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誘い

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「みみ、さっきあんな風に感情を露わにした俺を見てどう思った」
透き通った瞳は不安げに揺れる。
「怖かった」
「ごめんね」
はるくんは私の右手をそっと握り、私の表情を覗き込みながら謝る。
「どうしても我慢できなかったんだ」
「はるくん」
「みみが離れていきそうで、奪われるんじゃないかって」
気が付くと左手も握られており、はるくんが私が何か言うのを待っている。
「大丈夫だよ、こんな状態のはるくんを一人置いて楓先輩のところに行こうなんてしないから」
「せやで、このまま置いてかれたら手がつけられへん」
運転席で高笑いが聞こえる。
「そう」
はるくんは、私の手を自分の肩に持っていき抱き締める。そして、私の耳元で囁く。
「うん」
「なら俺と寝て」
「え?」
「口では何とでも言えるだろ、何時逃げるか分からない」
「そんなっ」
「出来る?」
明らかに挑発している。本心とはまるでかけ離れていた。彼は今不安なのだ。私がいつ居なくなっても可笑しくないと思っている。
「そんなの出来ない」
「ああ、こんな事今のみみは子供だからあんまり言いたくないんだけど、俺たち凄く相性良いよ」
くすくすと笑いながら、腕を放す。
「なっ、なんでこんな意地悪するの」
「意地悪じゃないよ、本気だからね」
またしても、手のひらの上で転がされている。
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