トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

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休息

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「ありがとう」
   こんな事誰でも一度は言って欲しいのではないのだろうか。でも、それがはるくんのために変わりたいと願っているのではないと知りながらだったからか。目を合わせれなかったし、はるくんも視線を逸らした。
「どういたしまして」
   何だか行き詰った気分だ。もう少しで、穴から出れると思ったらその空いてる穴はとても人が通れる穴じゃなくて小動物とか、虫だとかは難なく通れそう。人じゃとても通れない。
 そんな所に居るのにもう後ろには得体の知れない怖さが迫ってる。そんな気分だ。
「そう言えば昔の彼女が言ってたんだ、欲しいのは物じゃなくて確かな言葉と態度だって」
  はるくんが呟くように言う。
「当時ね、初めての彼女で俺なりに大事にしようと思って。バイトを根詰めて高いプレゼント買ったら喜ぶんじゃないのかって」
意外だった、そんな過去があったなんて。顔も性格も良いはるくん。
 私のイメージではお戯れのように沢山の女の子に囲まれて、その中で一番美人で尽くしてくれそうな女の子と付き合って。
尚且つ頭を上手く使って甘えてそうだなと。
「でも違ったみたい、一緒に居れたらそれで良かったのにって。プレゼント受け取って貰えなくて。次の日にはもう別の人と付き合い始めたんだよね」
「そんなことがあったんだね、それではるはどうしたの」
「そのままにした。その後女の子が苦手になったかな。捨てても良いから当時は貰って欲しかったんだと思う」
はるくんは、また本を読みながらそう話を進める。
「うんうん、それはどっちも好きだけどすれ違っちゃったんだね」
   何だか急に親近感が湧く。 小さい時から恋愛中心に生きてきた私にとってそのような思い出は沢山あった。
 だからこそ、理解出来た。さっきの変な空気や恐怖感はいつの間にか一掃された。
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