46 / 182
電話
しおりを挟む
ブーブーブーブー。
着信音が流れているのを横目に見て、一瞬空を仰ぐ。目が腫れぼったくこすったら次の日痛くなりそうだった。
座席の柔らかさと楓先輩の匂い。少し目を閉じてからスマホを取る。
スクロールして電話を出ようか迷ったその時だった。コンコンと窓を叩く音がした。驚き振り向くと先程の真さんだった。ドア越しにジェスチャーをしている。私に扉を開けて欲しいのだろう。
「あ、はい」
中に鍵を指した上で自分で鍵を閉めていた為、ロックを解除して開けても音がならなかった。
「これ、お土産」
そう言って渡されたのは、多肉植物だった。何故こんなものをと思ったが可愛かった。ぷにぷにとした葉っぱがこちらを覗き込んでいた。
「泣いてたの?僕が居なくて?困ったなあー」
勝手に何か言っているようだが、もちろんこの人のせいで泣いた訳では無い。むしろ感傷に浸ろうとしていたところを邪魔された気分になった。でも、そのお陰でとても楽しく過ごせてる。
「このハンカチあげるよ」
そう言って白衣から取り出したのは、男の人が持ってるとは思えないハンカチだった。青と薄紫の花が右四隅に刺繍されており、上品だった。彼は私の頬を拭き取り、そっと手に握らせた。
「本当はさ、楓の葉を君にあげたかったんだけどね。それは流石に今日は本人居るし、ああ、どうしよう。どうしたらいい。ああ、でもこの可愛い小娘にどうしても何か送りたいと思ってね」
「一言余計です!私は、小娘じゃないです!」
フグ太郎にも小娘と言われたけれども、私はそんなに幼く見えるのだろうか。失礼しちゃうと思った。
「なら、君は何なんだ?楓にとって。そして、僕にとって」
「楓先輩にとって私は、後輩です」
「ならなら、僕は?」
あははと笑いながら、冗談目かしく言う。
「貴方はモブです」
「あはは!!モブってあのよくアニメとか映画とかに出る名前のない彼らのことかい?」
「そうですね」
「いや、君面白い。そうだった。こんな格好だから僕になびかないんだね。すまない、日を改めてくれ」
そう言うと勝手に扉を閉められた。一体全体何なんだろう。キャラが濃ゆいというのはこうゆう人のための言葉に違いない。
「はぁ…」
さっき貰ったハンカチの匂いを嗅いで呼吸をし直す。あの人には似つかないいい匂いがした。
涙を拭って、スマホを開く。
着信はもちろん、フグ太郎だろうと恐る恐る掛け直す。さっき電話が来た時の電話番号とは少し違うような気がしたけれども、はるくんとは約束の時間ではないしまだ大丈夫だろうと内心安心していた。
着信音が流れているのを横目に見て、一瞬空を仰ぐ。目が腫れぼったくこすったら次の日痛くなりそうだった。
座席の柔らかさと楓先輩の匂い。少し目を閉じてからスマホを取る。
スクロールして電話を出ようか迷ったその時だった。コンコンと窓を叩く音がした。驚き振り向くと先程の真さんだった。ドア越しにジェスチャーをしている。私に扉を開けて欲しいのだろう。
「あ、はい」
中に鍵を指した上で自分で鍵を閉めていた為、ロックを解除して開けても音がならなかった。
「これ、お土産」
そう言って渡されたのは、多肉植物だった。何故こんなものをと思ったが可愛かった。ぷにぷにとした葉っぱがこちらを覗き込んでいた。
「泣いてたの?僕が居なくて?困ったなあー」
勝手に何か言っているようだが、もちろんこの人のせいで泣いた訳では無い。むしろ感傷に浸ろうとしていたところを邪魔された気分になった。でも、そのお陰でとても楽しく過ごせてる。
「このハンカチあげるよ」
そう言って白衣から取り出したのは、男の人が持ってるとは思えないハンカチだった。青と薄紫の花が右四隅に刺繍されており、上品だった。彼は私の頬を拭き取り、そっと手に握らせた。
「本当はさ、楓の葉を君にあげたかったんだけどね。それは流石に今日は本人居るし、ああ、どうしよう。どうしたらいい。ああ、でもこの可愛い小娘にどうしても何か送りたいと思ってね」
「一言余計です!私は、小娘じゃないです!」
フグ太郎にも小娘と言われたけれども、私はそんなに幼く見えるのだろうか。失礼しちゃうと思った。
「なら、君は何なんだ?楓にとって。そして、僕にとって」
「楓先輩にとって私は、後輩です」
「ならなら、僕は?」
あははと笑いながら、冗談目かしく言う。
「貴方はモブです」
「あはは!!モブってあのよくアニメとか映画とかに出る名前のない彼らのことかい?」
「そうですね」
「いや、君面白い。そうだった。こんな格好だから僕になびかないんだね。すまない、日を改めてくれ」
そう言うと勝手に扉を閉められた。一体全体何なんだろう。キャラが濃ゆいというのはこうゆう人のための言葉に違いない。
「はぁ…」
さっき貰ったハンカチの匂いを嗅いで呼吸をし直す。あの人には似つかないいい匂いがした。
涙を拭って、スマホを開く。
着信はもちろん、フグ太郎だろうと恐る恐る掛け直す。さっき電話が来た時の電話番号とは少し違うような気がしたけれども、はるくんとは約束の時間ではないしまだ大丈夫だろうと内心安心していた。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる