藤さんは表情が動きやすいので心のリハビリにもよいかと思ってましたが、とんだでしゃばりだったようですね」
「いかにも」
やり過ぎてしまったかなと少し思ったけれど、嫌われるためにはちゃんとしないと。
「ならあんたは何が好きなの」
「え?」
「他に何が好きなのかって聞いてるんだけど」
「私はそ、そうですね」
そうだった、この時有名なお店のチーズケーキが食べたいと言ったら本当に買って来たと言っていた。そんなことされてしまっては、下手に牽制できない。はるくんがその時がきっかけで私と話せるようになってきたと言っていた。
「美術品が好きで美術館に行くのが大好きです」
さすがにこの骨折してまだ歩けないわたしに対して美術館に行こうなどは言わないはず。
「そうなんですか」
「はい、常用展示されてる作品はもう何度も見ました。特別展や阿修羅展。絵画も好きです」
「どんな手法で描いてる画家が好きなの」
「えーっと、エッシャーとかですかね」
手法ってなに。油絵とか、水彩画とか、版画とかそうゆうことなのだろうか。
「面白いよね、行ったの?」
「そうですね」
   中学生の教科書とかでよく表紙になってたのが彼の作品が多かった。見たことある作品も多くだまし絵がとても楽しかった。
 けれど、何故か一番頭に残ってたのは恋人と過ごした景色を描いていたものだった。
「でも安藤さんはもっと派手だったり、こだわらない作品が好きなのかと」
  その通り。昔行ったエジプト展の死者の書が三十七メートルもあると言われてたから。巨大な巻物みたいになってるのかと思ってわくわくして行ってみたら区切られて部分的に額縁みたいに貼られててガッカリしたとかそんなこと言いたかった。
「平日の朝とか夜の展示とか一緒に行きますか?」
外出許可も僕が行くなら、手続き大丈夫なので、お友達も呼んだらどうですか。とまで言われた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...