14 / 182
食事と彼
しおりを挟む
「みみ、これからはもっと大切にする」
唇が離れたと同時に伝えられたその言葉。
「だから好きになって」
最後に長く角度を変えながらキスをされる。
肩と腰に腕を回して顔が近いままの状態で聞いてくる。
「今のみみに好きになって欲しい」
ぎゅっと抱きしめられた私の中で何かが始まった気がしたけれど、同時に何かが終わった。
「はるっ、離してっ」
私は楓先輩が好き。でも、流されてしまった自分も確かにここにいる。はるを両手で押し返そうとするけど駄目だった。それに嫌じゃなかった。
「こんなことすると思わなかったでしょ」
両手を持ち上げられて顔を近付けられて言葉を放つ。
「··········」
「あいつとはキスしないで」
「あいつって…」
「楓」
「俺とだけして、その代わり全部あげる」
「はる、落ち着いて」
「落ち着いてるよ、ただこれが本音なだけだよ」
「··········」
「さっきまでの威勢はどうしたの」
「はる、どうして?朝起きた時は協力してくれるって言ったのに」
「そう言わなかったらみみは俺と話す理由はあった?」
「無い…」
「でしょ、理屈的に考えてそれが一番早いと思ったんだよ」
「じゃあ、最初から会わせる気なんて」
「無かったよ」
「なっ、なんで·····そんな」
涙が零れてきた。どうしよう、どうしたらいいの。何で、何が起こってるの。分からない。
「まさかあの時会うとは誤算だった」
そのまま、腕を引かれてリビングの方へ連れて言われる。
「取り敢えず涙を拭いて」
言葉とは裏腹にティッシュで優しく涙をふき取ってくれた。
「酷いと詰ってもいいよ、後悔してないから」
「はるが後悔してなければ何してもいいの?」
何でこれは夢じゃないの。会いたい、先輩。楓先輩に会いたい。
「ある意味そうだね、みみにとってはエゴイストでしかないかもしれない」
「はる、私はあなたの気持ちがわからないことは無いけど、今の私には理解し難いよ」
再び涙が滲み机に染みを作る。
「明日、連絡を取るよ」
「え?」
予想外の展開に驚きを隠せない。声は本当に驚いていても、脳は直ぐに喜び暗黒の雨雲の中に一筋の光が入ったような気分だった。
「みみの大好きな楓先輩に」
「……」
寂しそうに目を細め子供をあやす様に頭を撫でる。男の人に頭を撫でられるのは初めてで女の人とは違う大きな手に戸惑いを覚えた。
「ご飯食べれそう?食べて欲しいな」
その場からはるくんが離れて、換気扇のゴオオオという音とガスコンロのスイッチが入る音がする。その後、何を食べたのかも覚えてないくらいに時は早く過ぎた。
「みみ、お風呂沸いたよ。先に入っておいで」
食事の後、今日あったことをぼんやり思い出しながらみみはソファに座って適当にテレビを眺めていた。
「うん、ありがとう」
立ち上がるとはるくんが私のパジャマと下着からタオルまで全て渡してくれた。
「どうかした?」
本当に悪意は無いらしく、目尻が少し下がった笑顔を向けてきて口元も柔らかく綻ぶ。
「ううん、ありがとう」
着替えを受け取りその場を去ろうとリビングから出ようとする。
「ああ、そうそう。一緒に入る?」
「なっ…」
「夫婦だからさ良いでしょう?」
唇が離れたと同時に伝えられたその言葉。
「だから好きになって」
最後に長く角度を変えながらキスをされる。
肩と腰に腕を回して顔が近いままの状態で聞いてくる。
「今のみみに好きになって欲しい」
ぎゅっと抱きしめられた私の中で何かが始まった気がしたけれど、同時に何かが終わった。
「はるっ、離してっ」
私は楓先輩が好き。でも、流されてしまった自分も確かにここにいる。はるを両手で押し返そうとするけど駄目だった。それに嫌じゃなかった。
「こんなことすると思わなかったでしょ」
両手を持ち上げられて顔を近付けられて言葉を放つ。
「··········」
「あいつとはキスしないで」
「あいつって…」
「楓」
「俺とだけして、その代わり全部あげる」
「はる、落ち着いて」
「落ち着いてるよ、ただこれが本音なだけだよ」
「··········」
「さっきまでの威勢はどうしたの」
「はる、どうして?朝起きた時は協力してくれるって言ったのに」
「そう言わなかったらみみは俺と話す理由はあった?」
「無い…」
「でしょ、理屈的に考えてそれが一番早いと思ったんだよ」
「じゃあ、最初から会わせる気なんて」
「無かったよ」
「なっ、なんで·····そんな」
涙が零れてきた。どうしよう、どうしたらいいの。何で、何が起こってるの。分からない。
「まさかあの時会うとは誤算だった」
そのまま、腕を引かれてリビングの方へ連れて言われる。
「取り敢えず涙を拭いて」
言葉とは裏腹にティッシュで優しく涙をふき取ってくれた。
「酷いと詰ってもいいよ、後悔してないから」
「はるが後悔してなければ何してもいいの?」
何でこれは夢じゃないの。会いたい、先輩。楓先輩に会いたい。
「ある意味そうだね、みみにとってはエゴイストでしかないかもしれない」
「はる、私はあなたの気持ちがわからないことは無いけど、今の私には理解し難いよ」
再び涙が滲み机に染みを作る。
「明日、連絡を取るよ」
「え?」
予想外の展開に驚きを隠せない。声は本当に驚いていても、脳は直ぐに喜び暗黒の雨雲の中に一筋の光が入ったような気分だった。
「みみの大好きな楓先輩に」
「……」
寂しそうに目を細め子供をあやす様に頭を撫でる。男の人に頭を撫でられるのは初めてで女の人とは違う大きな手に戸惑いを覚えた。
「ご飯食べれそう?食べて欲しいな」
その場からはるくんが離れて、換気扇のゴオオオという音とガスコンロのスイッチが入る音がする。その後、何を食べたのかも覚えてないくらいに時は早く過ぎた。
「みみ、お風呂沸いたよ。先に入っておいで」
食事の後、今日あったことをぼんやり思い出しながらみみはソファに座って適当にテレビを眺めていた。
「うん、ありがとう」
立ち上がるとはるくんが私のパジャマと下着からタオルまで全て渡してくれた。
「どうかした?」
本当に悪意は無いらしく、目尻が少し下がった笑顔を向けてきて口元も柔らかく綻ぶ。
「ううん、ありがとう」
着替えを受け取りその場を去ろうとリビングから出ようとする。
「ああ、そうそう。一緒に入る?」
「なっ…」
「夫婦だからさ良いでしょう?」
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる