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22話 上級国民
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「うおおおおおおおおおおおおおおおおおー!」
オレはチェリーブロッサムウイルの駅馬車の駅の前から猛ダッシュした。
あの巨大な化け物のところまで。
そして限界まで加速して飛び上がった。
ヒュン!
オレの体は弾丸のように飛び上がり、巨人の胸の所に当たった。
ガキーン!
大きな音がしてオレは跳ね返された。
巨人は後ろに大きくのけぞって倒れる。
ズドーン!
地響きがして巨人はひっくり返る。
「やったか?」
ミシッ、ミシッ
巨人は起き上がってオレを睨みつける。
オレが当たった鎧の所もホコリが剥げているだけで、キズ一つついていない。
「ノーダメージかよ!」
待て、冷静になれ。
オレはあの巨人にとって弾丸のようなもの。
あいつはあれだけ強大な力を持ちながらなぜ、鎧など着ている。
俺みたいなタイプが突進してきた場合、生身なら貫通させられるからだ。
そうだ、手や足の関節を貫通すれば、あいつの動きを止めることはできる。
「よし、もう一度いくぞーっ!」
オレは後ろに後退した。
「させるかあああああ!」
赤い女の戦士が切りつけてくる。
あの巨人のサポート役か。
「アタイの名は赤羊主。龍公女は潰させやしないよ!」
「こいつはオレに任せな」
オソロシアがハルバードを振りかざす。
赤羊主はそれを素早くよける。
後ろから黒足猫が鉄のこん棒を振り抜く。
「ちい、さすたのアタイでもこいつら3人はキツイや。耳梨送雀!」
赤羊主が叫ぶと、空から黒い塊がギュン!と素早く黒足猫に突進してくる。
黒足猫は素早くそれを避けた。
それは羽の生えた女の妖怪だった。
「オソロシア、黒足猫、そいつらは任せたぞ!」
オレは先に進もうとする。
「させるかー!」
オレの前に送雀が素早く回り込む。
「お前の相手はこっちだ」
ブウン
黒足猫が素早く鉄棒を振り下ろし、送雀が素早く避ける。
オレは巨人、龍公女の足の関節目掛け、全速力で突進する。
「うおおおおおおおおおー!」
バウン!
オレを拳を振り上げながら地面を蹴った。
ガシン!
何かが砕け散る音がした。
気が付くと、オレの拳を黒光りする女の妖怪が片手で受け止めていた。
助走をつけて打ち込んだオレの拳を!
「あぶねえ、あぶねえ、私の張った結界を三枚ぶち抜くとは、ただものじゃないね、あんた」
女の妖怪はニヤリと笑う。
二人はそのまま、地上にストンと落ちる。
「お前らは何が目的でオレたちを襲うんだ!」
「なんだい、私の古巣の連中が暴れてるのかい?
