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月光と雲

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「そう言えば、みみは黒髪が好きなの?」
洗面所につきペリペリと新品の歯ブラシを剥がす。爪が上手く引っかからず、慌てふためいていると
「貸してごらん」
はるくんはちゃんと開ける部分から一直線に開ける。そして、私の分も歯磨き粉をつけてくれる。
「ありがとう、うん。好きな人ならどんな髪でも好きだよ」
はい、と歯ブラシを渡してくれる。 
「ありがとう」
ピンクの新しい歯ブラシに新しくついた白い歯磨き粉。何だかわくわくする。しゃかしゃか歯を磨きたくなる。
「そうなの、じゃあ俺は?」
「うん?」
「俺の髪の色好き?」
「え、えと…。はるに似合ってて綺麗な色だと思うよ」
「そうじゃなくて、みみが好きなのかって聞いてんだよね」
さっきとは違い明らかに不機嫌なオーラを出してくる彼。
「それは…」
「このシャンプーの匂いとか服装とかは好き?」
「好きも嫌いもはるが決めて」
「意地悪」
「そうじゃなくて、私はどんなにその人に似合ってるものでもその人が好きじゃないと輝かないと思うの」
「··········」
「はる自身が好きだから、自信がついてその服も髪も輝くと思うの」
て、何勝手に時伏せようとしてるの。こんなにお世話になってるのになんてやつ。
「あの、今のは…」
「じゃあ、みみは俺の一番だから。ずっと輝いてるね」
優しく微笑み口に歯ブラシを運ぶ。
「あ、ありがとう」
あまりにも普通に言うから照れてしまう。何と言うか手のひらで転がされるというのはこうゆうことを言うに違いない。そんなことを考えながら斜め下を見て目を合わせないように歯を磨く。また面映ゆい気持ちが込み上げてきて、歯ブラシを噛みそうになるのを抑える。
その後、朝目が覚めた寝室に行く流れになった。そうだった、一緒に寝ないと行けないんだ。
「みみ、どうしたの。おいでよ」
はるくんは、先にベッドに入ってスマホをベッドの充電器に刺す。勿論私のスマホも。
ポンポンと右側の空いてるスペースを軽く叩く。
「うぐっ…」
「まさかこの期に及んで意識して寝れないとか無いよね」
はるくんは、顔色ひとつ変えずにそう言う。
「明日楓を探しに行くんだから。早く寝ないと。女の子は好きな男の子にくまなんて見せられないでしょ」
さあ、と掛け布団をめくる。
「おいでよ、何もしない。夜景が綺麗だから見て欲しくて」
「そうなの、見たい!!」
ばっと布団に飛乗る。
「ふふ、ほら」
はるくんがカーテンを開けるとそこには入浴中に見てたタワーがさっきより見える位置の目の前にあった。赤からピンク。紫から青その後海のエメラルドグリーンに変わっていく。
お昼には、人力車が走ったりするここの町はまた夜になると一味違う。夜の匂いがする。静かなようで何処か燃えるようなそんな所があるから人は夜景が好きなのではと思う。
「綺麗…最高!!!」
思わずそう叫んでいた。
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