37 / 55
第二章 牡丹ろうどう編
四話 美人の監視官
しおりを挟む
「さあ、こちらでやんすよ」
ガイコツが案内したのは一番奥の部屋。
部屋の看板には「特待生」と書かれていた。
中に入ると、真っ白な狐、笠をかぶり大福帳とトックリを持った狸、
小さな狸などがいた。
真っ白な狐は尾っぽが九本ある。
「ん」
怪訝そうな表情で白狐が武を見る。
「おい、やめとけ!」
そう言って小さな狸が飛び退く。笠をかぶった狸も後ろに下がる。
「わかっているさ、ただ、ここまで能力が高いヤツがくると試したくなる性分でね」
狐はそう言いながら武に近づき手をさしのべてくる。
「ああ、こんにちわ~」
武は握手だと思って気楽に手を伸ばす。
グサッ!
白狐は鋭い爪で武の腹部をえぐった。
「え?」
お腹の処から白い光を発し、突き刺した白狐の手が腕の処から砕け散った。
狐は素早く後ろに飛び退く。
「うわわわわ! すいません、すぐにお医者さんを呼ばないと! 」
何が起こったか分からず武は狼狽する。
「この野郎!」
激怒して卯月が白狐に飛びかかろうとする。
「ちょ、やめろって!」
武が必死で卯月を羽交い締めにする。
「気にするな、ちょっとした小手調べだ」
そう言って白狐がちぎれた片腕をブルンとふるうと腕は元通りになった。
「どうやら稲荷の血筋の者のようだな、私は伏見で修行している者だ、
伏見と呼んでくれていい。お前は合格だ、
これから我らが妖術が秘伝、自由に見るがよい」
そう言って白狐がブウンと腕をふるうとそこに鳥居が現れ、その向こうに漆塗りの扉が現れた。
その扉は自動的に開き、その奥には無数の巻物が積み重ねてあった。
「やれやれ、一時はどうなることかと思ったぜ」
そう言って笠をかぶった狸が戻ってくる。
「俺は金長一派のものだ、ここで金長派は俺だけだ。金長と呼んでくれていい」
金長は手を伸ばす。
武は少し身構える。
「ははは、大丈夫だよ」
金長は握手を求めた。
その後ろから小さな狸がペトペトとやってきた。
「まったくもう、オイラはお酒作りの勉強に来てるだけだから、物騒なことはゴメンだぜ、
オイラ灘の豆狸よろしく」
小さい狸はニッコリと笑った。
そのあとで白狐の伏見が武の能力の高さを妖怪の国の上層部に報告したらしく、
妖怪の国の監視官が武につけらえることとなった。
よほど警戒されているようだ。
監視官は全身ぴっちりとした真っ黒なレザースーツを着込んだ女性だった。
首には真っ赤な皮の首輪がはめてあり、体中に水滴が付いている。
スレンダーで均整のとれた体をしている妖怪だった。
「こんにちわ、今日から君の監視官になった濡れ女だ、よろしく」
濡れ女は無愛想に言った。
「なんなの、こいつ!」
卯月はプンスカと怒っていた。
ガイコツが案内したのは一番奥の部屋。
部屋の看板には「特待生」と書かれていた。
中に入ると、真っ白な狐、笠をかぶり大福帳とトックリを持った狸、
小さな狸などがいた。
真っ白な狐は尾っぽが九本ある。
「ん」
怪訝そうな表情で白狐が武を見る。
「おい、やめとけ!」
そう言って小さな狸が飛び退く。笠をかぶった狸も後ろに下がる。
「わかっているさ、ただ、ここまで能力が高いヤツがくると試したくなる性分でね」
狐はそう言いながら武に近づき手をさしのべてくる。
「ああ、こんにちわ~」
武は握手だと思って気楽に手を伸ばす。
グサッ!
白狐は鋭い爪で武の腹部をえぐった。
「え?」
お腹の処から白い光を発し、突き刺した白狐の手が腕の処から砕け散った。
狐は素早く後ろに飛び退く。
「うわわわわ! すいません、すぐにお医者さんを呼ばないと! 」
何が起こったか分からず武は狼狽する。
「この野郎!」
激怒して卯月が白狐に飛びかかろうとする。
「ちょ、やめろって!」
武が必死で卯月を羽交い締めにする。
「気にするな、ちょっとした小手調べだ」
そう言って白狐がちぎれた片腕をブルンとふるうと腕は元通りになった。
「どうやら稲荷の血筋の者のようだな、私は伏見で修行している者だ、
伏見と呼んでくれていい。お前は合格だ、
これから我らが妖術が秘伝、自由に見るがよい」
そう言って白狐がブウンと腕をふるうとそこに鳥居が現れ、その向こうに漆塗りの扉が現れた。
その扉は自動的に開き、その奥には無数の巻物が積み重ねてあった。
「やれやれ、一時はどうなることかと思ったぜ」
そう言って笠をかぶった狸が戻ってくる。
「俺は金長一派のものだ、ここで金長派は俺だけだ。金長と呼んでくれていい」
金長は手を伸ばす。
武は少し身構える。
「ははは、大丈夫だよ」
金長は握手を求めた。
その後ろから小さな狸がペトペトとやってきた。
「まったくもう、オイラはお酒作りの勉強に来てるだけだから、物騒なことはゴメンだぜ、
オイラ灘の豆狸よろしく」
小さい狸はニッコリと笑った。
そのあとで白狐の伏見が武の能力の高さを妖怪の国の上層部に報告したらしく、
妖怪の国の監視官が武につけらえることとなった。
よほど警戒されているようだ。
監視官は全身ぴっちりとした真っ黒なレザースーツを着込んだ女性だった。
首には真っ赤な皮の首輪がはめてあり、体中に水滴が付いている。
スレンダーで均整のとれた体をしている妖怪だった。
「こんにちわ、今日から君の監視官になった濡れ女だ、よろしく」
濡れ女は無愛想に言った。
「なんなの、こいつ!」
卯月はプンスカと怒っていた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
無敵のイエスマン
春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
忘れられない約束
雪苺
青春
ねぇ、あなたは覚えていますか?
あの日交わした約束を・・・。
表紙イラストはミカスケ様
http://misoko.net/
小説家になろう、エブリスタ、カクヨムにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる