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偽物
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「安藤ちゃん、早く乗って」
振り返ると脇の交差点に楓先輩が顔を出していた。
「楓先輩、遅くなってごめんなさい」
急いで助手席に乗り、シートベルトを締める。今帰ることを伝えようとしたがもう信号が赤から青になる寸前という所だったから乗り込んでから話すしかないと思った。
「大丈夫。電話は?」
「友達からでした、何か一緒にタピオカ屋行かないかって」
「はははっ、何だ。それなら別に一緒に行って良かったのに」
楓先輩は笑いながらそう言う。
「そうですね」
どのタイミングで言うべきなのだろうか。私としては今この状況はこの上ない幸せ。ふと、横を見ると楓先輩はいつものように整った美しい横顔をしていた。黒髪のサラサラの髪の毛には触れたくなるほどだった。綺麗な瞳と長い睫毛。
「安藤ちゃん」
「はい」
この幸せに込み上げてくるのは嬉しさと同時に涙のようなものが湧き出てくる。
「安藤ちゃんて言うの何か言いにくい」
楓先輩は、バックミラー越しに私と目を合わすとそう言った。
「なら、みみて呼ぶのはどうですか?」
楓先輩の方を振り向き、自分でもわかるくらいに目を見開いてるであろうレベルで彼に眼差しを向ける。
「なら楓ね」
「え」
「お互い呼び捨て、それで良い?」
「はい!!」
「煩いよ、もう少し静かに」
冗談ぽく楓先輩も笑いながらそう言う。何だかか、あの日一緒にジュースを飲んだ日を彷彿とさせるようだった。彼といるととても楽しい。
そしてまさか、楓先輩の事をこんなふうにファーストネームで呼べる日が来るなんて思いもしなかった。いつのタイミングで呼んだら良いだろう。私としては今すぐに呼びたいけれども何だか勿体ない気持ちが相反する。
「どうしたの、黙って」
そんな私の様子に気付いたのか、楓先輩は少し心配そうに聞く。
「静かにって言ったのでお淑やかにしようと思ったんです」
わざと背筋をぴんとのばし肩を貼って眼鏡がある振りをして空を持ち楓先輩の方を見る。
「へえ、出来るの」
楓先輩はいたずらにそう言う。楓先輩の為なら私はお淑やかだろうが、お転婆だろうがなんでもなれる気がする。
「やってるじゃないですか!」
信号が赤になった時に楓先輩に伊達眼鏡があるふうに振り向くとあははと大きな声で笑った。
「楓先輩!!私よりうるさいでございますよ」
そんな事をしながら車で、大学へ向かった。
振り返ると脇の交差点に楓先輩が顔を出していた。
「楓先輩、遅くなってごめんなさい」
急いで助手席に乗り、シートベルトを締める。今帰ることを伝えようとしたがもう信号が赤から青になる寸前という所だったから乗り込んでから話すしかないと思った。
「大丈夫。電話は?」
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「はははっ、何だ。それなら別に一緒に行って良かったのに」
楓先輩は笑いながらそう言う。
「そうですね」
どのタイミングで言うべきなのだろうか。私としては今この状況はこの上ない幸せ。ふと、横を見ると楓先輩はいつものように整った美しい横顔をしていた。黒髪のサラサラの髪の毛には触れたくなるほどだった。綺麗な瞳と長い睫毛。
「安藤ちゃん」
「はい」
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「安藤ちゃんて言うの何か言いにくい」
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「なら、みみて呼ぶのはどうですか?」
楓先輩の方を振り向き、自分でもわかるくらいに目を見開いてるであろうレベルで彼に眼差しを向ける。
「なら楓ね」
「え」
「お互い呼び捨て、それで良い?」
「はい!!」
「煩いよ、もう少し静かに」
冗談ぽく楓先輩も笑いながらそう言う。何だかか、あの日一緒にジュースを飲んだ日を彷彿とさせるようだった。彼といるととても楽しい。
そしてまさか、楓先輩の事をこんなふうにファーストネームで呼べる日が来るなんて思いもしなかった。いつのタイミングで呼んだら良いだろう。私としては今すぐに呼びたいけれども何だか勿体ない気持ちが相反する。
「どうしたの、黙って」
そんな私の様子に気付いたのか、楓先輩は少し心配そうに聞く。
「静かにって言ったのでお淑やかにしようと思ったんです」
わざと背筋をぴんとのばし肩を貼って眼鏡がある振りをして空を持ち楓先輩の方を見る。
「へえ、出来るの」
楓先輩はいたずらにそう言う。楓先輩の為なら私はお淑やかだろうが、お転婆だろうがなんでもなれる気がする。
「やってるじゃないですか!」
信号が赤になった時に楓先輩に伊達眼鏡があるふうに振り向くとあははと大きな声で笑った。
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そんな事をしながら車で、大学へ向かった。
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