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37話 怖い魔法の先生
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駅馬車で北大路まで行って下車する。
そこから西陣のケンクン魔法院前まで西向きの馬車に乗っていく。
駅馬車の駅を降りると、大きなケンクン魔法院の石柱が立っていた。
その石柱の少し西に小さなパン屋さんがあった。
店の中でパンを焼いていたので牛乳とパンをいただいたが、
そのパンがフルーツが入っていて、モチモチしていて無茶苦茶おいしかった。
これは油断していた。
そこから南に下るとどすえ最大の魔法院、ケンクン魔法院があった。
ケンクン系魔法院の本院だ。
ケンクン系はこのほか、氷結の北国やカイバラー地方にもある。
全国にある有名な魔法院だ。
そして、オソロシアの生まれ故郷でもある。
ケンクン魔法院は小高い山の上にある。
近所のキツネの獣人さんがそちらに行くのを見て笑っていた。
「どうされたんですか?」
「やーあんさん、あそこのお山にいかはるのん?あそこの裏山幽霊ではるでしょ。
千本通りって知ってる?あれって千本の墓標が立ってたから千本通りって言うんどすえ、
あー気色わる」
どすえの人たちは地域の中で自分たちよりランクの低い土地の人たちをバカにするのが
大好きだ。
千本通りの人たちも伏見をバカにしていた。
山に登ってみると、何やら女の子が沢山いて、並んでいた。
なんでも獣人乱舞とかいう漫画の御朱印がもらえるらしい。
見本を見てみた。
げ!
目がキラキラした少女漫画みたいな絵でオソロシアとか黒足猫がかっこつけてる絵に
墨で御朱印をかいた御朱印長がおいてある。
一枚300P.
うっわー思ってた魔法院と違う。
紹介状を持って、恐る恐る声をかけてみる。
「何どす」
「あの~紹介状を持ってきたんですけど」
魔法院の魔導士が紹介状を見る。
「あ~」
「どうでしょうか」
「無理どす」
「やっぱり」
オレは肩を落として帰ろうとする。
「ちょっと待ちよし」
上級の魔導士がオレを呼び止める。
ここの獣人はほとんど狐だが、この人は猫だった。
雰囲気はキツネっぽいが、体の毛色が三毛だから
猫であることがわかった。
「何でしょうか」
「あんさん、いとはんとこの使用人やないのん」
「は?
ロシアンブルーの事ですか?」
「ようそんな言い方しはるわ、いとはん言いなはれ外聞がわるい」
「すいません、いとはん」
「あんた、奉公人やろ」
「あ、まあそんなもんです」
「番頭はんでっか、丁稚どんどすか」
「まあ番頭みたいなもんですけど」
「そうですかいな、ほな、中はいってブブ付けでも食べていきなはれ」
「はい、さようなら」
「ああ、そういうのええから、めんどくさい」
「すいません」
オレは社務所の中に招かれた。
「ほいで、どないしはったん」
「ナニワ迎撃士官学校の魔法の先生を探しているのですが」
「それ、来るとこまちごうてはるんとちがいます?うちは洛中どすえ?
なんでうちのもんが洛外に行かなあきませんのん。くっさい、ナニワやて、
ドブの匂いがしますやん。あんなもん、ヘドロチックですやん」
無茶苦茶言うな、この人。
「それやったら、あんたちょうどええとこ知ってますえ、ヤマトにウチの分院がありますやん」
「ミルセラ先生はヒョウゴーの鷹取師団に剣で切られて魔法が使えなくなっております」
「うわ、鷹取師団とやりあうとか、昔から頭おかしい子やったけど、完全にいってしもたんやねえ」
無茶苦茶言うな、この人(二回目)
「何でも体に張り巡らされた魔法の導線を一旦切られて、それを無茶苦茶に結びなおされて
身動きた取れなくなったとか」
「あ~あれ、ほどくの面倒くさいんどすえ、よう、あんなもんとケンカしたな、ダボやねえ」
「はあ」
「魔法というのはね、巧妙に織り合わさった糸なんえ、それが微妙に合わさってガラのように見える。
実はまったく別の糸が絡まり合って、表に出たりウラに出たりして模様になってますのや。
わかりますか」
「あ、はい」
「分かってない顔やね。糸はね、上から下に伸びてますやろ、全部つながってますんえ。
服とかズボンでも1本糸が抜けますやん、ほしたら、そこからほどけて、全部ほどけてしもたりしますやん。
1本の糸のほつれを見逃したらエライことになるんえ」
「そうですね」
「わかってないやろ」
「ごめんなさい、本質までは」
「あのね、どこの組織にでも問題児はおるわね、それはだいたい下っ端やねん。
ほやからいうて、それをクビにしたら、またアホが来よるんですわ。なんでや思います?」
「人事部がバカなんですか?」
「そう思いますやろ。そこで糸や、糸は上から下に伸びてますんや。西陣織もそうどす。
着物でも、糸がほつれたら、その切れた場所から下は全部抜けてしまいますのや。
下が悪いのは上が切れたからどす」
そこまで言われてオレは目をハッと見開いた。
「ああ」
「わかりはりましたか?」
「はい、私がバカでした」
「ええんよ、伏見から南には猿しか住んでおへんから、猿に人の言葉が分かるとは思てまへん」
「それは恐れ入ります。その猿に何故、ご教授を賜ったのですか?」
「まあねえ、時には猿回しのまねごともよろしいやん。猿回しの猿は普通の猿よりかしこいしね。
あんさんはいとはんが飼うてはる猿やし」
「ありがとうごあいます」
オレは頭をさげた。
「それで、先生の件は?」
「どうぞおおきに」
魔法院の人はニッコリ笑って頭をさげた。
これはドスエ流に言うと「とっとと帰れ」ということだ。
「あ、わかりました」
オレは頭をさげて魔法院を出た。
あれだけ教えてくれるだけでも大した温情だ。
オレはトボトボと学校に帰った。
学校に帰ってきて、自分は戦士科だからわからなかったけど、
魔導士科の授業みたら魔法の授業が休講じゃなくなっていた。
オレは廊下を歩いていたアメリカンカールを呼び止めた。
「あれ?魔法学って長い間休講だったんじゃないの?」
「そだよ」
「新しい先生来たの?」
「うん」
「どんな人?」
「金超狸」
「ええええええええ!」
「ほんまにもう、君何呼び捨てにしとんのん、びっくりするわもう」
後ろから女の人の声がした。
オレは緊張する。
「あああ、あの、アワーはナニワと戦争したんじゃないんですか?」
「何言うてんねん君、メアリーのアホをナニワから追い出すとき、カイトとウチで
共同戦線張ったんやないのん。あんた何処の子?」
「ヤマトです」
「あーあんな田舎やったら知らんわなあ」
「アワーだって田舎じゃないですか」
「何言うてんねん、アワーにはオサレなタヌキケーキがあんねんど。
ラーメンもうまいねんど、アホなこと言うたらドツクどほんまに」
「すいませんでした」
オレは謝罪した。
「まあええわ、気にせんとき、こんどゆで卵たべるか?職員室にぎょうさん置いとるど」
「そうなんですか、またいただきます」
オレはその場を立ち去った。
