トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

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「よしよし」
はるくんは、私の頭を優しく撫でる。
「っ·····」
「慣れないことばかりで緊張したね。大丈夫だよ、無理をしないで」
「ありがとう」
「おいで」
はるくんが手を離したかと思うと優しく手を広げている。
「んっ…」
止まらない涙を見せないように彼の腕に縋り付く。それを優しく受け止め背中に手を添えてくれる。
「沢山甘えていいよ、楓には絶対言わないから」
一番気にしていたことを察されて、一瞬驚き離れようとしたのを優しく腕の中へ引き込まれ制される。
「はるっ…」
ごめんなさい。そう言おうとしたけど、それはいちばん酷い言葉だと思い言葉を飲み込む。今は自分の意思とは裏腹に流れてくる涙に戸惑いと不安しか感じられなかった。
「ごめんね、みみ」
彼は優しく慈しむように私の顔を覗き込み指で涙を拭う。
「何で…?」
私の方が謝らないといけないのに。はるくんは、再び私を先程より強く抱き締める。
「俺の配慮が足りなかったね、沢山驚かせてごめん」
そう言うと、私の背中に回っていた両手が浮く。数秒たって後ろを振り返ると私の左手にもある指輪を抜き取っていた。驚きと言うより何があったのか分からずただ呆然と見てた。
「許して、みみ」
私を安心させるように優しく笑い指輪を猫のゴミ箱へ投げ入れた。
「はる·····?」
気が付くと、涙が止まっていた。この人は一体何をしてるのだろう。今の光景が脳内で繰り返される。
「みみ、手を貸して」
柔らかく微笑むはるくんの本当の表情が見えない。
「やだっ、何でっ。はる何してるの?」
思わずはるくんの手を握る。
「みみ、俺は至って普通だよ。こうするのが正しいんだ」
先程とは違い、私を宥めようと少し困ったように言う。
「可笑しいよ。私が一週間後戻ったらどうするの?」
はるくんの腕を掴み、問いただすように聞く。
「ふふ、そんな事は考えなくて良いよ」
とんとんと背中を優しく撫でる。まるで関係ないから関わるなと言われているような感覚に陥る。確かに私はこんな風にトリップしてきてしかも好きな男の人を探したいだの喚いていたけれど。挙句に消して頭も良い方とは言えない。だがそれにしてもどうしてこの人は昨日の態度とは裏腹な行動を急に取るのだろう。
「私が泣いたから?」
それだけだとは到底思えなかったがそう聞くより他は無かった。
「違うよ、覚悟を決めたんだ」
そう言うとはるくんは私の額に優しくキスを落とした。
「··········」
キスが終わると私の掴んでいた手を優しく解き、立ち上がる。






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