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第二章 牡丹ろうどう編
十六話 戦士の帰還
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「おにーちゃーん、ただいまー!」
真っ黒に日焼けした妹の美紀が帰ってきた。
「ただいま帰りましたであります! 」
犬耳をピコピコさせながら弥生が帰ってきた。
美紀は夏休み、オーストラリアのサマースクールに交換留学生として行っていたのだ。
まだ幼い美紀を、たとえインストラクターの先生がついているとはいえ海外に留学させるのは
不安なので、弥生についていってもらった。
とても楽しんできたようでなによりだ。
「おお、よく帰ったのう、海外で妖怪退治はしたか」
卯月もやってきた。
「妖怪退治とかしてませんよ、海外留学はそういうことをするためにあるのではありません」
弥生が諭すように言った。
「そうか、こちらではな、私が悪い妖怪をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」
卯月は大げさなアクションをつけながら自慢話しをした。
別にまだ妖怪の討伐なんてやってはいなかった。
「おうおう、誰が退治されたって」
背後から声がする。
武の背中にゾクゾクと悪寒が走る。
みんな、ヤツを見るな!
「大鏡! 」
武はさけんで手をかざすと、そこに大きな鏡が現れた。
「これは妖怪の学校で習ったことがあるぞ、火の妖怪輪入道だ。見ると魂を抜かれるぞ! 」
「よく知ってるじゃないか、褒美にお前は一番最後に殺すとしよう」
「なんじゃと、生意気な!」
卯月は目をとじながら霊気を察知して輪入道に向かってプッと種を吐く。
ジュッ!
音がして種が焼ける。
「くそっ!」
弥生は目をつぶりながら手から火の玉を発して輪入道に投げつける。
「ははははは!効かぬわ」
輪入道はアザケリ笑う。
「みんな下がって! 美紀を連れて逃げてくれ」
武がさけぶ。
「そうはいかぬわ。我ら火の精霊の野望を阻む者は皆殺しにしてくれようぞ」
輪入道は目を閉じながら逃げようとする美紀に襲いかかる。
その熱で美紀は輪入道の位置を把握する。
「私は強いんだからね!」
美紀はそう言って、武から貰って腰につけている水鉄砲から水を発射した。
「ぎゃーっ!目ガー!」
輪入道がさけぶ。
「今だ、如水!」
武がさけぶと地面から水が吹き上がる。
「ぎゃああああああああー!」
わめき声を上げながら輪入道は鎮火して崩れ去っていった。
「まったく、火の勢いだけが強くなればすべてのバランスが崩れる。
野望のために平穏を崩すなんて、ヤツははなんて愚かな選択をしてしまったんだ」
武は唇を噛んだ。
真っ黒に日焼けした妹の美紀が帰ってきた。
「ただいま帰りましたであります! 」
犬耳をピコピコさせながら弥生が帰ってきた。
美紀は夏休み、オーストラリアのサマースクールに交換留学生として行っていたのだ。
まだ幼い美紀を、たとえインストラクターの先生がついているとはいえ海外に留学させるのは
不安なので、弥生についていってもらった。
とても楽しんできたようでなによりだ。
「おお、よく帰ったのう、海外で妖怪退治はしたか」
卯月もやってきた。
「妖怪退治とかしてませんよ、海外留学はそういうことをするためにあるのではありません」
弥生が諭すように言った。
「そうか、こちらではな、私が悪い妖怪をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」
卯月は大げさなアクションをつけながら自慢話しをした。
別にまだ妖怪の討伐なんてやってはいなかった。
「おうおう、誰が退治されたって」
背後から声がする。
武の背中にゾクゾクと悪寒が走る。
みんな、ヤツを見るな!
「大鏡! 」
武はさけんで手をかざすと、そこに大きな鏡が現れた。
「これは妖怪の学校で習ったことがあるぞ、火の妖怪輪入道だ。見ると魂を抜かれるぞ! 」
「よく知ってるじゃないか、褒美にお前は一番最後に殺すとしよう」
「なんじゃと、生意気な!」
卯月は目をとじながら霊気を察知して輪入道に向かってプッと種を吐く。
ジュッ!
音がして種が焼ける。
「くそっ!」
弥生は目をつぶりながら手から火の玉を発して輪入道に投げつける。
「ははははは!効かぬわ」
輪入道はアザケリ笑う。
「みんな下がって! 美紀を連れて逃げてくれ」
武がさけぶ。
「そうはいかぬわ。我ら火の精霊の野望を阻む者は皆殺しにしてくれようぞ」
輪入道は目を閉じながら逃げようとする美紀に襲いかかる。
その熱で美紀は輪入道の位置を把握する。
「私は強いんだからね!」
美紀はそう言って、武から貰って腰につけている水鉄砲から水を発射した。
「ぎゃーっ!目ガー!」
輪入道がさけぶ。
「今だ、如水!」
武がさけぶと地面から水が吹き上がる。
「ぎゃああああああああー!」
わめき声を上げながら輪入道は鎮火して崩れ去っていった。
「まったく、火の勢いだけが強くなればすべてのバランスが崩れる。
野望のために平穏を崩すなんて、ヤツははなんて愚かな選択をしてしまったんだ」
武は唇を噛んだ。
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