トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

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月光と雲

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「そろそろ歯磨いて寝る?」
はるくんは、いつの間にかココアを飲み干し立ち上がる。はるくんが立ち上がったところにはまだ少しの凹みが残っている。そして、クリーム色のソファには染み一つない。
「うん、そうだね」
私はココアを一気に飲み干して同じように立ち上がる。
「ふふ、口にココア付いてるよ」
手で拭おうとしてくれたのか唇に手を持ってくる。
「じ、自分で出来るよ!ティッシュ貰うね」
「遠慮しなくていいのに、コップ貰うよ」
いつの間にかコップが私の手からすり抜けて、はるくんの手元にあった。リモコンでテレビの電源も切りキッチンへ向かうはるくん。その隙に水色のティッシュ箱からティッシュを一枚取り、口のココアを拭う。近くにあったごみ箱入れは猫のデザインになってて足で踏むと丁度口の部分が開く。そこにはコンビニ弁当のゴミが袋で結ばれて捨てられてた。
「みみ、どうかした?ゴミそこに捨てていいよ」
優しくえくぼが出来た微笑みでこちらの様子を伺ってくるはるくんはもうさっきのマグカップの事を聞いた時のはるくんとは違う。
「ありがとう、可愛いゴミ箱だったからつい見とれちゃって」
「分かるよ、それ可愛いよね。お気に入りの家具だよ」
コップを洗う時の伏せ目がちの顔も整ってて、凄く綺麗だ。というか、思ったんだけどどうして私ははるくんと結婚できてるのだろう。私は平凡だし、これと言っても特技もない。敢えて言うなら、人より恋愛体質な人間だということは分かる。
「みみ、本当に猫好きだよね。それなのに、猫アレルギーだから前に猫カフェにどうしても行きたいって、高いマスクとゴーグル買って持っていこうとしてて笑っちゃった」
「ええ!そんなことあったの」
我ながら大人になってるのになんてことをしてるんだろうと恥ずかしくなってしまった。
「うん、せめて行けないならこれ買ってって言われてちょっとごみ箱にしては高いけど買ったんだ」
あははっと笑いながら、お水でマグカップを濯いで食器乾燥機に入れてボタンをピッと押す。
「さっ、歯を磨こうか」
そう言われたので、はるくんが居るキッチンに向かうとキッチンの台を台拭きで綺麗に拭いて、お水で洗いそれを絞って台拭き掛けに掛けていた。
「はる、凄い。主婦みたい」
思わず心の声が漏れてしまった。キッチンは汚れ一つ無く、輝いておりモデルルームのような綺麗さだ。
「そんな事ないよ、いつもはみみがやってるから真似してるだけだよ。みみ、いつもありがとうね」
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