東京ケモミミ学園

楠乃小玉

文字の大きさ
上 下
55 / 55
第二章 牡丹ろうどう編

二十二話 意外な結末

しおりを挟む
 武は、灰になった牡丹灯籠の残骸の中に青い破片を見つけた。


 拾い上げてみると、それはsdカードだった。

 「何かウイルスでもばらまこうとしてたのかな」

 良太が言った。

 「わからないよ、でも、普通に開いたら危なそうだね」

 「僕が使ってない古いウインドウズセブンのパソコンがあるから、
 そこに入れてオフラインで開いてみようよ」

 「ありがとう、良太君、悪いけどそうさせていただくよ」

 武と良太は家にsdカードを持ち帰り、
 そこでsdカードのファイルを開いてみた。

 「牡丹ちゃんの宝物」
 というファイルがあった。

 開いてみると、そこには、ファンが描い牡丹灯籠のファンアートが
 いっぱい詰まっていた。

 うまい絵、下手な絵関係なく、全部集めているようだった。

 本当は、牡丹灯籠も、ファンに楽しんでもらいたいという気持ちで始めたのだろう。

 それが、いつしか、どれだけアクセスがあるか、アクセス数はいくらか、
 それだけが気になって、生きたここちがしなくて、
 いつのまにか、ユーザーを楽しませることを忘れてしまった。

 数字だけあがればいい、そうだ、ユーザーをイライラさせて、現実逃避させて、
 数字をあげればいいんだ!

 そう思ったに違いない。

 「あー、ぼくもライトノベル投稿サイトに小説を投稿しているからわかるよ。
 最初は楽しんで書いていたのに、ちょっとお気に入りが減ったり、
 アクセスが伸びなくなると、生きたここちがしなくて、
 全然たのしめなくなっちゃうんだよね。
 そんなことより、今残っている読者のために、
 絶対に作品は最後まで完成させないといけないのにね。
 どうしても途中で放棄して次の作品を書こうとしてしまう。
 新しく書いた作品は、最初は閲覧数も多いから、
 次から次へと作品を放棄していて、エタるの山を築いてしまうんだ」

 悲しげに良太が言った。

 「本当は、数字の向こうにいる読者を楽しませることに命をかけないと
 いけないのにね。たったアクセス1でも、その一人の読者は、
 僕なんかの作品を読んでくれているんだから」

 良太が涙ぐみながらそう言うと、神無が無言で微笑をうかべながら
 良太の涙をハンカチでそっとぬぐった。

 「もし、もっと早く、牡丹灯籠と出会っていれば、
 なにか助言ができていたかもしれない。妖怪を倒すことだけじゃなく、
 戦うだけじゃなく、もっと相手の気持ちを考える余裕が
 僕にあればよかったと思うよ」

 武はそう言って反省した。

 牡丹灯籠たち火の妖怪が全財産をなげうってつくった、ダウンロード型の
 オンラインゲームは、オーナーが消失したことにより頓挫してしまった。

 依頼、企画したのは妖怪たちであったが、作っているのは
 生身の人間だ。

 困った製作会社の人たちは、試作で作っていた牡丹灯籠の
 3dモデルに牡丹灯籠の声を担当していた声優さんにお願いして、
 バーチャルユーチューバーを作ってみた。

 それが、もともとのゲームのファンを中心に話題になり、
 ものすごく人気が出て、バーチャルユーチューバーとして収益もあがった。

 本物の牡丹灯籠は死んでしまったけれども、
 幻のバーチャルユーチューバーとして、牡丹灯籠は永遠に電脳の世界で
 生き続けることとなったのだ。

 死んでしまった牡丹灯籠、
 今はその怨念は武には感じられない。
 
 予想外の出来事ではあったが、きっと牡丹灯籠も満足して成仏したのだろう。

 武はそう理解した。

 完
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(37件)

ツ~
2018.07.29 ツ~

完結、おめでとうございます。
良太君の言葉、胸に刺さりました。その通りだと思います。自分も頑張ろうと思いました。ありがとうございます。

楠乃小玉
2018.07.30 楠乃小玉

これは本当にあるんですよ。私も、ちょっとした数字のあがりさがりで一喜一憂して
そのために悩んで書けなくなったり。
ほんとうは、数字じゃなくて、その数字の向こうにいる読者さんの声なき声を聴かないといけないんですけどね。
ただ、これがなかなかにしてむつかしい。
いつも素敵なコメントありがとうございます!

解除
景綱
2018.07.28 景綱

完結ですね。
なんだか楠乃さんの心の声が物語に反映されているみたいですね。
私も同じように思いますよ。

お互い頑張りましょうね。
けど、心が疲れぎみなときは休んだ方がいいときもありますよ。

楠乃小玉
2018.07.29 楠乃小玉

そうですね、本当は数字に一喜一憂してはいけないのですよ。
読んでくださる読者の皆様のことを第一にかんがえないと。
でも、ついつい忘れて、数字だけあがればいいや!
みたいな誘惑にかられてしまいます。
ついに完結しました、景綱様の温かい感想がとても強い力になりました。
本当にありがとうございました。

解除
ツ~
2018.07.26 ツ~

ネットが普及していない時のゲームはそうでしたよね。課金ガチャとかもありませんでしたし。確かに、売れないと会社として、やってはいけないですからね。バランスが大事なのかもしれませんね。ゲームは面白いですけど、息抜きくらいが丁度いいです。

楠乃小玉
2018.07.27 楠乃小玉

そうなんですよね、生活が破壊されてしまったら、
結局、ゲームの最終的にできなくなってしまうんですよね。

ゲームの中で人間関係ができてしまって抜けられなくなってしまったり、
そういうこともあります。
「彼を捨ててはおけない!」
とか思っちゃうんですよ。
情がからむというか。
それで、だれかが抜けようとすると、
「いままで一緒に命をかけて戦ってきた仲間じゃないか!」
とか言ってみんなで引き留める。
実は、抜けようとしている人のほうが目が覚めているんですけど。
そういうこと、多くありました。
だから、今は、人とかかわらず、ゆっくり時間のある時にできるゲームだけ
やるように心がけています。
とにかく、自分は熱中すると周りがみえなくなる性格なので、
いろいろ、自分自身思い当たることがあるんですよね。
それで、人生狂わせちゃったらしかたがないです。
だから、あえて、去る人があってもオンラインゲームの世界では
引き留めちゃだめだと思っています。
いまでは。
本当に素敵な感想ありがとうございます!

解除

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。