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5−5 エッフェル塔

レトロなケーブルカー~エッフェル塔~

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轟音と共に機械の塊が上から降りてくる。
ゆっくりとした速度で、斜めに線を引きながら。
エッフェル塔の足に隠された塊は、かなりの大きさを持っている。
大きな部品の動きがはっきり見える。
のしかかってくるような大きさの中で、くるくる回る部品たちは、色合いも含めてレトロな雰囲気を持っていた。
それが地上から第二層まで届けてくれるケーブルカーだった。

ケーブルカーが下りてくると端っこに色あせた等身大の運転手パネルがくっついている。
昔は人が動かしていた名残だろうか。

ドアが開くと、むき出しの鉄板が広がっている。
ケーブルカーというよりは、20人近く入れる鉄の箱だ。

ぞろぞろと人が乗り込むとゆっくり上がっていく。
窓の近くに陣取らなければ外を見ることができない。
次女ハナちゃんはケーブルカーに乗っている間ずっと「くさい」と大声で言い続けた。
確かに臭かった。
香水が交じり合って喧嘩している。
小心者の日本人としては悪口を大声を上げることに胃が縮む思いがしたが、
日本語が通じない世界だからとあえて止めなかった。

最上階へ行けるエレベーターは普通の垂直タイプだった。
ケーブルカーというより業務用貨物運搬機と言った方がしっくりくる。
地上から歩きでもいけるものの、貨物なった気分を味わうためにぜひ利用してみてほしい。

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