あーびっくりしたなあもう。
金超先生はその後、戦略論の授業にも出てきた。
その内容は非常に興味深いものだった。
「お前ら、鷹取師団の先生から孫子とクラウゼヴィッツ習とるな、これは基本やから
習わなあかんのや。そやけど、お前らもう3年生やからな、ちょっとは最新式の欧米でやってる
戦略論についても学んでおかなあかん。ウチが最新の戦略論教えたるわ」
オレは興味津々に身を乗り出した。
「今日教えるのはウーダーループや。これはナニワ人に一番欠けてる戦略や。
ナニワ人もヤマト人もそうやけど、一旦決めたことは意固地になって続けようとする。
これはアホや。
状況がかわっとるのに、それに気づかずに、たとえ破滅しようと、同じことを続けようとする。
手段が目的化しとる。
学校で先生から教えられたことを何も疑問も持たずに勉強しとったら良い成績がとれた
ダボのカスがそんなアホな事をして国を亡ぼすんや。
それを防止する戦略がウーダーループや。
ウーダーループは4つの工程がある。
⓵まず、最新の情報を入手して見る。
②現状がどうなってるか理解する。
③当初決定した事項を修正する決断をする。
④現実にそぐわなない部分を即座に修正する行動を取る。
このサイクルをつねに繰り返すことにより、現実に即応した対処を常にできるんや。
ウチもアワーの数倍の兵力を持つナニワ王国に攻められた時、敵の弱点を研究した。
ナニワの弱点はイデオロギーにとらわれて現実を無視するところや。
憑依術の技術が無かったら対憑依術戦に対応できないのに、
イデオロギーで憑依術師を迫害し、国外追放した。
よって、アワーでは全力で憑依術に特化して攻撃したんや。
その他にも、国の借金を返済することに固執し、
重税を課して国民を疲弊させた。
貨幣というものは物質ではなく、概念的価値の貸借やから、
国家が借金して積極財政で市中に金をばらまけば、景気が浮揚して
国民が潤る。
重税を課して、国民から金を吸い上げれば、国が衰亡して、いずれ
隣国から攻められて滅びる。
しかし、国の財務官僚は税金をしぼりあげれば出世するので、
自分の出世のために国が滅びても税金を取ろうとする。
本来、そんな官僚は斬首にすべきなんやけど、
政治家が財務官僚と癒着しとるさかいに財務官僚の言うままになっとる。
財務官僚の言う通りにしたら、その政治家の選挙区に財務官僚がぎょうさん
税金投入してくれて、政治家は選挙に通りやすくなるからな。
そやから、税金けちって、いっぱい国民が死んでもどうでもええねん。
アホやろ。
ウーダーループというのは、そういう狂った目的が手段になってしまう
現実との乖離を修正するために、
決断のシステムに、常に現状がどうなってるか調べ、その状況を確認して
理解するシステムが組み込まれとるんや。
これは、異世界のコリアンウオーちゅう戦争で、ジョン・ボイドいう奴が
見つけた法則で、この戦争で大きな成果を得たそうや。
しかし、ナニワもヤマトもこのシステムを導入してない。
まあナニワ民国は同盟国やし、ヤマトは領土が接してないからどうでもええけど、
こんな事しとったらいずれ国が亡びるやろな」
そう言いながら、金超先生はニヒョニヨ笑った。
「それからな、これは戦略論を踏み越えて魔法の領域に入ってくるんやけど、
人間の生態にはネガティブフィードバックとポジティプフィードバックというのがある」
「難しくてわかりません」
生徒の一人が声をあげた。
「ほならな、優しう言うたるわ、お前ら男子な、かわいい女の子見たらチンコ立つやろ。
ほんでな、家帰ってHな妄想してチンコしごくわな、それがポジティブフィードバックや。
むっちゃ興奮するやろ。ほんで、射精したら賢者タイムになるやん、あれが
ネガティブフィードバックや」
「余計わかりません」
生徒がそう言うと、教室からドッと笑いが漏れた。
「ほんだら、人殺しの魔法で教えたるわ。そのほうがお前ら好きやろ」
