ねこのフレンズ

楠乃小玉

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二十二話 ありがと~神様~

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 「こちらからドカンちゃんの気配がするわ、
 早く悪の道から手を洗うようにさせないと」
 シアンちゃんが明石公園の中から外に出ようとする。
 そこには鉄のガードがついていてちょうどシアンちゃんの
 身長と同じくらいの高さなので通り抜けできない。
 「あら、あら、あら、どういうことかしら」
 そこにサバンちゃんがやってくる。
 「えっほ、えっほ、えっほ、えっほ」
 サバンちゃんは自転車用迂回路を通って何なく外に出る。
 「何やってんの?」
 サバンちゃんは首をかしげる。
 「ムキー!私はあんたのためにうごいてやってんでしょうがー!」
 シアンちゃんは怒ってその場でピョンピョン跳ねた。
 「どうしたの?」
 サバンちゃんは反対側に首をかしげる。
 「だ、か、ら、ここに鉄のU字型のガードがあるから通れないって
 いってるんでしょ!」
 「私達、体が小さいから下をくぐればいいんじゃない?」
  「あらそうね」
  シアンちゃんは鉄のガードの下をくぐり抜ける。
 サバンちゃんはつぶらな瞳でキョトンとシアンちゃんを見つめている。
 「あんた!今、私を馬鹿だと思ったでしょ!」
 シアンちゃんはサバンちゃんの胸ぐらを掴む。 
 「ジュッ!」
 音がして水煙がたちあがる。
 「ぎゃー!鎮火するー!」
 シアンちゃんがあわてて手を引っ込めた。
 「大丈夫?」
 サバンちゃんが心配そうに近づく。
 「あー触るな!」
 シアンちゃんはピョンと飛び退く。
 「あ……」
 サバンちゃんの目がみるみる潤む。
 「ボクのこと嫌いなの?」
 シアンちゃんの顔がカーッと赤くなる。
 「き、き、き、嫌いなわけないじゃない」
 「ウソだ!」
 「じゃあ好きって言って!」
 「はーっ?そんな恥ずかしいこと言えるわけないじゃない、あんた馬鹿?」
 「やっぱり嫌いなんだ」
 「ち、ち、ち、ちがうわよ!」
 サバンちゃんはつぶらな瞳でシアンちゃんを見つめる。
 「フン」
 シアンチャンはそっぽを向く。
 サバンちゃんの顔の表情が曇る。
 「好きよ、大好きに決まってるじゃない!」
 そっぽを向いたままシアンちゃんは叫んだ。
 「えー?誰好きなのかな~ω」
 サバンちゃんがにやける。
 「サバンちゃんに決まってるじゃない!」
 シアンちゃんは顔を真っ赤にして言った。
 「やったー!シアンちゃん大好き-!」
 そう言いながらサバンちゃんはシアンちゃんに抱きつく」
 ジュッと大きな水煙があがる。
 「ぎゃー!鎮火するから、やめなさい!やめなさいってえのおおおおおお!」
 シアンちゃんは大声で叫んだ。
 サバンちゃんは慌てて飛び退く。
 「サバンちゃんもシアンちゃんの事、大好きだよ」
 サバンちゃんは首をすくめながらいった。
 「フ、フン、そんなこと、わかってるわよ」
 シアンちゃんはそっぽを向いたまま言った。
 「うふふっ」
 サバンちゃんはスキップをしながら先に行ってしまった。
 「こら~待ちなさーい!行き先を決めるのは私よ~!」
 シアンちゃんは慌てて追いかけた。

 「ちょっと、そこのホームセンターに入りなさい!」
 シアンちゃんが怒鳴る。
 「あーい!」
 サバンちゃんはトコトコと平気で道路を横断する。

 「何してんのよ、信号渡りなさい!!!あぶない!にげてえええええああああああぎゃあああああああ!!」
 シアンちゃんが狂ったように叫んだ。
 「え?」
 サバンちゃんの背後に大型トラックが。


