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「伝えておく手段は本当に無いんか?」
先程のカフェの店員さんが頭に浮かぶ。けれども、楓先輩に断ることも無く勝手に帰るとなるとそれはもう二度と会って貰えないと考える。
それにまだ何も楓先輩と話してない。今日のランチはどうするとか。夕方は何処か景色を見に行ったりとか。そんなことが出来たらいいなと勝手に考えていた。
「無いです」
本当は、あるけれど今その手段を使うとなると、もう後には引けない。あの女の人が楓先輩に関わる要因を自ら作り出すなんて自分には到底できなかった。今の私ならそれは容易にできたかもしれないけれども、中身はあくまでも私なのだ。
「そか、ほんならしゃーないな。一回言ってきちんと断ってき」
フグ太郎は、そう言うとプツリと電話を切った。改めて電話番号の一覧を確認するも楓先輩は居ない。そして、何故かSNSには見知らぬ人が増えていた。このスマホはもしかして。もしかしなくてもそうなのかもしれない。はるくんは、私にこちらの世界でのスマホを渡してそれで連絡が取れるようにしてくれていたようだ。私は理由も知らずに早く取り返さないとと思っていた。けれども、フグ太郎がさっき言っていたことが本当ならはるくんが過去世の記憶がある皆に会う事で何か起きるから私から没収したに違いない。あんなに優しいはるくんが何も言わずに勝手に人のものを扱わないというのは昨日と今日でうんざりするほど感じた。
「分かった」
そう言った時には既に切れているというのは分かっていたけれども、そう言わずには居られなかった。フグ太郎もはるくんも一体何を隠しているのだろう。未来の人間ははるくんだけと知った今、逆に三回以上触れてはいけないのははるくんなのではと憶測してしまう。我ながら、こんな単純な回答しか浮かばないのは心許ないけれども、今は早く楓先輩の元へ向かわないといけない。その時だった。横から道を歩いてきて私の目の前を通り過ぎて言った女の子がいた。いやもう、女の子と言うには間違えかもしれない。
「菜都!!」
大きな声で叫ぶと、彼女は通り過ぎた所からこちらを振り返り、え!!と驚いたような顔でこちらを見る。
「みみ?」
懐かしいなつの声。
「そうだよ、なつ!!菜都もこの世界に飛ばされてたんだね」
皆過去世の記憶があると聞いたが、身体は大きくなってもなつは菜都だった。
先程のカフェの店員さんが頭に浮かぶ。けれども、楓先輩に断ることも無く勝手に帰るとなるとそれはもう二度と会って貰えないと考える。
それにまだ何も楓先輩と話してない。今日のランチはどうするとか。夕方は何処か景色を見に行ったりとか。そんなことが出来たらいいなと勝手に考えていた。
「無いです」
本当は、あるけれど今その手段を使うとなると、もう後には引けない。あの女の人が楓先輩に関わる要因を自ら作り出すなんて自分には到底できなかった。今の私ならそれは容易にできたかもしれないけれども、中身はあくまでも私なのだ。
「そか、ほんならしゃーないな。一回言ってきちんと断ってき」
フグ太郎は、そう言うとプツリと電話を切った。改めて電話番号の一覧を確認するも楓先輩は居ない。そして、何故かSNSには見知らぬ人が増えていた。このスマホはもしかして。もしかしなくてもそうなのかもしれない。はるくんは、私にこちらの世界でのスマホを渡してそれで連絡が取れるようにしてくれていたようだ。私は理由も知らずに早く取り返さないとと思っていた。けれども、フグ太郎がさっき言っていたことが本当ならはるくんが過去世の記憶がある皆に会う事で何か起きるから私から没収したに違いない。あんなに優しいはるくんが何も言わずに勝手に人のものを扱わないというのは昨日と今日でうんざりするほど感じた。
「分かった」
そう言った時には既に切れているというのは分かっていたけれども、そう言わずには居られなかった。フグ太郎もはるくんも一体何を隠しているのだろう。未来の人間ははるくんだけと知った今、逆に三回以上触れてはいけないのははるくんなのではと憶測してしまう。我ながら、こんな単純な回答しか浮かばないのは心許ないけれども、今は早く楓先輩の元へ向かわないといけない。その時だった。横から道を歩いてきて私の目の前を通り過ぎて言った女の子がいた。いやもう、女の子と言うには間違えかもしれない。
「菜都!!」
大きな声で叫ぶと、彼女は通り過ぎた所からこちらを振り返り、え!!と驚いたような顔でこちらを見る。
「みみ?」
懐かしいなつの声。
「そうだよ、なつ!!菜都もこの世界に飛ばされてたんだね」
皆過去世の記憶があると聞いたが、身体は大きくなってもなつは菜都だった。
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