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リアルな夢
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「どうした、びっくりした。昔みたいに呼ぶから構えたよ」
楓先輩は、私が抱き締めた腕を解いて私の顔を覗き込む。
「楓先輩っ、私ですよっ。先輩によくお勉強を教えて貰ってた」
どうして、腕を解くの。夢なら抱き締めさせてくれてもいいのに。
「知ってるよ、どうしてここに急に来たのって聞いてるんだよ」
驚いたように目を開いて私の様子を伺う楓先輩。
「先輩、先輩は私のこと好きでしたか?今結婚してますか?」
いつ夢が終わるか分からないから事を急いでしまい、先輩への配慮が足りず不安と焦りが入り交じったものになった。
「ここ座って」
と先輩は立って真向かいにある椅子に手を伸ばす。
ストンと背もたれ付きの白い丸椅子に腰を下ろす。
「急に驚いたよ、これは何かのドッキリ?」
懐疑的な様子で聞いてくる彼は今は話したくないのかどうかは分からないが、少なくとも呆れている様子は伝わる。
「違います、一刻も争う事態なんです!いつもとの世界に返されるか分からない。ましてや、スーツ姿の貴方なんて後何年待たなくては行けないかは想像が出来ます。是非とも写真を」
あ、趣旨がずれた。
「あっ、こ、これは違います。い、いや、違わないですが……。兎に角先輩は結婚してるんですか?してないんですか、お願いします。答えて下さい」
楓先輩、お願い答えて。
「君は?」
まさかの質問返しをされた。
「え、えと」
これって不倫になるのかな。いやならないはず。何故なら夢だから。
「私は誰とも結」
結婚してませんと言おうとした時。
「みみっ!!」
焦りと、怒りが混じった大きな声が後方から鳴り響く。
「えっ、なん」
考える暇もなく、左腕を掴まれ立ち上がらせられる。そして、彼の後ろへ引っ張られ若干よろける。
「僕の妻が突然すみません、また改めさせてください」
と頭を下げているはるくん。先程まで、一緒に探してくれていたのに何故。もしやこの人は、何か知っている?アリスで言う時間に追われる白うさぎのような役割なのかな。
「ちょっ、離して」
でもそうだとしても今ここから離れたら確実に夢が覚めてしまう。嫌だよ。
「大丈夫ですよ、きっと久しぶりだから嬉しかったんだと思います」
ね、と私を見ながら微笑む楓先輩。
「信じて下さい、違いますよ!!ね、は…」
後ろを振り返り同意を求めようとしたら一瞬何とも言えないような哀愁漂う表情をして首を横に振られる。どうして?何でなの。だってはるは一緒に探してくれてたのに。
「今度は来る時を教えてね、映画の撮影でも始まったのかと思って内心笑いがとまなかったよ。来てくれてありがとう、この後仕事だからまたの機会に」
スっと立ち上がり、コーヒーカップを返却口の方まで持っていく。
「えっ、あっ、ちょっと待って。お願い、先輩」
走り出そうとした私をはるが制する。
「みみ、帰るよ」
手の力とは裏腹に優しい口調で私に諭す。
「はる、どうして一緒に探してくれるって言ったじゃないですか」
半ば怒りと焦りが混合して強く当たってしまう。
「ごめんね、みみ。許して。伝えときたいことがある」
楓先輩は、私が抱き締めた腕を解いて私の顔を覗き込む。
「楓先輩っ、私ですよっ。先輩によくお勉強を教えて貰ってた」
どうして、腕を解くの。夢なら抱き締めさせてくれてもいいのに。
「知ってるよ、どうしてここに急に来たのって聞いてるんだよ」
驚いたように目を開いて私の様子を伺う楓先輩。
「先輩、先輩は私のこと好きでしたか?今結婚してますか?」
いつ夢が終わるか分からないから事を急いでしまい、先輩への配慮が足りず不安と焦りが入り交じったものになった。
「ここ座って」
と先輩は立って真向かいにある椅子に手を伸ばす。
ストンと背もたれ付きの白い丸椅子に腰を下ろす。
「急に驚いたよ、これは何かのドッキリ?」
懐疑的な様子で聞いてくる彼は今は話したくないのかどうかは分からないが、少なくとも呆れている様子は伝わる。
「違います、一刻も争う事態なんです!いつもとの世界に返されるか分からない。ましてや、スーツ姿の貴方なんて後何年待たなくては行けないかは想像が出来ます。是非とも写真を」
あ、趣旨がずれた。
「あっ、こ、これは違います。い、いや、違わないですが……。兎に角先輩は結婚してるんですか?してないんですか、お願いします。答えて下さい」
楓先輩、お願い答えて。
「君は?」
まさかの質問返しをされた。
「え、えと」
これって不倫になるのかな。いやならないはず。何故なら夢だから。
「私は誰とも結」
結婚してませんと言おうとした時。
「みみっ!!」
焦りと、怒りが混じった大きな声が後方から鳴り響く。
「えっ、なん」
考える暇もなく、左腕を掴まれ立ち上がらせられる。そして、彼の後ろへ引っ張られ若干よろける。
「僕の妻が突然すみません、また改めさせてください」
と頭を下げているはるくん。先程まで、一緒に探してくれていたのに何故。もしやこの人は、何か知っている?アリスで言う時間に追われる白うさぎのような役割なのかな。
「ちょっ、離して」
でもそうだとしても今ここから離れたら確実に夢が覚めてしまう。嫌だよ。
「大丈夫ですよ、きっと久しぶりだから嬉しかったんだと思います」
ね、と私を見ながら微笑む楓先輩。
「信じて下さい、違いますよ!!ね、は…」
後ろを振り返り同意を求めようとしたら一瞬何とも言えないような哀愁漂う表情をして首を横に振られる。どうして?何でなの。だってはるは一緒に探してくれてたのに。
「今度は来る時を教えてね、映画の撮影でも始まったのかと思って内心笑いがとまなかったよ。来てくれてありがとう、この後仕事だからまたの機会に」
スっと立ち上がり、コーヒーカップを返却口の方まで持っていく。
「えっ、あっ、ちょっと待って。お願い、先輩」
走り出そうとした私をはるが制する。
「みみ、帰るよ」
手の力とは裏腹に優しい口調で私に諭す。
「はる、どうして一緒に探してくれるって言ったじゃないですか」
半ば怒りと焦りが混合して強く当たってしまう。
「ごめんね、みみ。許して。伝えときたいことがある」
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