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絵本

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「みみがここが良いって言ったんだよ」
「そうなんだね」
「うん、まさか初めて見た時と同じこと言うから驚いた」
はるはベッドから乗り上げていた身体を戻し、掛け布団に半分程入る。
「そうかな、こんなに綺麗だったら何回でも言いたいじゃない!!」
ベッドの上でぴょんぴょんしたい気持ちを抑えてはるの手を握る。
「ふふ、喜んでくれて良かった」
はるは私の手を握り、そのまま自分の方に引いて私の額に自分の額を当てる。
「寝れなくなるよ」
「どうして?」
「恥ずかしいから」
「ふふ、そっか。なら」
急に顔を離すと電気スタンドの置いてある台の下に手を伸ばす。
「どうしたの?」
急に頭を離されて何故か水鉄砲を食らったように思考が追いつかなかった。
「これ」
「何これ凄い!!」
「暗いところで光る絵本なんだ」
「読んであげようか」
はるくんは、2人の座っているあいだに絵本を置いて私にいたずらに微笑む。
「良いの?」
「うん、みみが安眠できるように心を込めて読むよ」
「はる…」
表紙には虹色の迫力ある不死鳥が光り輝いている。
「触っていいよ」
    私が言いたいことを察したのか、はるは表紙を捲らずに穏やかに待ってくれている。
「凄い、浮き出てる」
サラサラと表紙を撫でる。
「蓄光塗料と夜光塗料が交互になってるんだ」
「何それ…?」
「蓄光塗料は昼に当たった光が夜に蓄積されて発行する。夜光塗料は暗いところで光る」
「そうなんだ」
「うん、綺麗に光る日もあれば光らない日もあるって事だよ」
「今日は?」
「今日は少し薄いかな」
「そっか、それなのにこんなに綺麗に光るんだね」
「喜んでくれて良かった」
はるくんは、私の方に手を回して髪の毛を優しく撫でる。
「……」
暗い状況の中で否が応でもはるくんの手の感覚に集中してしまう。
「明日の夜でもいいかな。一番綺麗な状態で見て欲しいて思って」
「分かった、じゃあ楽しみにしとくね」
「··········」
「はる?」
「明日····」
「うん」
「明日何が食べたい?」
「鶏そぼろ!!あとね、野菜炒め!ピーマンは少なめがいいな」
「ふふ、可愛い」
はるは、私の腰まで掛け布団を掛けて、電気スタンドの下に直す。
「寝ようか」
「うん、お休みなさい」
私は布団に潜り込み足をばたつかせる。
「お休み、みみ」
はるくんは、私より少し離れた場所に潜り込み優しく目を閉じた。
今日は一日でたくさんの事が起きた。これからどうなるのだろう。不思議と眠れないということはなく、心地の良い睡魔がみみを襲い眠りについた。

    
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