そう言って金超先生は右手を広げた。
「ここからな、あまーい蜜を出すんや、比喩表現やないど、ほんまに出すんや。
それを敵の肌からぶち込む。ほいたら、敵の血中濃度が急激にあがって、昏睡状態になり、
気絶する。これで戦闘不能にできる。糖で敵が倒せるとかおもわんやろ。
これがポジティブフィードバック。
これは物理攻撃や。対魔法防御が完璧な敵と魔法使いが戦うときは、この物理で相手を倒せる。
な、おもろいやろ」
「面白いです!」
教室から声があがる。
「ほやろ。それからな、暗殺の方法でな、常に暗殺したい要人の体に糖を流し続けて、
体が防御反応で糖を分解するためのインシュリンの量が出にくくさせて病気を装って
殺したりできる。それから急激に血糖値をあげて、
すぐさげて、気づかれないように要人の血圧を上げたりさげたりして、血管をボロボロにして
脳溢血で殺す。これやと、宮廷に入る時、毒を持ってないか検査されてもひっかからへんのや。
これはネガティブフィードバック。」
「こわ~い」
教室から声があがる。
「せやろ」
金超先生はまたニヒョニヒョと笑った。
そこから西陣のケンクン魔法院前まで西向きの馬車に乗っていく。
駅馬車の駅を降りると、大きなケンクン魔法院の石柱が立っていた。
その石柱の少し西に小さなパン屋さんがあった。
店の中でパンを焼いていたので牛乳とパンをいただいたが、
そのパンがフルーツが入っていて、モチモチしていて無茶苦茶おいしかった。
これは油断していた。
そこから南に下るとどすえ最大の魔法院、ケンクン魔法院があった。
ケンクン系魔法院の本院だ。
ケンクン系はこのほか、氷結の北国やカイバラー地方にもある。
全国にある有名な魔法院だ。
そして、オソロシアの生まれ故郷でもある。
ケンクン魔法院は小高い山の上にある。
近所のキツネの獣人さんがそちらに行くのを見て笑っていた。
「どうされたんですか?」
「やーあんさん、あそこのお山にいかはるのん?あそこの裏山幽霊ではるでしょ。
千本通りって知ってる?あれって千本の墓標が立ってたから千本通りって言うんどすえ、
あー気色わる」
どすえの人たちは地域の中で自分たちよりランクの低い土地の人たちをバカにするのが
大好きだ。
千本通りの人たちも伏見をバカにしていた。
山に登ってみると、何やら女の子が沢山いて、並んでいた。
なんでも獣人乱舞とかいう漫画の御朱印がもらえるらしい。
見本を見てみた。
げ!
目がキラキラした少女漫画みたいな絵でオソロシアとか黒足猫がかっこつけてる絵に
墨で御朱印をかいた御朱印長がおいてある。
一枚300P.
うっわー思ってた魔法院と違う。
紹介状を持って、恐る恐る声をかけてみる。
「何どす」
「あの~紹介状を持ってきたんですけど」
魔法院の魔導士が紹介状を見る。
「あ~」
「どうでしょうか」
「無理どす」
「やっぱり」
オレは肩を落として帰ろうとする。
「ちょっと待ちよし」
上級の魔導士がオレを呼び止める。
ここの獣人はほとんど狐だが、この人は猫だった。
雰囲気はキツネっぽいが、体の毛色が三毛だから
猫であることがわかった。
「何でしょうか」
「あんさん、いとはんとこの使用人やないのん」
「は?
ロシアンブルーの事ですか?」
「ようそんな言い方しはるわ、いとはん言いなはれ外聞がわるい」
「すいません、いとはん」
「あんた、奉公人やろ」
「あ、まあそんなもんです」
「番頭はんでっか、丁稚どんどすか」
「まあ番頭みたいなもんですけど」
「そうですかいな、ほな、中はいってブブ付けでも食べていきなはれ」
「はい、さようなら」
「ああ、そういうのええから、めんどくさい」
「すいません」
オレは社務所の中に招かれた。
「ほいで、どないしはったん」
「ナニワ迎撃士官学校の魔法の先生を探しているのですが」
「それ、来るとこまちごうてはるんとちがいます?うちは洛中どすえ?
