上 下
6 / 182

ドライブ

しおりを挟む
「みみ、準備出来た?」
着替えている私にそう言ったはる。
「はい、出来ました」
22歳の私の服は、脳内16歳の私とは違った趣味だった。楓先輩に会える。脳内はそれ一色になっていた。
「あっ……」
今更だが、楓先輩は私がこの夢の中で結婚してることに関して、どう思っているのだろうか。そう言えば、私は楓先輩を追っかけててあの後の記憶が無い。一体どうなっているんだろう。怪我をしたり、入院したりなっていないと良いのだけれど。
「みみ、開けていい?」
はるくんはコンコンとドアを叩いてドア越しに言う。
「どうぞ」
何か変な気分。即ちこれは、あれだよね。世間一般で言う。よく少女漫画に出てくるあれだ!
「ははは、ハニー。やっぱり可愛いね、君は世界一だよ」
「もう、ダーリンたら♡ダーリンも、イケメンで最高よ」
みたいなことよね。しかも、大抵こうゆう時は、王道的にモジモジしてどうかなと聞くべきかそれとも、モデルさんみたいに格好付けるのか。私に合ってるのはどっちなんだろう。そもそも、22歳の私のキャラ設定はどうなっているんだろ。やはり、私が憧れるあの人スタイルで行きましょう。
「えっ、あはは。みみ、何してるの」
笑いを堪えきれずに、吹き出している。
「えっ、やっぱり私の憧れる女性像と言ったら不二子ちゃんですよ!はる~♡って感じで」
ベッドの上で左足を曲げて右足を伸ばす。そして、右手を頭の後ろにフイット。お色気ポーズは、駄目なのか。確かに胸には夢が無い。相変わらず無い。
「夢の中位、胸が欲しいな」
「みみ、落ち着いて」
はるくんが、柔らかく笑ってる。
「ははっ。みみ、そんな格好してたらパンツ見えるよ」
とバンっとドアを閉めた。
「え……まさかの反応」
普通、旦那さんって。旦那さんって。こんな時は、そんなことしなくても君は立派な妻だ。的な感じになると思ったのに。
「若しくは、もっとこうゆうポーズが良いとか」
そうゆうのはないのだろうか。と少しの間、放心状態になってしまった。
「みみ、早く出ておいで」
コンコンとドアを叩くはるくん。
「え、あ……はい」
少し乱れたワンピースを戻して、ベッドから降り、ドアを開ける。
「落ち着いた?」
と、私の顔を覗き込む。
「落ち着きました」
良かったと言わんばかりに、玄関へ歩き出す。今朝起きたばかりと大違いだ。あんなに抱きついてきていたのに微塵もその様子を感じさせない。夢だから少しくらい夫婦を味わいたいなとおもったけど、無理なのかな。
 「この靴がいいかな」
玄関で、私の服に合う靴を探す。
「一週間後にか。変な感じ」
先に外に出てた、はるくんはそう呟いてた。
「どうかしましたか?」
何か決意をしたような諦めたような不思議な感じだった。
「ううん、何も無いよ」
そう言い靴を履いて先にはるくんが出てる。
「あっ、これにしよう」
白いサンダルを取って靴を履く。
「みみちゃんお靴上手に履けるかな?」
とドアに寄っかかって悪戯っ子みたいに笑ってる。
「履けてますよ!」
うん、なら良かったと言い私が出ると施錠してエレベーターのある方へ歩く。
ここは、マンションの一番端の部屋で普通の家賃より少し高い。
右側をみると、マンション5階から眺めるその景色は見覚えがあるようでない建物や見覚えがあるが古びているものがあった。
太陽が空と同化して白く光っている。
「リアルだな、やっぱり」
コンクリートで出来ているカベに触れるとホコリと灰色のセメントが無意識に添えてた左手に微量に着く。
少し前を歩くはるくんは、私の言葉を聞いて同じくじっと外を見ながら歩く。
「あんまり綺麗じゃないから触れないでね」
左人差し指をツーと這わせて手についた汚れをちょっと笑いながら見せてくる。
「私もう付いちゃいました」
と左手をパーにして見せる。はるくんは、困ったように笑う振りをするため右手を口で抑えてたが、あははっと笑って一緒だねと言った。この人は、毒が無い。清い人だなと思った。夢の中ですら好きな人を追いかけるこの私が少し恥ずかしくなった。
「車に乗る前に汚れちゃったね、マンションの下に車洗うようの蛇口があるからそこでちょっと洗おっか」
うんと頷き左頬に太陽の光を浴びながら二人とも進む。丁度影に入ったところにエレベーターがある。はるくんは、ボタンを左手の人差し指で押すふりをして右手で押した。ドアが開き中に入る。丁度5階に止まっていた。誰かそんなに時間が経ってないうちに降りたのだろう。
エレベーターに乗り今度は私が左手でボタンを触れる素振りをして1階を右手で押す。
「真似っ子」
とはるくんが笑う。
「あっ」
閉まるボタンを左で押してしまった。1階を押す時までは覚えていた汚れをすっかり頭の中から消してしまっていた。少し汚れが着いてしまった。どうしようと思ってるとはるくんがポケットからティッシュを出した。
「これ使って」
と手に握らせた。そのポケットを触った手は右手だった。はるくんは抜け目がない人だと思った。でも大抵の人は右利きだから、そっかと思い直す。
「ありがとうございます」
と言うとはるくんはにこりと笑って前を向く。
「どういたしまして」
そんなことをしているとすぐに下に着いた。
ティッシュで汚れを拭き取り、右手で開くボタンを押す。
「ありがとう、みみ」
ポンポンと頭を撫でようとしてきたが左手だと気付いたからか途中でやめた。
インターホンを抜け外に出る。はるくんの言っていた通り駐車場の近くに水道があった。
その後2人は手を洗ってノーマルクラウンに乗る。
「何処行きたい?」
覚えてるのは、私が通っていた高校と塾そして実家。
「中央通りを高校に沿って走って下さい。お願いします」
「了解」





    
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

甘ったれ第四王子、異世界に夢を馳せるが…

BL / 連載中 24h.ポイント:455pt お気に入り:55

呪われた第四学寮

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,704pt お気に入り:0

紅雨 サイドストーリー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:4

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:518pt お気に入り:0

疲労熱

BL / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:4

落第騎士の拾い物

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:55

処理中です...