 ブシャッ!
 サバンちゃんの体が粉々に飛び散った。
 「いやあああああああー!」
 半狂乱になったシアンちゃんが叫ぶ。
  
 プション

 サバンちゃんの体が元に戻る。
 「あーびっくりしたー水の体じゃなきゃ死んでたよ!」
 
 「びっくりさせんじゃないわよ!このクソボケがあ!」
 激怒しながらシアンちゃんが道路を横断する。
 「あぶない!」
 サバンちゃんが叫ぶ。
 ブチャツ!
 鈍い音とともにシアンちゃんの体は乗用車に挽き潰された。
  
 パヒョン
 変な音とともにシアンちゃんの体が元に戻る。
 「ふう、炎の体じゃなかったらどうしようかと。だいたい、あなたが悪いのよ、
 死なないって分かっていても、大切な人が目の前で粉々になるのは良い気分じゃないわ。
 今後気をつけなさい!」
 「へーい」
 サバンちゃんが生ぬるく答えた。

 ホームセンターに入ると、サバンちゃんが真っ先に植物の安売り売り場を見つける。
 「しむ~しんでしまふ~」
 新しく陳列された古くなった枯れかけの草花が呻いていた。

 「あら、かわいそう」
 サバンちゃんは植物の上に両手を広げる。
 その指先からチョロチョロと水が流れ落ちる。
 「わ~生き返る~、ありがと~神様~」
 植物たちは大喜びだ。
 「あら、私も精霊の施しをあげなきゃいけないようね」
 シアンちゃんは植物たちの上に手をかざす。
 そこから日輪の光がさしこむ。
 「わ=ありがと~、あったかーい」
 アブチロンの花が喜ぶ。
 「熱いぞ!止めろボケ!このタコ助野郎!」
 横のパンジーがぶち切れて叫んだ。
  
 「何ですって、この恩知らず!干乾しにするわよ!」
 シアンちゃんは激怒してピョンピョン跳ねた。

 「誰がうちの若い衆を干乾しにするって」
 シアンちゃんが振り返ると、そこには髪の毛が黒、白、茶色の三色で
 絣の着物を着て猫耳がはえたキャリ子が居た。
 
 「は?何よあんた、思い上がった馬鹿に礼儀を教えてやってるだけよ」
 
 シアンちゃんは眉間に深いシワをよせ、口を半開きにしてにらんだ。
 
 「やんのか、てめえ」
 キャリ子の耳が横に向いて伏せ、目の瞳孔がまん丸に広がった。
 
 「あー髪の毛にメッシュ入れて不良なんだ~」
 サバンちゃんが突っ込みを入れる。
 「メッシュじゃないわよ、地毛よ!」
 「地毛でも黒に染めなきゃ校則違反だよ~」
 「お前は大阪の高校か!」

 激怒したキャリ子が両手を広げると、そこから二本の
 鉄斧が出てきた。
 
 「ぶっ殺す!」
 キャリ子は斧をふりあげる。

 「これでも喰らいなさい!」
 シアンちゃんは両手から真っ赤な炎を出す。
 みる間に鉄斧は真っ赤に焼けただれた。
 「あちゃちゃちゃちゃ!」
 キャリコは転がり回る。
 
 「大変だ!」
 サバンちゃんは舌をだして口の周りをペロペロ舐めながら手から勢いよく水を出す。
 ジュワアアアアアアア

 水煙があがって鉄斧は冷めた。
 「はあ、はあ、はあ、死ぬかと思ったわ」
 
 「ねえ、あんた、ドカンちゃんを見なかった」
 シアンちゃんがたずねる。
 
 「知ってても言わないよ~、アッカンベー!」
 キャリ子はアッカンベーをして逃げていった。

 「まったく、これで五里霧中だわ。とにかく、西に向かいましょう」
 シアンちゃんはサバンちゃんを見る。
 「はあ、はあ、はあ、はあ」
 シアンちゃんは肩で大きく息をしている。
 「だ、大丈夫?」
 「わかんない、たぶん、大丈夫かもしれないけど、大丈夫じゃないかもしれない」
 「しまったわね、ここら辺には水道水しかないし……、とりあえず、井戸のある場所まで 
 移動しましょ」
 
 「ダジャレ?」
 サバンちゃんが首をかしげる。
 「あんた、この状況でダジャレとかかましてる場合じゃないでしょ」
 シアンちゃんは困惑したような表情をした。
 「とにかくいきましょ」
 シアンちゃんとサバンちゃんはダイカンキホームセンターの南側の出口から
 外へ出た。

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