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3話 ちょっとドキドキした
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「これいいなあ、何人もクビを刎ねるように特に強靭につくってある。やべえ、ミスリル製か。
これもらッとこ」
オソロシアは自分のクビが切られそうになっていたハルバードをヒョイと持ち上げると肩にかけた。
「おまえ、よく自分のクビを切られそうになってたものを自分のものにできるなあ」
「オレのクビは普通の鉄じゃ切れねえからな。なんたって、オレはLRなんだ」
オソロシアは胸を張った。
「LR?なんだそりゃ?」
「お前、LR知らねえの?どっかで頭打ったんじゃねえの?」
「たしかに、ここに来る前に殴らてから記憶が定かじゃない」
「しょうがねえなあ、教えてやるよ、LRってのはな、この世界にたった30人くらいしか存在しない
伝説の戦士レジェンドレアなんだ」
「レジェンドレアがあるって事は、他にもランキングがあるって事?」
「ああ、一般に最強とされてるのがウルトラレア、URでその次がスーパースペシャルレア、SSRで
その下がスペシャルレア、SR、よくいるプロの格闘家ってのがレアでR、一派人はノーマルでNだ」
「そうなんだ。オレが倒した連中はどんくらいかな」
「チンピラはノーマルだよ、そうじゃなきゃ、タケシみたいな弱っちい素人に倒されるわけねえだろ。
オレが倒したのはSRだぜ、すげえだろう」
「そうなんだ」
ぐ~う
オレのお腹が鳴る。
「なんだ、タケシ、腹減ってんのか」
「うん、あの瓶売ってなんか食べ物買おうと思ってたから」
「そりゃ悪りいな、じゃあ、オレがどっかでカツアゲして金取ってきてやんよ」
「やめろ、バカ!オレの御供をやってるかぎり、そんな事は絶対ゆるさないからな」
「なんだてめえ、聖人気取りかよ、キモイなあ」
「なんでも絶対ダメ!」
「チッ、しょうがねえ、それじゃあオレがひと肌抜いてやるよ」
「エロい事も禁止!」
「エロいことじゃねえよ!」
オソロシアは怒った。
「ごめん」
オレはオソロシアに謝った。
オソロシアは近所の喫茶店のウエートレスに応募した。
オソロシアはものすごく美人さんなのですぐに就職が決まった。
前金で、オレはそこの喫茶店でランチを御馳走になった。
そのランチにはふかしたジャガイモみたいなものが乗っていた。
「そうだ!」
オレはいい事を思いついた。
オソロシアを呼んで耳打ちする。
オソロシアはオレから聞いた通り、ポテトを薄く切って
油で揚げたものを作り店長に食べさせた。
パリパリしてすごく美味しいと言って、店長は大喜びしていた。
その料理はロシアンフライと名付けられ、その店の人気メニューになった。
「なあ、タケシ、オレのウエートレス姿、似合ってるか?」
オソロシアは喫茶店の中でポーズをとった。
「むっちゃ似合ってるよ」
オレはデレデレになった。
「お前が喜んでくれてうれしいぜ」
オソロシアはニッコリと笑った。
オソロシアは数日間その喫茶店で働き、オレは喫茶店の好意で、倉庫に寝泊まりさせてもらった。
オソロシアはウエートレスさん専用寮に宿泊した。
オソロシアはモテモテでオソロシア目当てに来る男性客も増えてきた。
でも、俺たちは資金を溜めて冒険に出ることにしていたので、
オソロシアは数日でそこを辞めた。
店の店主は名残惜しそうだったが、オソロシアの考案したロシアンフライおかげで
たんまり儲けせてもらったので
喜んで選別をくれた。
さて、何処に行く。
「アットウイキの大図書館に行こうぜ」
オソロシアが言った。
「アットウイキ?」
「ああ、世界各国の冒険者たちが自分たちが体験した事をヒツジの皮に書き記して保存している
大図書館なんだ。冒険の事ならほとんど分かる」
「そんな場所があるんだ」
オレは感心した。
「あ、そうだ、いくつか質問があるんだけど」
「なんだ?」
「オソロシアがLRだってどうして分かるの?そりゃ、大魔術師に判別してもらうんだ。
SRくらいまでならそこらへんの魔術師でも判別できるが、レベルが上がるほど、
ハイクラスの魔術師じゃないと判別できねえんだ。オレも、子供の頃は、
ランキングが分からねえから、無印だってバカにされたさ」
「無印?」
「ノーマルはランキングが表示されないんだ」
「ハイクラスはランキングが表示されるの?」
「ああ、恐ろしいことに怠けてて弱くなったらLRがURに陥落したり同じLRでも
ランキングが下がったりすることもある」
「そうなんだ。あ、それから、お前の令呪外してあげようか?無理矢理服従させるのもイヤなんで」
「いいよ、別に無理矢理服従してるわけじゃねえし、タケシは恩人だからな。
令呪で無理矢理服従させようとしても、迷いの森に誘いこんだり、家具の下敷きにして殺したり、
自分で手を下さなくてもいくらでも殺し方はあるからなあ、ぎゃはははは」
オソロシアは楽しそうに笑った。
けっこうろくでもない奴みたいだとオレは思った。
「それによ」
オソロシアは言葉をつづけた。
「この令呪ってのにもランキングがある、N、R、SR,SSR,UR,LAだ。
SR以上は見た事ねえなあ。たぶん、魔王城の宝箱とかにしかねえんだろうけどよ。
それを装備するとマスターに対する服従心も強くなるんだけど、魔力で戦闘力も強くなるんだ。
だから、令呪はつけといたほうがいいのさ」
「なるほどね」
オレは感心した。
この近辺に大図書館は二か所あるらしいんだけど、
近いほうのセンターアイランドという場所にある図書館に行くことにした。
行ってみると、まるでギリシャ神話に出てくるようなパルテノン神殿を思わせる荘厳な図書館だった。
図書館の中に入って、すぐに利用できるのかと思ったらそうではなかった。
まず、身分証明書が必要だったが、オレは持ってない。
オソロシアが自分の身分証明書を提示していた。
あとは、事務局でヒツジの皮を買って、事務局で借りたペンとインクで、そこに自分がいままで
経験した事を記述して提出する必要があった。
その経験がアーカイブとしての財産になるらしい。
自分の経験というと、大したことはないが、売店で千円札をクシャクシャにされた事、
ポケットに入っていた、ガラスの茶色の小瓶が高額の値打ちがあったこと、オソロシアとの出会い、
実は自分が転生者かもしれないことなども書いた。
図書館の司書は無表情にその内容を読んだ。
別に何の質問もしない。たぶん、転生者ってけっこう沢山いるんだろう。
驚きもされなかった。
金持ちジャックもオレの事を転生者だって言ってた。
あれ?転生者って何だっけ?
時々記憶がアヤフヤになる。
オレが書いた内容を一読した司書はヒツジの皮にペンで何か番号を書いて
オレに差し出した。
「いくぜ」
オソロシアが言った。
ありがたいことに、文字は全部日本語で数字の表記も読めるものだった。
たぶん、文字という文明は日本からの転生者が持ち込んだものだろう。
そう考えれば、みんな日本語を使い、日本の文字を使っているのもうなづける。
最初に世界観の入門書。
ビギナーズトライという部屋に行った。
そこに行って、初心者が最初に学ぶべき基礎を学んだ。
ランキングは実は7つあった。
しかし、ここに記述されているランキングは
N、R、SR,SSR,UR、LRの6つだけだった。
七つ目の最上級はたぶん、神様なんだろうなと思った。
我々がなれるもんじゃない。たぶん。
異世界からの転生者はパーソンと呼ばれている。
この世界に最初から住んでいる人たちは基本、NPCと呼ばれている。
ランキングNはすべてNPCだ。しかし、超レアなキャラクターの中にはPCと
呼ばれるものも存在する。
実は神様も大部分はNPCだそうだ。
ただし、裏技を使えば、NPキャラの神様に会える。
その神様の名前は水雲デルタ。
水雲デルタの似顔絵を見てオレは愕然とした。
それは、オレが出会った女神だった。
どうやったらその女神に出会えるかは謎であり、
またであったとしても気に入られるかどうかは分からない。
NPCではないので、気に入られるパターンがない。
あと、キャラクターは通常召喚符を使って召喚する。
召喚符は魔導士会に行って手に入れる。
召喚符は1枚5000Pで10枚で50000Pであり、召喚レアリティーは抽選である。
しかし、10枚まとめて買うとSR以上を一枚保証してくれる。
Pとはこの世界の貨幣単位である。
あと、キャラクターのレベルアップは上限100までだが、解放の秘宝というのを
使うと次のクラスに行けてまた上限100。今まで確認されているのは上限300までだ。
たとえ、キャラクターの素質がLRであっても、レベルが低いうちは格下のキャラクターに
負けてしまうことがあるから、じっくりとレベルアップが必要ということだ。
解放の秘宝もしくは、同じキャラクターの召喚符で解放できる。
ただし、魔導士会はLRの召喚符を最初から持っていないので、
オソロシアの能力を限界突破するのは絶望的だろうとオレは思った。
ただし、レベルが上限に達したとしても、まだキャラクターをパワーアップする方法がある。
実は、自分が持っているキャラクターで下位互換のキャラクターたとえば
オソロシアのURやSSRのキャラクターを引いてしまった場合は、同じキャラクターは
召喚できない。ただし、ダブりの召喚符は魔法塊という宝珠をつぎ込むことで
パワーアップすることができる。
それをオソロシアの背中に七枚まで貼ることができる。
ダブりの召喚符も無駄にはならない。
あといらない召喚符も魔法塊の代わりに召喚符に食わせることができる。
ただし、召喚してしまったキャラクターを召喚符に食わせると殺人罪で逮捕され、
下手したら処刑されるらしい。
今では、禁則魔法がかけられていて、生身のキャラクターを召喚符に食わせることはできないらしい。
生身のキャラクターと相性が悪い場合は、追放するか、奴隷商人に売る。
あとは、キャラクターが暴走して主人を殺してしまった場合は封印魔法をかけて
裁判にかけられ死刑になるか奴隷商人に売られる。
通常、キャラクターが主人を殺さないよう令呪の着装が義務付けられているが
中には金を惜しんで装着しなかったり、キャラクターが他のキャラクターに依頼して
主人殺す場合があるので、キャラクターはあまり自由にはさせず、主人が留守の時は
首輪をして鎖でつないでおくことが奨励されていた。
そういうのは嫌だ。オレの流儀にはあわない。
オソロシアは自由にさせることにしている。
ビギナーの部屋から出て、指定された番号の部屋に行くと、
そこで驚きの事実を知った。
実はオレの財布の中に入っている日本円はこの世界でも価値があったのだ。
この世界に転生して最初に会った店屋のオッサン。
あのオッサンは実は魔導教会の会員で、クシャクシャにした千円札は実は教会に持って帰っていた。
奴隷商人の金持ちジャックに渡されたオソロシアは、一回限定スタートダッシュガチャの召喚符
千円一回ガチャで出たものだった。
本来、LRの召喚符は魔導教会は持っていないが、オソロシアのレベルが高すぎて、
末端の協会員がオソロシアのレベルを図ることができなかったため、
N扱いで奴隷商人に渡されたものだったのだ。
いわば、バグみたいなものだった。
オレは身震いした。
これからも、財布の中に入っている日本円を使える場合があるかもしれない。
財布の中身を捨てなくてよかった。
アットウイキ大図書館に来てよかったとオレは思った。
オソロシアの背中に、本当に召喚してない召喚符が貼ってあるんだろうか。
まだ貼ってないんだったら、レアリティの低いキャラは召喚せずに
オソロシアの背中に貼ったほうがいい。
「ねえ、背中に召喚符貼ってるの?」
「貼ってるぜ」
「じゃあ、ちょと見せてくれないかな」
「え……」
オソロシアは口ごもった。
「ごめん、いいや」
「いいよ!お前んなら見せてやるぜ、でも他の奴には見せたくないからな、どっか人が見てない
草むらにいってくれよ」
「うん」
オレたちは公園の草むらに入っていった。
オソロシアが上着を脱ぎだす。
ちょっとドキドキした。
オレはオソロシアの背中をチェックする。
「白い召喚符が貼ってあるね」
「ああ、これはRの召喚符なんだ」
オソロシアはちょっと顔を赤らめていた。
これもらッとこ」
オソロシアは自分のクビが切られそうになっていたハルバードをヒョイと持ち上げると肩にかけた。
「おまえ、よく自分のクビを切られそうになってたものを自分のものにできるなあ」
「オレのクビは普通の鉄じゃ切れねえからな。なんたって、オレはLRなんだ」
オソロシアは胸を張った。
「LR?なんだそりゃ?」
「お前、LR知らねえの?どっかで頭打ったんじゃねえの?」
「たしかに、ここに来る前に殴らてから記憶が定かじゃない」
「しょうがねえなあ、教えてやるよ、LRってのはな、この世界にたった30人くらいしか存在しない
伝説の戦士レジェンドレアなんだ」
「レジェンドレアがあるって事は、他にもランキングがあるって事?」
「ああ、一般に最強とされてるのがウルトラレア、URでその次がスーパースペシャルレア、SSRで
その下がスペシャルレア、SR、よくいるプロの格闘家ってのがレアでR、一派人はノーマルでNだ」
「そうなんだ。オレが倒した連中はどんくらいかな」
「チンピラはノーマルだよ、そうじゃなきゃ、タケシみたいな弱っちい素人に倒されるわけねえだろ。
オレが倒したのはSRだぜ、すげえだろう」
「そうなんだ」
ぐ~う
オレのお腹が鳴る。
「なんだ、タケシ、腹減ってんのか」
「うん、あの瓶売ってなんか食べ物買おうと思ってたから」
「そりゃ悪りいな、じゃあ、オレがどっかでカツアゲして金取ってきてやんよ」
「やめろ、バカ!オレの御供をやってるかぎり、そんな事は絶対ゆるさないからな」
「なんだてめえ、聖人気取りかよ、キモイなあ」
「なんでも絶対ダメ!」
「チッ、しょうがねえ、それじゃあオレがひと肌抜いてやるよ」
「エロい事も禁止!」
「エロいことじゃねえよ!」
オソロシアは怒った。
「ごめん」
オレはオソロシアに謝った。
オソロシアは近所の喫茶店のウエートレスに応募した。
オソロシアはものすごく美人さんなのですぐに就職が決まった。
前金で、オレはそこの喫茶店でランチを御馳走になった。
そのランチにはふかしたジャガイモみたいなものが乗っていた。
「そうだ!」
オレはいい事を思いついた。
オソロシアを呼んで耳打ちする。
オソロシアはオレから聞いた通り、ポテトを薄く切って
油で揚げたものを作り店長に食べさせた。
パリパリしてすごく美味しいと言って、店長は大喜びしていた。
その料理はロシアンフライと名付けられ、その店の人気メニューになった。
「なあ、タケシ、オレのウエートレス姿、似合ってるか?」
オソロシアは喫茶店の中でポーズをとった。
「むっちゃ似合ってるよ」
オレはデレデレになった。
「お前が喜んでくれてうれしいぜ」
オソロシアはニッコリと笑った。
オソロシアは数日間その喫茶店で働き、オレは喫茶店の好意で、倉庫に寝泊まりさせてもらった。
オソロシアはウエートレスさん専用寮に宿泊した。
オソロシアはモテモテでオソロシア目当てに来る男性客も増えてきた。
でも、俺たちは資金を溜めて冒険に出ることにしていたので、
オソロシアは数日でそこを辞めた。
店の店主は名残惜しそうだったが、オソロシアの考案したロシアンフライおかげで
たんまり儲けせてもらったので
喜んで選別をくれた。
さて、何処に行く。
「アットウイキの大図書館に行こうぜ」
オソロシアが言った。
「アットウイキ?」
「ああ、世界各国の冒険者たちが自分たちが体験した事をヒツジの皮に書き記して保存している
大図書館なんだ。冒険の事ならほとんど分かる」
「そんな場所があるんだ」
オレは感心した。
「あ、そうだ、いくつか質問があるんだけど」
「なんだ?」
「オソロシアがLRだってどうして分かるの?そりゃ、大魔術師に判別してもらうんだ。
SRくらいまでならそこらへんの魔術師でも判別できるが、レベルが上がるほど、
ハイクラスの魔術師じゃないと判別できねえんだ。オレも、子供の頃は、
ランキングが分からねえから、無印だってバカにされたさ」
「無印?」
「ノーマルはランキングが表示されないんだ」
「ハイクラスはランキングが表示されるの?」
「ああ、恐ろしいことに怠けてて弱くなったらLRがURに陥落したり同じLRでも
ランキングが下がったりすることもある」
「そうなんだ。あ、それから、お前の令呪外してあげようか?無理矢理服従させるのもイヤなんで」
「いいよ、別に無理矢理服従してるわけじゃねえし、タケシは恩人だからな。
令呪で無理矢理服従させようとしても、迷いの森に誘いこんだり、家具の下敷きにして殺したり、
自分で手を下さなくてもいくらでも殺し方はあるからなあ、ぎゃはははは」
オソロシアは楽しそうに笑った。
けっこうろくでもない奴みたいだとオレは思った。
「それによ」
オソロシアは言葉をつづけた。
「この令呪ってのにもランキングがある、N、R、SR,SSR,UR,LAだ。
SR以上は見た事ねえなあ。たぶん、魔王城の宝箱とかにしかねえんだろうけどよ。
それを装備するとマスターに対する服従心も強くなるんだけど、魔力で戦闘力も強くなるんだ。
だから、令呪はつけといたほうがいいのさ」
「なるほどね」
オレは感心した。
この近辺に大図書館は二か所あるらしいんだけど、
近いほうのセンターアイランドという場所にある図書館に行くことにした。
行ってみると、まるでギリシャ神話に出てくるようなパルテノン神殿を思わせる荘厳な図書館だった。
図書館の中に入って、すぐに利用できるのかと思ったらそうではなかった。
まず、身分証明書が必要だったが、オレは持ってない。
オソロシアが自分の身分証明書を提示していた。
あとは、事務局でヒツジの皮を買って、事務局で借りたペンとインクで、そこに自分がいままで
経験した事を記述して提出する必要があった。
その経験がアーカイブとしての財産になるらしい。
自分の経験というと、大したことはないが、売店で千円札をクシャクシャにされた事、
ポケットに入っていた、ガラスの茶色の小瓶が高額の値打ちがあったこと、オソロシアとの出会い、
実は自分が転生者かもしれないことなども書いた。
図書館の司書は無表情にその内容を読んだ。
別に何の質問もしない。たぶん、転生者ってけっこう沢山いるんだろう。
驚きもされなかった。
金持ちジャックもオレの事を転生者だって言ってた。
あれ?転生者って何だっけ?
時々記憶がアヤフヤになる。
オレが書いた内容を一読した司書はヒツジの皮にペンで何か番号を書いて
オレに差し出した。
「いくぜ」
オソロシアが言った。
ありがたいことに、文字は全部日本語で数字の表記も読めるものだった。
たぶん、文字という文明は日本からの転生者が持ち込んだものだろう。
そう考えれば、みんな日本語を使い、日本の文字を使っているのもうなづける。
最初に世界観の入門書。
ビギナーズトライという部屋に行った。
そこに行って、初心者が最初に学ぶべき基礎を学んだ。
ランキングは実は7つあった。
しかし、ここに記述されているランキングは
N、R、SR,SSR,UR、LRの6つだけだった。
七つ目の最上級はたぶん、神様なんだろうなと思った。
我々がなれるもんじゃない。たぶん。
異世界からの転生者はパーソンと呼ばれている。
この世界に最初から住んでいる人たちは基本、NPCと呼ばれている。
ランキングNはすべてNPCだ。しかし、超レアなキャラクターの中にはPCと
呼ばれるものも存在する。
実は神様も大部分はNPCだそうだ。
ただし、裏技を使えば、NPキャラの神様に会える。
その神様の名前は水雲デルタ。
水雲デルタの似顔絵を見てオレは愕然とした。
それは、オレが出会った女神だった。
どうやったらその女神に出会えるかは謎であり、
またであったとしても気に入られるかどうかは分からない。
NPCではないので、気に入られるパターンがない。
あと、キャラクターは通常召喚符を使って召喚する。
召喚符は魔導士会に行って手に入れる。
召喚符は1枚5000Pで10枚で50000Pであり、召喚レアリティーは抽選である。
しかし、10枚まとめて買うとSR以上を一枚保証してくれる。
Pとはこの世界の貨幣単位である。
あと、キャラクターのレベルアップは上限100までだが、解放の秘宝というのを
使うと次のクラスに行けてまた上限100。今まで確認されているのは上限300までだ。
たとえ、キャラクターの素質がLRであっても、レベルが低いうちは格下のキャラクターに
負けてしまうことがあるから、じっくりとレベルアップが必要ということだ。
解放の秘宝もしくは、同じキャラクターの召喚符で解放できる。
ただし、魔導士会はLRの召喚符を最初から持っていないので、
オソロシアの能力を限界突破するのは絶望的だろうとオレは思った。
ただし、レベルが上限に達したとしても、まだキャラクターをパワーアップする方法がある。
実は、自分が持っているキャラクターで下位互換のキャラクターたとえば
オソロシアのURやSSRのキャラクターを引いてしまった場合は、同じキャラクターは
召喚できない。ただし、ダブりの召喚符は魔法塊という宝珠をつぎ込むことで
パワーアップすることができる。
それをオソロシアの背中に七枚まで貼ることができる。
ダブりの召喚符も無駄にはならない。
あといらない召喚符も魔法塊の代わりに召喚符に食わせることができる。
ただし、召喚してしまったキャラクターを召喚符に食わせると殺人罪で逮捕され、
下手したら処刑されるらしい。
今では、禁則魔法がかけられていて、生身のキャラクターを召喚符に食わせることはできないらしい。
生身のキャラクターと相性が悪い場合は、追放するか、奴隷商人に売る。
あとは、キャラクターが暴走して主人を殺してしまった場合は封印魔法をかけて
裁判にかけられ死刑になるか奴隷商人に売られる。
通常、キャラクターが主人を殺さないよう令呪の着装が義務付けられているが
中には金を惜しんで装着しなかったり、キャラクターが他のキャラクターに依頼して
主人殺す場合があるので、キャラクターはあまり自由にはさせず、主人が留守の時は
首輪をして鎖でつないでおくことが奨励されていた。
そういうのは嫌だ。オレの流儀にはあわない。
オソロシアは自由にさせることにしている。
ビギナーの部屋から出て、指定された番号の部屋に行くと、
そこで驚きの事実を知った。
実はオレの財布の中に入っている日本円はこの世界でも価値があったのだ。
この世界に転生して最初に会った店屋のオッサン。
あのオッサンは実は魔導教会の会員で、クシャクシャにした千円札は実は教会に持って帰っていた。
奴隷商人の金持ちジャックに渡されたオソロシアは、一回限定スタートダッシュガチャの召喚符
千円一回ガチャで出たものだった。
本来、LRの召喚符は魔導教会は持っていないが、オソロシアのレベルが高すぎて、
末端の協会員がオソロシアのレベルを図ることができなかったため、
N扱いで奴隷商人に渡されたものだったのだ。
いわば、バグみたいなものだった。
オレは身震いした。
これからも、財布の中に入っている日本円を使える場合があるかもしれない。
財布の中身を捨てなくてよかった。
アットウイキ大図書館に来てよかったとオレは思った。
オソロシアの背中に、本当に召喚してない召喚符が貼ってあるんだろうか。
まだ貼ってないんだったら、レアリティの低いキャラは召喚せずに
オソロシアの背中に貼ったほうがいい。
「ねえ、背中に召喚符貼ってるの?」
「貼ってるぜ」
「じゃあ、ちょと見せてくれないかな」
「え……」
オソロシアは口ごもった。
「ごめん、いいや」
「いいよ!お前んなら見せてやるぜ、でも他の奴には見せたくないからな、どっか人が見てない
草むらにいってくれよ」
「うん」
オレたちは公園の草むらに入っていった。
オソロシアが上着を脱ぎだす。
ちょっとドキドキした。
オレはオソロシアの背中をチェックする。
「白い召喚符が貼ってあるね」
「ああ、これはRの召喚符なんだ」
オソロシアはちょっと顔を赤らめていた。
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