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動かないキーホルダー

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「はる、ありがとう!!」
どうしてこんなになんでも出来る人が私と結婚してくれたんだろう。またそう考えつつも、言葉に出るのは語彙力が高校生のままだからなのか、それとも単純に私自身に何も身についてないのかいつものありがとうの文字だけしか言えない。そして、決定的な言葉を聞きたくないというのもあり逃げている事にも気付いていた。
「どういたしまして」
彼はそれに気付いてるのか、気付いてないのかはたまた気付いてる振りをしているのか。
柔らかく優しくにこにこと笑いそう。
「さあ、歯を磨いて御手洗に行ったら出発しよう」
この時間は渋滞しやすいからねと言い、私の手を引き洗面台に連れていく。はるくんは、私に色々メイクをしてくれたメイク道具や、櫛、スプレーなどをササッと元の位置に並べて私の歯ブラシに歯磨き粉をつけて渡してくれる。
「·····はっ。ありがとう」
一連の流れの動作が凄すぎて、思わず見とれていた。その様子を唇に手を当て、くすっと笑ってみていたはるくん。
「みみが沢山ありがとうを言ってくれるから凄く嬉しいよ」
そう言うと、口に歯ブラシを持っていき磨き始めるはるくん。私も同じように真似てはるくんと一緒に磨き始める。その後、いよいよ外何出ることになり玄関の鍵を閉める時にフグ太郎が動いていないか確かめる。けれども、フグ太郎は全く動かずに固まっている。
「みみ、どうかした。様子が可笑しいけど」
「そうかな、何も無いよ」
フグ太郎が動かないことを除いて。
「そっか、なら行こう」
また車に乗り、私達は最初の日のように同じ道を通る。
「何か食べたいものは?欲しいものとか。女の子って可愛いものとか、小さいものとか、丸いものが好きなイメージがある」
「それだけ聞くともう私の頭の中ではタピオカしか出てこない。タピオカ飲みたいな!ねぇ、はる!!」
物凄く自分でも輝いているであろう目ではるくんの方を振り返る。こちらに振り向きはしないものの、バックミラー越しにはると目が合い、何か恥ずかしい気持ちになった。
「みみのお話終わったら飲みに行こう。俺他に寄るところ有るから後で合流しよう」
そう言うとふふとまたいつものように笑う。
「ねえ、はるっていつものその笑い方してるの?」
楓先輩は、笑う時は男の子らしいというか子供みたいに無邪気に笑う。いつもクールに見えるのにそこが凄くギャップでもあり、当初から好きだった。
「いや、そんな事無いよ。ここがいちばん近いから一旦ここに停めるね。みみ、気を付けて出てね」
車が止まると同時に手を振ってくるはるくん。
「あっ、うっ。うん。行ってきます!」
半ば勢いに任せて外に出る。
楓先輩に会える。



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