東京ケモミミ学園

楠乃小玉

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十五話 

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「これで籠釣瓶も終わりだろ、普通に考えて」

 余裕の表情で卯月がつぶやく。

「いや、そんな甘い奴ではない」

 厳しい表情で八代師走が言った。

「では牧谷殿、頼みましたぞ」

「任せな」

 八代師走が声をかけると、牧谷皐が林の中から飛び出してきた。

 それと同時に籠釣瓶を中心として燃えさかる炎の中からプシューと音を立て、
 水柱がいくつも噴出した。白煙をあげて火は消え去り、その中から憤怒の表情の籠釣瓶が現れる。

「死にな!」

 姿を表した籠釣瓶にむかって牧谷皐が鋭い爪を振りかざす。

 籠釣瓶はそれを軽々と避け、自分の胸元に手を入れる。

 すると、そこから銀に煌めく日本刀が現れた。

 籠釣瓶は軽々と片手でその日本刀を持ち、
 次々と繰り出す牧谷皐の攻撃をかわして素早く牧谷皐の脳天にむけて日本刀を振り下ろした。

 ブウン
 風を切る音がして牧谷皐は真っ二つにされる。

「ウケケケケッ」

 真っ二つにされた牧谷皐は笑っている。そして、すぐに体は一つにくっついた。

「刃物じゃ炎は切れないよ」

「チイッ」

 籠釣瓶は牧谷皐に手をかざす。しかし何も起らない。

「あれまあ、水切れかい。水の切れた鉄は焼溶かされて鉄クズになるしかないねえ、グヘヘヘヘヘッ」

 牧谷皐は籠釣瓶ににじりよる。その反対側から余裕の表情で南水無月が現れる。

「このクソ鉄くずが、南の女王と呼ばれたこの南水無月様にぶち殺されることを光栄に思わなあかんでえ」

 籠釣瓶の顔から明らかに焦りの表情が見て取れる。

「くそおっ、寄るなあ!」

 叫びながら籠釣瓶は日本刀を振り回す。

「踊れ、踊れ、なぶり殺しにしてやるよ」

 嬉しそうに表情をゆがめながら牧谷皐がにじりよる。

「来るなーっ!」

 叫びながら籠釣瓶は逃げ出した。

「さあ、私の背中に乗るがよい」

 林の中で身を潜めていた卯月が武に背を向ける。

「え、でも」 

 武はためらう。

「何をしておる。状況を見極めねばなるまいが」

「わ、わかった」

 武は卯月の背中に乗った。

「それっ」

 卯月が一足飛びに飛び上がった。

 上空から逃げる籠釣瓶と追う牧谷皐、
 南水無月が見えた。籠釣瓶は電柱や電灯を切って追っ手に投げつけながら逃げているが、
 それらの鉄柱やコンクリートは火の精霊の体をすり抜けるばかりであった。

「よいっと」

 卯月はまた籠釣瓶たちから少し離れた林の中に着地し、
 籠釣瓶たちの様子をうかがった。

「イヤーッ!」 

 籠釣瓶は悲鳴を上げて日本刀を無茶苦茶に振り回す。

 その切れ味はすさまじく、
 公園内に設置されたジュースの自動販売機に
 ちょっと触れただけで、自動販売機が真っ二つになった。

 自動販売機の中からは缶ジュースが大量に転げ出す。
 その缶ジュースに足を取られて籠釣瓶は転んでしまった。
 「来ないで!来ないで!」

 籠釣瓶は震える手で缶ジュースを牧谷皐に投げつけるが、
 手が震えていて、あさっての方向に飛んで牧谷皐にかすりもしない。

「さて、そろそろトドメをさすかね」

 余裕の表情で牧谷皐は鋭い爪の生えた手を振りかざす。

 牧谷皐の体中から真っ赤な炎が燃え上がる。

「手柄は渡さへんでえ!」

 南水無月がドタドタと牧谷皐の後ろから走ってくる。

「そうはいくか!」

 牧谷皐は慌てて籠釣瓶に突進する。

「止めてーっ!」

 叫びながら籠釣瓶は思いっきり自分の頭の上へ垂直に缶ジュースをなげあげた。

「ウケケケ、ここまで狼狽するとは、所詮こいつもその程度の奴ってことだねえ」

 楽しげに火炎の拳を振り上げながら牧谷皐が籠釣瓶の直前まで来たとき、
 その表情が凍り付く。

 恐れた顔を作ってはいるものの、
 籠釣瓶は口元から溢れるウスラ笑いを必死にこらえようとしている。

 戦巧者である牧谷皐は間近まで迫ってすぐにその事に気づいた。

「ヤバッ」

 飛び退こうとしたとき、上空から缶ジュースが落ちてきて、
 ストンと牧谷皐の体の中を通過する。

 それとほぼ同時に籠釣瓶は妖刀村正を下から切り上げた。

 パスッと軽い音がして缶ジュースは真っ二つに切れ、牧谷皐の体の中にジュースがぶちまけられる。

 それはすぐに沸騰してバウンとう鈍い音とともに爆発して、
 牧谷皐の臓物をそこらじゅうにまき散らした。

「ぎゃああああああああああっ!」

 牧谷皐はもがき苦しみ転げ回る。

 籠釣瓶はすでにウスラ笑いを隠そうともせず、
 日本茶の缶をあけて、妖刀村正の上にそそいだ。

 そして、楽しそうにザックリと牧谷皐の目に刃先を突っ込んでゆっくりとえぐり出した。

 とてもニコヤカに満足げな表情で丁寧に一つずつえぐり出す。

「ぎゅああああー、ぎあああー」

 痛みに苦しみ、転げ回る牧谷皐を穏やかな笑顔を浮かべつつ、
 茶を垂らした刀でゆっくりとそぎ落としていく。

 凌遅刑という殺害方法だ。

 その手際の良さは、いかに籠釣瓶が殺しに精通しているか分かる所行であった。

 牧谷皐の体は痙攣しすでに叫びもしない。

 籠釣瓶は穏やかな微笑を口元に浮かべつつ、
 今度はゆっくりと南水無月の方に視線を送った。

 水無月はガタガタと体を震わせてその場に突っ立っている。

 っと思ったらいきなりその場に土下座した。

「ご主人さまっ!おめでとうございますっ!
 下劣なクソ猫、牧谷皐討伐おめでとうございますタヌっ!
 この南水無月、心よりお祝いもうしあげまするタヌっ!」

 籠釣瓶はゆっくりと水無月に近づいてくる。

「あなたはどういう殺し方をしてほしいのかしら」

「おめでとうございますタヌ!
 タヌはご主人様の下僕でございますタヌ。
 奴隷でございますタヌ。
 草履でございますタヌ。どうか踏んでくださいタヌ。
 ゾウリムシでございますタヌ。ミジンコでございますタヌ」

「どういう殺し方がいいか聞いたんだけど」

 籠釣瓶はお茶を垂らした刀で土下座している水無月の手の甲を軽く突く。

「ヒギイッ」

 刀は軽く水無月の手の甲を貫通した。
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