なんでうちのもんが洛外に行かなあきませんのん。くっさい、ナニワやて、
ドブの匂いがしますやん。あんなもん、ヘドロチックですやん」
無茶苦茶言うな、この人。
「それやったら、あんたちょうどええとこ知ってますえ、ヤマトにウチの分院がありますやん」
「ミルセラ先生はヒョウゴーの鷹取師団に剣で切られて魔法が使えなくなっております」
「うわ、鷹取師団とやりあうとか、昔から頭おかしい子やったけど、完全にいってしもたんやねえ」
無茶苦茶言うな、この人(二回目)
「何でも体に張り巡らされた魔法の導線を一旦切られて、それを無茶苦茶に結びなおされて
身動きた取れなくなったとか」
「あ~あれ、ほどくの面倒くさいんどすえ、よう、あんなもんとケンカしたな、ダボやねえ」
「はあ」
「魔法というのはね、巧妙に織り合わさった糸なんえ、それが微妙に合わさってガラのように見える。
実はまったく別の糸が絡まり合って、表に出たりウラに出たりして模様になってますのや。
わかりますか」
「あ、はい」
「分かってない顔やね。糸はね、上から下に伸びてますやろ、全部つながってますんえ。
服とかズボンでも1本糸が抜けますやん、ほしたら、そこからほどけて、全部ほどけてしもたりしますやん。
1本の糸のほつれを見逃したらエライことになるんえ」
「そうですね」
「わかってないやろ」
「ごめんなさい、本質までは」
「あのね、どこの組織にでも問題児はおるわね、それはだいたい下っ端やねん。
ほやからいうて、それをクビにしたら、またアホが来よるんですわ。なんでや思います?」
「人事部がバカなんですか?」
「そう思いますやろ。そこで糸や、糸は上から下に伸びてますんや。西陣織もそうどす。
着物でも、糸がほつれたら、その切れた場所から下は全部抜けてしまいますのや。
下が悪いのは上が切れたからどす」
そこまで言われてオレは目をハッと見開いた。
「ああ」
「わかりはりましたか?」
「はい、私がバカでした」
「ええんよ、伏見から南には猿しか住んでおへんから、猿に人の言葉が分かるとは思てまへん」
「それは恐れ入ります。その猿に何故、ご教授を賜ったのですか?」
「まあねえ、時には猿回しのまねごともよろしいやん。猿回しの猿は普通の猿よりかしこいしね。
あんさんはいとはんが飼うてはる猿やし」
「ありがとうごあいます」
オレは頭をさげた。
「それで、先生の件は?」
「どうぞおおきに」
魔法院の人はニッコリ笑って頭をさげた。
これはドスエ流に言うと「とっとと帰れ」ということだ。
「あ、わかりました」
オレは頭をさげて魔法院を出た。
あれだけ教えてくれるだけでも大した温情だ。
オレはトボトボと学校に帰った。
学校に帰ってきて、自分は戦士科だからわからなかったけど、
魔導士科の授業みたら魔法の授業が休講じゃなくなっていた。
オレは廊下を歩いていたアメリカンカールを呼び止めた。
「あれ?魔法学って長い間休講だったんじゃないの?」
「そだよ」
「新しい先生来たの?」
「うん」
「どんな人?」
「金超狸」
「ええええええええ!」
「ほんまにもう、君何呼び捨てにしとんのん、びっくりするわもう」
後ろから女の人の声がした。
オレは緊張する。
「あああ、あの、アワーはナニワと戦争したんじゃないんですか?」
「何言うてんねん君、メアリーのアホをナニワから追い出すとき、カイトとウチで
共同戦線張ったんやないのん。あんた何処の子?」
「ヤマトです」
「あーあんな田舎やったら知らんわなあ」
「アワーだって田舎じゃないですか」
「何言うてんねん、アワーにはオサレなタヌキケーキがあんねんど。
ラーメンもうまいねんど、アホなこと言うたらドツクどほんまに」
「すいませんでした」
オレは謝罪した。
「まあええわ、気にせんとき、こんどゆで卵たべるか?職員室にぎょうさん置いとるど」
「そうなんですか、またいただきます」
オレはその場を立ち去った。
あーびっくりしたなあもう。
金超先生はその後、戦略論の授業にも出てきた。
その内容は非常に興味深いものだった。
「お前ら、鷹取師団の先生から孫子とクラウゼヴィッツ習とるな、これは基本やから
習わなあかんのや。そやけど、お前らもう3年生やからな、ちょっとは最新式の欧米でやってる
戦略論についても学んでおかなあかん。ウチが最新の戦略論教えたるわ」
オレは興味津々に身を乗り出した。
「今日教えるのはウーダーループや。これはナニワ人に一番欠けてる戦略や。
ナニワ人もヤマト人もそうやけど、一旦決めたことは意固地になって続けようとする。
これはアホや。
状況がかわっとるのに、それに気づかずに、たとえ破滅しようと、同じことを続けようとする。
