東京ケモミミ学園

楠乃小玉

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第二章 牡丹ろうどう編

四話 美人の監視官

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 「さあ、こちらでやんすよ」

 ガイコツが案内したのは一番奥の部屋。

 部屋の看板には「特待生」と書かれていた。

 中に入ると、真っ白な狐、笠をかぶり大福帳とトックリを持った狸、
 小さな狸などがいた。

 真っ白な狐は尾っぽが九本ある。

 「ん」

 怪訝そうな表情で白狐が武を見る。

 「おい、やめとけ!」

 そう言って小さな狸が飛び退く。笠をかぶった狸も後ろに下がる。

 「わかっているさ、ただ、ここまで能力が高いヤツがくると試したくなる性分でね」

 狐はそう言いながら武に近づき手をさしのべてくる。

 「ああ、こんにちわ~」

 武は握手だと思って気楽に手を伸ばす。

 グサッ!

 白狐は鋭い爪で武の腹部をえぐった。

 「え?」

 お腹の処から白い光を発し、突き刺した白狐の手が腕の処から砕け散った。

 狐は素早く後ろに飛び退く。

 「うわわわわ! すいません、すぐにお医者さんを呼ばないと! 」

 何が起こったか分からず武は狼狽する。

 「この野郎!」

 激怒して卯月が白狐に飛びかかろうとする。

 「ちょ、やめろって!」

 武が必死で卯月を羽交い締めにする。

 「気にするな、ちょっとした小手調べだ」
  
 そう言って白狐がちぎれた片腕をブルンとふるうと腕は元通りになった。

 「どうやら稲荷の血筋の者のようだな、私は伏見で修行している者だ、
 伏見フシミと呼んでくれていい。お前は合格だ、
 これから我らが妖術が秘伝、自由に見るがよい」

 そう言って白狐がブウンと腕をふるうとそこに鳥居が現れ、その向こうに漆塗りの扉が現れた。
 
 その扉は自動的に開き、その奥には無数の巻物が積み重ねてあった。

 「やれやれ、一時はどうなることかと思ったぜ」
 
 そう言って笠をかぶった狸が戻ってくる。

 「俺は金長キンチ一派のものだ、ここで金長派は俺だけだ。金長と呼んでくれていい」

 金長は手を伸ばす。

 武は少し身構える。

 「ははは、大丈夫だよ」
 
 金長は握手を求めた。

 その後ろから小さな狸がペトペトとやってきた。

 「まったくもう、オイラはお酒作りの勉強に来てるだけだから、物騒なことはゴメンだぜ、

 オイラ灘の豆狸マメダよろしく」

 小さい狸はニッコリと笑った。

 そのあとで白狐の伏見が武の能力の高さを妖怪の国の上層部に報告したらしく、

 妖怪の国の監視官が武につけらえることとなった。
 
 よほど警戒されているようだ。

 監視官は全身ぴっちりとした真っ黒なレザースーツを着込んだ女性だった。
 
 首には真っ赤な皮の首輪がはめてあり、体中に水滴が付いている。

 スレンダーで均整のとれた体をしている妖怪だった。

 「こんにちわ、今日から君の監視官になった濡れ女だ、よろしく」

 濡れ女は無愛想に言った。

 「なんなの、こいつ!」

 卯月はプンスカと怒っていた。
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