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月光と雲

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ということは、将来の私はきちんと料理も洗濯も炊事も出来てるということなのね。庭で家庭菜園とかして食費を浮かせたり、子供の為を思って養育費を積み立てたり。うんうん、きっとそうに違いない。台所を操れないやつは家のことは出来ないとか何とか本で言ってた気がするし。
「ふふふ、どうかした?嬉しそうな顔してるけど」
「あっ、いえ何も…」
駄目だ、ついつい空想の世界に飛び込んでしまった。
「そう?疲れたのかな。身体に何か異常とか無い?その、トリップしてるから」
「大丈夫だよ、今のところ何も問題は無いよ」
「なら良かった、歯ブラシ新しいのを出すからちょっと待っててね」
「ありがとう。でも二人で暮らしてるんだよね。そしたら、私が使ってたので良いよ」
そうよ、良き妻は無駄な消費はしないはず。
「ううん、丁度換える時期だから気にしなくていいよ」
 「そっか、ありがとう」
でもよくよく周りを見ると、新しいものばかりしかない。変な違和感。いくら新居だからと言って今日私がはるくんに手渡されたものは全て新しい。
「あの、もしかしてそんなに派手に喧嘩を?」
頭に血が上がって出てってやるとか私ならしかねない。
「ぶっ、あはは。まさか」 
はるくんは、お腹がよじれるほど笑ってる。
「みみって、本当に想像力豊かだね。面白い」
「なっ、そんなこと!」
今の発言で既にに認めている事にもっと羞恥を覚える。
「あれ、褒めたつもりだったんだけど」
そういった後、はいと青とピンクの歯ブラシを出してくる。
「どっちが良い?」
「うーん、ピンクが良い」
「了解」
「じゃあ、洗面所に行って歯を磨こうか」
「一緒に?」
「うん、一緒に」
するっと手を絡めてきて彼が優しく微笑む。
「はるの手冷たくて気持ちいい」
「ありがとう、みみの手も柔らかくて好きだよ」
「ふふ、何かお兄ちゃんの手を思い出す」
思わず両手でプニプニと触る。
「そう?」
利き手とは逆の手をグーパーしてはるくんはにこにこする。
「みみの手握ると安心する」
「ありがとう」
ぎゅっとはるくんの手を握る。
「嫌じゃなかった?手繋ぐの」
私が握った力より弱く握り返してくる。
「嫌じゃないよ」
「…良かった」
「ふふ」
明らかに安心したように言うから思わず笑みがこぼれる。
「じゃあ好き?」
「好きだよ!」
「そっか、じゃあこれからは繋ぎたい時に手を繋いでも良い?」
「いいよ、許可なんて取らなくても。はるの手はにゃんこの肉球並みに気持ちいいもん」
「にゃんこ…」 
「うん!」
はるくんは先程と変わらず、笑顔だが陰りが見えた。

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