手段が目的化しとる。
学校で先生から教えられたことを何も疑問も持たずに勉強しとったら良い成績がとれた
ダボのカスがそんなアホな事をして国を亡ぼすんや。
それを防止する戦略がウーダーループや。
ウーダーループは4つの工程がある。
⓵まず、最新の情報を入手して見る。
②現状がどうなってるか理解する。
③当初決定した事項を修正する決断をする。
④現実にそぐわなない部分を即座に修正する行動を取る。
このサイクルをつねに繰り返すことにより、現実に即応した対処を常にできるんや。
ウチもアワーの数倍の兵力を持つナニワ王国に攻められた時、敵の弱点を研究した。
ナニワの弱点はイデオロギーにとらわれて現実を無視するところや。
憑依術の技術が無かったら対憑依術戦に対応できないのに、
イデオロギーで憑依術師を迫害し、国外追放した。
よって、アワーでは全力で憑依術に特化して攻撃したんや。
その他にも、国の借金を返済することに固執し、
重税を課して国民を疲弊させた。
貨幣というものは物質ではなく、概念的価値の貸借やから、
国家が借金して積極財政で市中に金をばらまけば、景気が浮揚して
国民が潤る。
重税を課して、国民から金を吸い上げれば、国が衰亡して、いずれ
隣国から攻められて滅びる。
しかし、国の財務官僚は税金をしぼりあげれば出世するので、
自分の出世のために国が滅びても税金を取ろうとする。
本来、そんな官僚は斬首にすべきなんやけど、
政治家が財務官僚と癒着しとるさかいに財務官僚の言うままになっとる。
財務官僚の言う通りにしたら、その政治家の選挙区に財務官僚がぎょうさん
税金投入してくれて、政治家は選挙に通りやすくなるからな。
そやから、税金けちって、いっぱい国民が死んでもどうでもええねん。
アホやろ。
ウーダーループというのは、そういう狂った目的が手段になってしまう
現実との乖離を修正するために、
決断のシステムに、常に現状がどうなってるか調べ、その状況を確認して
理解するシステムが組み込まれとるんや。
これは、異世界のコリアンウオーちゅう戦争で、ジョン・ボイドいう奴が
見つけた法則で、この戦争で大きな成果を得たそうや。
しかし、ナニワもヤマトもこのシステムを導入してない。
まあナニワ民国は同盟国やし、ヤマトは領土が接してないからどうでもええけど、
こんな事しとったらいずれ国が亡びるやろな」
そう言いながら、金超先生はニヒョニヨ笑った。
「それからな、これは戦略論を踏み越えて魔法の領域に入ってくるんやけど、
人間の生態にはネガティブフィードバックとポジティプフィードバックというのがある」
「難しくてわかりません」
生徒の一人が声をあげた。
「ほならな、優しう言うたるわ、お前ら男子な、かわいい女の子見たらチンコ立つやろ。
ほんでな、家帰ってHな妄想してチンコしごくわな、それがポジティブフィードバックや。
むっちゃ興奮するやろ。ほんで、射精したら賢者タイムになるやん、あれが
ネガティブフィードバックや」
「余計わかりません」
生徒がそう言うと、教室からドッと笑いが漏れた。
「ほんだら、人殺しの魔法で教えたるわ。そのほうがお前ら好きやろ」
そう言って金超先生は右手を広げた。
「ここからな、あまーい蜜を出すんや、比喩表現やないど、ほんまに出すんや。
それを敵の肌からぶち込む。ほいたら、敵の血中濃度が急激にあがって、昏睡状態になり、
気絶する。これで戦闘不能にできる。糖で敵が倒せるとかおもわんやろ。
これがポジティブフィードバック。
これは物理攻撃や。対魔法防御が完璧な敵と魔法使いが戦うときは、この物理で相手を倒せる。
な、おもろいやろ」
「面白いです!」
教室から声があがる。
「ほやろ。それからな、暗殺の方法でな、常に暗殺したい要人の体に糖を流し続けて、
体が防御反応で糖を分解するためのインシュリンの量が出にくくさせて病気を装って
殺したりできる。それから急激に血糖値をあげて、
すぐさげて、気づかれないように要人の血圧を上げたりさげたりして、血管をボロボロにして
脳溢血で殺す。これやと、宮廷に入る時、毒を持ってないか検査されてもひっかからへんのや。
これはネガティブフィードバック。」
「こわ~い」
教室から声があがる。
「せやろ」
金超先生はまたニヒョニヒョと笑った。
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本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
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