トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

文字の大きさ
上 下
27 / 182

始まり

しおりを挟む
「今日は何着ようかな、ふふ」
クローゼットを開けるとクリーニング済みのコートやスカート。そして、ズボン。
「何かダボダボしてるのって可愛いよな」
下から急にぶりっ子した声が聞こえるがその声は野太い。
「え?」
下をみると、小さなフグのキーホルダーが喋ってる。
「何や、変な顔して」
「え?」
「あんたや、あんたに言っとるや。そこの頭悪そうな嬢ちゃん」
「誰なの」
「全く最近の若いやつは、スマホやソシャゲ、二次元にアイドル。社会のことには興味なし」
「え、何。本当に」
「あんたもあれやろ。ギガ不足だとか何だとか騒いでスマホックビ。ストレートネック女やろ」
「ストレートネック女·····」
「わしか、わしはな。ふぐ太郎や。ここに来るようなってからほんに退屈やわ。はよ、外に出してや」
ぴょんぴょん飛び跳ねるふぐのキーホルダー。
「怖い、未だかつて無い恐ろしさ。ごから始まってりで終わるあの半端ない光沢と生命力の触覚を持ってるやつより怖い」
「何やと小娘。お前さんの方がよっぽど恐ろしいわ。こんなにプリティーで可愛らしいフグ太郎をほっとくなんて。なんて奴や」
「はるっ、はるっ·····!!」
一体全体、昨日から何が起こってるの。やっとこの状況に慣れてきて食事も喉を通るようになってきたと思った束の間この有様。
「あんた、なんて奴や。こちとら挨拶してやったのに自分は名乗りもしないで助けを求める。なんて最低な奴や。どうしてこんな小娘と遥は結婚したんや。嫌やわ、わし。別れさせたろか」
またもや飛び跳ねたかと思うと、フグ太郎は外に飛び出してきた。
「いやあーーー!?」
ぴょんぴょん跳ねて、外に出たキーホルダーに腰を抜かす。
「人間てのはなんでこんなにでかい図体して臆病なんやろうな?わしには分からんわ~」
とぴょんぴょん跳ねてベットの真ん中に着地する。
「いいか、嬢ちゃん。わしはな遥の親友や。で、あんたを何としてでも阻止したいんや」
「無理よ、素性も知らないフグのキーホルダーの言うことなんて聞けるはずない」
「消えてよ、怖い。何これ幻覚?」
私は思わず頭を抑え込む。幾らいつも妄想や楽しいことで頭がいっぱいな私にもこの状況は理解し難い。
「やめろや、ほんに消えかかったとしてもわいはあの有名な映画みたいに木の実を食べさせられへんで~」
「変な所で冗談言わないでよ」
「ありゃりゃ、困ったな~。で、本題に戻るぞわしは、だらだら話したくないんや」
そう言うと、ふぐ太郎は口から紙を吐き出し、
「口紅貸りんで~」
と言っていつの間にか口紅を持っており、それを唇のような所につける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...