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電話
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ブーブーブーブー。
着信音が流れているのを横目に見て、一瞬空を仰ぐ。目が腫れぼったくこすったら次の日痛くなりそうだった。
座席の柔らかさと楓先輩の匂い。少し目を閉じてからスマホを取る。
スクロールして電話を出ようか迷ったその時だった。コンコンと窓を叩く音がした。驚き振り向くと先程の真さんだった。ドア越しにジェスチャーをしている。私に扉を開けて欲しいのだろう。
「あ、はい」
中に鍵を指した上で自分で鍵を閉めていた為、ロックを解除して開けても音がならなかった。
「これ、お土産」
そう言って渡されたのは、多肉植物だった。何故こんなものをと思ったが可愛かった。ぷにぷにとした葉っぱがこちらを覗き込んでいた。
「泣いてたの?僕が居なくて?困ったなあー」
勝手に何か言っているようだが、もちろんこの人のせいで泣いた訳では無い。むしろ感傷に浸ろうとしていたところを邪魔された気分になった。でも、そのお陰でとても楽しく過ごせてる。
「このハンカチあげるよ」
そう言って白衣から取り出したのは、男の人が持ってるとは思えないハンカチだった。青と薄紫の花が右四隅に刺繍されており、上品だった。彼は私の頬を拭き取り、そっと手に握らせた。
「本当はさ、楓の葉を君にあげたかったんだけどね。それは流石に今日は本人居るし、ああ、どうしよう。どうしたらいい。ああ、でもこの可愛い小娘にどうしても何か送りたいと思ってね」
「一言余計です!私は、小娘じゃないです!」
フグ太郎にも小娘と言われたけれども、私はそんなに幼く見えるのだろうか。失礼しちゃうと思った。
「なら、君は何なんだ?楓にとって。そして、僕にとって」
「楓先輩にとって私は、後輩です」
「ならなら、僕は?」
あははと笑いながら、冗談目かしく言う。
「貴方はモブです」
「あはは!!モブってあのよくアニメとか映画とかに出る名前のない彼らのことかい?」
「そうですね」
「いや、君面白い。そうだった。こんな格好だから僕になびかないんだね。すまない、日を改めてくれ」
そう言うと勝手に扉を閉められた。一体全体何なんだろう。キャラが濃ゆいというのはこうゆう人のための言葉に違いない。
「はぁ…」
さっき貰ったハンカチの匂いを嗅いで呼吸をし直す。あの人には似つかないいい匂いがした。
涙を拭って、スマホを開く。
着信はもちろん、フグ太郎だろうと恐る恐る掛け直す。さっき電話が来た時の電話番号とは少し違うような気がしたけれども、はるくんとは約束の時間ではないしまだ大丈夫だろうと内心安心していた。
着信音が流れているのを横目に見て、一瞬空を仰ぐ。目が腫れぼったくこすったら次の日痛くなりそうだった。
座席の柔らかさと楓先輩の匂い。少し目を閉じてからスマホを取る。
スクロールして電話を出ようか迷ったその時だった。コンコンと窓を叩く音がした。驚き振り向くと先程の真さんだった。ドア越しにジェスチャーをしている。私に扉を開けて欲しいのだろう。
「あ、はい」
中に鍵を指した上で自分で鍵を閉めていた為、ロックを解除して開けても音がならなかった。
「これ、お土産」
そう言って渡されたのは、多肉植物だった。何故こんなものをと思ったが可愛かった。ぷにぷにとした葉っぱがこちらを覗き込んでいた。
「泣いてたの?僕が居なくて?困ったなあー」
勝手に何か言っているようだが、もちろんこの人のせいで泣いた訳では無い。むしろ感傷に浸ろうとしていたところを邪魔された気分になった。でも、そのお陰でとても楽しく過ごせてる。
「このハンカチあげるよ」
そう言って白衣から取り出したのは、男の人が持ってるとは思えないハンカチだった。青と薄紫の花が右四隅に刺繍されており、上品だった。彼は私の頬を拭き取り、そっと手に握らせた。
「本当はさ、楓の葉を君にあげたかったんだけどね。それは流石に今日は本人居るし、ああ、どうしよう。どうしたらいい。ああ、でもこの可愛い小娘にどうしても何か送りたいと思ってね」
「一言余計です!私は、小娘じゃないです!」
フグ太郎にも小娘と言われたけれども、私はそんなに幼く見えるのだろうか。失礼しちゃうと思った。
「なら、君は何なんだ?楓にとって。そして、僕にとって」
「楓先輩にとって私は、後輩です」
「ならなら、僕は?」
あははと笑いながら、冗談目かしく言う。
「貴方はモブです」
「あはは!!モブってあのよくアニメとか映画とかに出る名前のない彼らのことかい?」
「そうですね」
「いや、君面白い。そうだった。こんな格好だから僕になびかないんだね。すまない、日を改めてくれ」
そう言うと勝手に扉を閉められた。一体全体何なんだろう。キャラが濃ゆいというのはこうゆう人のための言葉に違いない。
「はぁ…」
さっき貰ったハンカチの匂いを嗅いで呼吸をし直す。あの人には似つかないいい匂いがした。
涙を拭って、スマホを開く。
着信はもちろん、フグ太郎だろうと恐る恐る掛け直す。さっき電話が来た時の電話番号とは少し違うような気がしたけれども、はるくんとは約束の時間ではないしまだ大丈夫だろうと内心安心していた。
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