トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

アールグレイ

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不器用な愛

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「みみ、起きて」
遠くで誰かが呼んでいる。
「ご飯出来たよ、起きれる?」
お母さん?それにしては低い声。それにこんなに優しく起こしてくれない。
「楓先輩?」
そうだったら良いな。なんてね·····。
「違う、遥だよ」
くすくすっと笑う声が聞こえる。どうして笑ってるの?
「涎が凄いよ、みみちゃん」
ティッシュで優しく口を拭いてくれている。
「ん·····ん·····ん?」
「起きた?」
今朝と同じく目の前に跨って様子を伺っている彼。
「はっ!!」
「ぶっ…、目の開き方が凄いね」
あはははとお腹を抑えてはるが笑ってる。
「なっ、ななんで笑ってるの!」
物凄く恥ずかしい。涎も寝言も。口を拭いてもらったのも。
「恥ずかしがらなくていいよ、よしよし」
とにこにこしながら頭を撫でてくる。
「そろそろ起きれる?ご飯出来たよ」
と掛け布団をばっと捲ってきた。
「あっ、お布団返して」
「ご飯食べてお風呂入ってからちゃんて寝てね」
掛け布団を畳み、左手に掛けてこちらを何も反論できなさそうな笑顔で見てる。
「はい」
「よし、ではまず顔を洗っておいで。タオルは洗濯機の上の棚にあるからそこから取ってね」
「かしこまりました」
眠たい目を擦って、ベッドから降りる。洗面所は玄関の近くにあって横にお風呂が隣接している。真向かいには御手洗。廊下を突っ切ったところにリビング。その1歩手前に寝室がある。そこには、透明な歯ブラシと黄色の歯ブラシ。横に汚れをごっそり落とすっと書かれてある歯磨き粉。そして、鏡の横にあるスペースにはワックスとヘアクリームとスプレー。そして豚毛の櫛が横になっている。コテとドライヤーは屈んだところにある両開きの棚に収納されていた。洗面所を見ると生活感が溢れていて目の前に写ってる自分は高校生の時の私よりも大人になっていた。いーっと、口を開けて歯並びを確認したり、櫛で髪を梳いたり。私のために置いておいてくれたであろう、タオルと青い石鹸。
「この色の石鹸面白い」
泡立ネットで泡立てた泡も青色で心がうきうきしてくる。手に付着した泡でシャボン玉を作れないかと少し丸を作ると、手にシャボン玉のような虹色の半透明な膜が出来る。ふっと息を吹くとパチンと弾けてしまった。その後、お待ちかね顔に青色の泡をのせていく。あの六つ子が出てくるアニメのゲルゲのように顔全体が青のふわふわで襲われる。何これ楽しい、面白い。若しかしたらこの家にはいろんな細工が仕掛けてあるのかもしれない。そうだ、結局は自分なのだから私が楽しめるようなものが置いてあるに違いない。そう考えながら、蛇口から水を中ぐらいに捻り、1分ほど泡が浸透するのを待った顔を優しく洗い流していく。程なくして顔を洗い終わり太陽を朝一に見た時のような爽快感に襲われる。
「気持ちいい」
柔らかい柔軟剤がほのかに香る白のタオルで顔を拭く。



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