仕方ないねまったく。
あんたら止めな!」
女の魔物がそう言うと、赤羊主と耳梨送雀は素早く女の魔物の後ろに飛びのく。
「人聞きがわるいぜ牛魔王女の姉御・アタイらは龍公主を守っただけだ。攻めてきたのはあっちのほうさ」
不機嫌そうに赤羊主は言った。
「あれ?なんか話が違うんだけど、事と次第によっちゃ、あんたら皆殺しにするよ」
牛魔王女はものすごい殺気をかもしだしてきた。
「そっちが暴れないならコチラから攻撃する意思はない。
もし、味方になってくれるなら、食事も提供しよう」
「そりゃ条件次第だね。もし、好待遇してくれるなら、ここの時空に開いた穴もふさいでやってもいい」
「それはありがたい。早速上司に報告してくる」
「いい知らせを待ってるよ~」
牛魔王女は手をヒラヒラと振った。
これは、当然、この魔物たちと契約できるものとオレは思った。
ミルセラに報告すると、すごく喜んでくれて、軍の上層部に情報を上げてくれた。
軍の上層部も大変喜んでくれて、ナニワ王に報告してくれた。
ナニワ王もあまり乗り気ではなかったが、軍の幹部の強硬姿勢に圧されて、しぶしぶ承諾しようとした。
が、財務官僚がバケモノの受け入れに強行に反対した。
税金の無駄遣いだというのだ。
このまま放置すれば、確実にバケモノたちは暴れ出す。
税金をかけて好待遇したら、バケモノが暴れる被害が無くなるのと同時に
バケモノの力を国防に回すことができる。
放置すれば必ず暴れることは分かっているのに、放置しない手はない。
財務官僚が騒いでいるのを聞きつけたメアリー王女は民衆をたきつけ、
税金の無駄遣い反対デモを起こした。
板挟みになったナニワ王は、間を取って、赤羊主だけ雇い入れて、あとは放置するという決定を
くだした。
それでは意味がない。牛魔王女を雇い入れなければ、赤羊主も必ず離反する。
しかし、財務官僚たちはヤマトの学者たちに金を渡し、バケモノたちを放置すれば、
必ず帰る。招きいれたほうが街中で大暴れする。とバケモノへの恐怖を掻き立てる論文を
発表させた。
牛魔王女率いる軍団は、非常に強い、これを雇い入れなければヤマトは滅びる。
「ほっとこうぜ、他国に逃げよう。この国はどうせ亡びる」
醒めた顔で黒足猫が言った。
こうやって、あまたの国が滅びてきた。
目先のわずかな金を惜しんで国を亡ぼす。
財務官僚が自分が出世して小銭を手に入れるために、国を亡ぼす決断をする。
どうせ、国が滅びれば、財務官僚も殺される。
しかし、目先の金さえ手に入れば、たとえ未来に自分が破滅してもかまわないと思っている。
というか、これだけ長い歴史をもった国が簡単に滅びるわけがないと思って甘えている。
しかし、どんな長い歴史を持った国も国営を間違えなかったからこそ滅びなかったのであって、
国の運営を間違えば、どんな長い歴史をもった国も亡びるのだ。
「悪の陳腐さについての報告」という本を昔読んだことがあった。
ナチスドイツのユダヤ人収容所の責任者。
アドルフ・アイヒマンは警察に捕まったとき、自分は一切悪いことはしていない、自分は被害者だ!
と主張したそうだ。
それは、死刑になるまで、ずっと続いた。
あれだけ大勢の犠牲者を出しながら、自分が一切悪い事をしたという意識はない。
ただ、自分の職務、人を殺すという作業を忠実に行うことによって、出世して小銭を手に入れる。
自分はどれだけ人を殺しても、絶対罰せられないと思っていたようだ。
なぜなら、自分は優秀だから、自分はエリートだから。
心が痛む時は、自分の同僚が出世しただけ。
目の前でどんな小さな子供が泣き叫び、命乞いをしても、まったく心が動かない。
この国の財務官僚はアイヒマンと同じだと思った。
ヤマトが滅びても、自分は優秀だから海外で好待遇で雇ってもらえる。
だからヤマトがどうなってもいい。
大勢の民衆がバケモノの被害で死んでもなんとも思わない。
放置されるにつれ、牛魔王女たちはイライラしはじめた。
龍公女に命令して、木を引き抜かせ、チェリーブロッサムウイルの駅馬車の駅に
投げつけさせたりした。
当然、駅馬車の駅は大破した。
これ以上待てない。
もし、牛魔王女とナニワ民国、ドスエが連合を組んで、三方からヤマトを攻めたら、
確実にヤマトは滅亡する。
それだけではない。怒り狂った魔物によって民衆は大虐殺されるだろう。
もう猶予はない。
オレはミルセラに隠密に相談した。
ミルセラは密に軍参謀本部に向かった。
軍中枢の答えは、「我々は何もしらない。もし失敗したら、お前たち全員反逆罪で死刑にする」
というものだった。
オレは満面の笑みをうかべた。
「上等だよ」
オレはまず先に牛魔王女の所に行って、その事を伝えた。
すると牛魔王女はオレの手を固く握って
「もしお前らが死刑になりそうになったらナラーに攻め込む」
と言ってくれた。
オレはそれを丁重に断り、
「俺達全員の死刑が執行されたら、その時はナラーに攻め込んで財務官僚だけ皆殺しにしてくれ」
と言ったら、驚いたことに、牛魔王女は涙ぐんでいた。
俺達は隠密に武器を調達し何度も作戦訓練を行った。
そんなある日、
財務官僚の父親の馬車が暴走して民衆の中に突っ込み母娘の二人が死亡、10人が重軽傷になった。
その人物は自身も元財務官僚であり、馬車を下りてきて
「この下層民どもが!こっちは上級国民だぞ!」
と怒鳴って母親の死体を蹴ったことが問題となった。
同時期、イコマーでも同じ年齢の御者が馬車の運転を間違え、二人死亡したが、
御者は逮捕され投獄された。
元財務官僚は投獄されなかったばかりか、無罪になった。
これに民衆が激怒、デモを繰り返したが、そのうち、そのデモが暴動となった。
度重なる消費税増税、緊縮財政による不況で民衆の不満が蓄積していたのだ。
俺達の部隊は暴徒化した民衆を鎮圧し、皆殺しにするため、財務省から
直接命令を受けて出動することになった。
皆殺しにせよという命令は内密であり、成功した場合、軍の予算を倍増してくれるとの
口約束だった。
俺達が鎮圧部隊としてナラーに乗り込むと、民衆はおびえた。
彼らは俺達の戦果をウワサで聞いていたからだ。
若者は走って逃げ、年寄だけが取り残された。
「た、たすけてくだされ……」
腰を抜かした年寄がひざまずいて命乞いをする。
俺達は、それを茫然と見ていた。
その様子を遠巻きに見ていた財務官僚が怒って俺達の所に来た。
「おい!なんで皆殺しにしない。こんな連中、税金の無駄遣いのタックスイーターじゃないか!
こんなごみ虫ども、前の水害で全員死んでいればよかったんだ!」
一人の財務官僚が怒鳴った。
「そうだ!俺達は上級国民だぞ!エリートだぞ!俺達の言うことがきけないのか、この汚らしい低学歴ども!」
もう一人の財務官僚がオレに罵声を浴びせかける。
「殺してよろしいのですか?」
オレがそう尋ねると財務官僚はビクッと肩をすくめる。
「こ、殺していいなんて言ってない。お前らの判断でやれ」
「じゃあ、オレたちの判断で殺さないという判断もありですか?」
「勝手にやれよ、そのかわり、来年度からお前らの部隊の予算はゼロだ。わかってんだろうな、劣等民ども」
財務官僚が薄ら笑いを浮かべる。
「わかりました。オレの判断でやります」
オレはニッコリと笑った。
財務官僚もニッコリと笑う。
ゴン!
オレが財務官僚の頭を殴ると、クビから吹っ飛んで、ピューッと血が上にとびあがった。
「ひ、ひい!」
ほかの財務官僚たちが腰を抜かす。
「部長以上の財務官僚を皆殺しにしろ!」
「はっ!」
オレの号令のもと、部隊の者たちが財務官僚を惨殺していく。
そのあと、役所に乗り込んで、財務の上級職を皆殺しにした。
驚いたナニワ王が鎮圧命令を出したが、軍は動かなかった。
メアリー王女が改めて鎮圧命令を出したが、軍は動かなかった。
俺達は王に謁見をもとめ、王の住まう迎賓館に向かった。
血だらけの俺達を見て、王は明らかに怯えているようだった。
そのまま俺達の行動は不問に付され、めでたく、化けものたちを
慰撫するための予算も降りた。
牛魔王女たちは我々の貴重な戦力となった。
オレはチェリーブロッサムウイルの駅馬車の駅の前から猛ダッシュした。
あの巨大な化け物のところまで。
そして限界まで加速して飛び上がった。
ヒュン!
オレの体は弾丸のように飛び上がり、巨人の胸の所に当たった。
ガキーン!
大きな音がしてオレは跳ね返された。
巨人は後ろに大きくのけぞって倒れる。
ズドーン!
地響きがして巨人はひっくり返る。
「やったか?」
ミシッ、ミシッ
巨人は起き上がってオレを睨みつける。
オレが当たった鎧の所もホコリが剥げているだけで、キズ一つついていない。
「ノーダメージかよ!」
待て、冷静になれ。
オレはあの巨人にとって弾丸のようなもの。
あいつはあれだけ強大な力を持ちながらなぜ、鎧など着ている。
俺みたいなタイプが突進してきた場合、生身なら貫通させられるからだ。
そうだ、手や足の関節を貫通すれば、あいつの動きを止めることはできる。
「よし、もう一度いくぞーっ!」
オレは後ろに後退した。
「させるかあああああ!」
赤い女の戦士が切りつけてくる。
あの巨人のサポート役か。
「アタイの名は赤羊主。龍公女は潰させやしないよ!」
「こいつはオレに任せな」
オソロシアがハルバードを振りかざす。
赤羊主はそれを素早くよける。
後ろから黒足猫が鉄のこん棒を振り抜く。
「ちい、さすたのアタイでもこいつら3人はキツイや。耳梨送雀!」
赤羊主が叫ぶと、空から黒い塊がギュン!と素早く黒足猫に突進してくる。
黒足猫は素早くそれを避けた。
それは羽の生えた女の妖怪だった。
「オソロシア、黒足猫、そいつらは任せたぞ!」
オレは先に進もうとする。
「させるかー!」
オレの前に送雀が素早く回り込む。
「お前の相手はこっちだ」
ブウン
黒足猫が素早く鉄棒を振り下ろし、送雀が素早く避ける。
オレは巨人、龍公女の足の関節目掛け、全速力で突進する。
「うおおおおおおおおおー!」
バウン!
オレを拳を振り上げながら地面を蹴った。
ガシン!
何かが砕け散る音がした。
気が付くと、オレの拳を黒光りする女の妖怪が片手で受け止めていた。
助走をつけて打ち込んだオレの拳を!
「あぶねえ、あぶねえ、私の張った結界を三枚ぶち抜くとは、ただものじゃないね、あんた」
女の妖怪はニヤリと笑う。
二人はそのまま、地上にストンと落ちる。
「お前らは何が目的でオレたちを襲うんだ!」
「なんだい、私の古巣の連中が暴れてるのかい?
仕方ないねまったく。
あんたら止めな!」
女の魔物がそう言うと、赤羊主と耳梨送雀は素早く女の魔物の後ろに飛びのく。
「人聞きがわるいぜ牛魔王女の姉御・アタイらは龍公主を守っただけだ。攻めてきたのはあっちのほうさ」
不機嫌そうに赤羊主は言った。
「あれ?なんか話が違うんだけど、事と次第によっちゃ、あんたら皆殺しにするよ」
牛魔王女はものすごい殺気をかもしだしてきた。
「そっちが暴れないならコチラから攻撃する意思はない。
もし、味方になってくれるなら、食事も提供しよう」
「そりゃ条件次第だね。もし、好待遇してくれるなら、ここの時空に開いた穴もふさいでやってもいい」
「それはありがたい。早速上司に報告してくる」
「いい知らせを待ってるよ~」
牛魔王女は手をヒラヒラと振った。
これは、当然、この魔物たちと契約できるものとオレは思った。
ミルセラに報告すると、すごく喜んでくれて、軍の上層部に情報を上げてくれた。
軍の上層部も大変喜んでくれて、ナニワ王に報告してくれた。
ナニワ王もあまり乗り気ではなかったが、軍の幹部の強硬姿勢に圧されて、しぶしぶ承諾しようとした。
が、財務官僚がバケモノの受け入れに強行に反対した。
税金の無駄遣いだというのだ。
このまま放置すれば、確実にバケモノたちは暴れ出す。
税金をかけて好待遇したら、バケモノが暴れる被害が無くなるのと同時に
バケモノの力を国防に回すことができる。
放置すれば必ず暴れることは分かっているのに、放置しない手はない。
財務官僚が騒いでいるのを聞きつけたメアリー王女は民衆をたきつけ、
税金の無駄遣い反対デモを起こした。
板挟みになったナニワ王は、間を取って、赤羊主だけ雇い入れて、あとは放置するという決定を
くだした。
それでは意味がない。牛魔王女を雇い入れなければ、赤羊主も必ず離反する。
しかし、財務官僚たちはヤマトの学者たちに金を渡し、バケモノたちを放置すれば、
必ず帰る。招きいれたほうが街中で大暴れする。とバケモノへの恐怖を掻き立てる論文を
発表させた。
牛魔王女率いる軍団は、非常に強い、これを雇い入れなければヤマトは滅びる。
「ほっとこうぜ、他国に逃げよう。この国はどうせ亡びる」
醒めた顔で黒足猫が言った。
こうやって、あまたの国が滅びてきた。
目先のわずかな金を惜しんで国を亡ぼす。
財務官僚が自分が出世して小銭を手に入れるために、国を亡ぼす決断をする。
どうせ、国が滅びれば、財務官僚も殺される。
しかし、目先の金さえ手に入れば、たとえ未来に自分が破滅してもかまわないと思っている。
というか、これだけ長い歴史をもった国が簡単に滅びるわけがないと思って甘えている。
しかし、どんな長い歴史を持った国も国営を間違えなかったからこそ滅びなかったのであって、
国の運営を間違えば、どんな長い歴史をもった国も亡びるのだ。
「悪の陳腐さについての報告」という本を昔読んだことがあった。
ナチスドイツのユダヤ人収容所の責任者。
アドルフ・アイヒマンは警察に捕まったとき、自分は一切悪いことはしていない、自分は被害者だ!
と主張したそうだ。
それは、死刑になるまで、ずっと続いた。
あれだけ大勢の犠牲者を出しながら、自分が一切悪い事をしたという意識はない。
ただ、自分の職務、人を殺すという作業を忠実に行うことによって、出世して小銭を手に入れる。
自分はどれだけ人を殺しても、絶対罰せられないと思っていたようだ。
なぜなら、自分は優秀だから、自分はエリートだから。
心が痛む時は、自分の同僚が出世しただけ。
目の前でどんな小さな子供が泣き叫び、命乞いをしても、まったく心が動かない。
この国の財務官僚はアイヒマンと同じだと思った。
ヤマトが滅びても、自分は優秀だから海外で好待遇で雇ってもらえる。
だからヤマトがどうなってもいい。
大勢の民衆がバケモノの被害で死んでもなんとも思わない。
放置されるにつれ、牛魔王女たちはイライラしはじめた。
龍公女に命令して、木を引き抜かせ、チェリーブロッサムウイルの駅馬車の駅に
投げつけさせたりした。
当然、駅馬車の駅は大破した。
これ以上待てない。
もし、牛魔王女とナニワ民国、ドスエが連合を組んで、三方からヤマトを攻めたら、
確実にヤマトは滅亡する。
それだけではない。怒り狂った魔物によって民衆は大虐殺されるだろう。
もう猶予はない。
オレはミルセラに隠密に相談した。
ミルセラは密に軍参謀本部に向かった。
軍中枢の答えは、「我々は何もしらない。もし失敗したら、お前たち全員反逆罪で死刑にする」
というものだった。
オレは満面の笑みをうかべた。
「上等だよ」
オレはまず先に牛魔王女の所に行って、その事を伝えた。
すると牛魔王女はオレの手を固く握って
「もしお前らが死刑になりそうになったらナラーに攻め込む」
と言ってくれた。
オレはそれを丁重に断り、
「俺達全員の死刑が執行されたら、その時はナラーに攻め込んで財務官僚だけ皆殺しにしてくれ」
と言ったら、驚いたことに、牛魔王女は涙ぐんでいた。
俺達は隠密に武器を調達し何度も作戦訓練を行った。
そんなある日、
財務官僚の父親の馬車が暴走して民衆の中に突っ込み母娘の二人が死亡、10人が重軽傷になった。
その人物は自身も元財務官僚であり、馬車を下りてきて
「この下層民どもが!こっちは上級国民だぞ!」
と怒鳴って母親の死体を蹴ったことが問題となった。
同時期、イコマーでも同じ年齢の御者が馬車の運転を間違え、二人死亡したが、
御者は逮捕され投獄された。
元財務官僚は投獄されなかったばかりか、無罪になった。
これに民衆が激怒、デモを繰り返したが、そのうち、そのデモが暴動となった。
度重なる消費税増税、緊縮財政による不況で民衆の不満が蓄積していたのだ。
俺達の部隊は暴徒化した民衆を鎮圧し、皆殺しにするため、財務省から
直接命令を受けて出動することになった。
皆殺しにせよという命令は内密であり、成功した場合、軍の予算を倍増してくれるとの
口約束だった。
俺達が鎮圧部隊としてナラーに乗り込むと、民衆はおびえた。
彼らは俺達の戦果をウワサで聞いていたからだ。
若者は走って逃げ、年寄だけが取り残された。
「た、たすけてくだされ……」
腰を抜かした年寄がひざまずいて命乞いをする。
俺達は、それを茫然と見ていた。
その様子を遠巻きに見ていた財務官僚が怒って俺達の所に来た。
「おい!なんで皆殺しにしない。こんな連中、税金の無駄遣いのタックスイーターじゃないか!
こんなごみ虫ども、前の水害で全員死んでいればよかったんだ!」
一人の財務官僚が怒鳴った。
「そうだ!俺達は上級国民だぞ!エリートだぞ!俺達の言うことがきけないのか、この汚らしい低学歴ども!」
もう一人の財務官僚がオレに罵声を浴びせかける。
「殺してよろしいのですか?」
オレがそう尋ねると財務官僚はビクッと肩をすくめる。
「こ、殺していいなんて言ってない。お前らの判断でやれ」
「じゃあ、オレたちの判断で殺さないという判断もありですか?」
「勝手にやれよ、そのかわり、来年度からお前らの部隊の予算はゼロだ。わかってんだろうな、劣等民ども」
財務官僚が薄ら笑いを浮かべる。
「わかりました。オレの判断でやります」
オレはニッコリと笑った。
財務官僚もニッコリと笑う。
ゴン!
オレが財務官僚の頭を殴ると、クビから吹っ飛んで、ピューッと血が上にとびあがった。
「ひ、ひい!」
ほかの財務官僚たちが腰を抜かす。
「部長以上の財務官僚を皆殺しにしろ!」
「はっ!」
オレの号令のもと、部隊の者たちが財務官僚を惨殺していく。
そのあと、役所に乗り込んで、財務の上級職を皆殺しにした。
驚いたナニワ王が鎮圧命令を出したが、軍は動かなかった。
メアリー王女が改めて鎮圧命令を出したが、軍は動かなかった。
俺達は王に謁見をもとめ、王の住まう迎賓館に向かった。
血だらけの俺達を見て、王は明らかに怯えているようだった。
そのまま俺達の行動は不問に付され、めでたく、化けものたちを
慰撫するための予算も降りた。
牛魔王女たちは我々の貴重な戦力となった。
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