東京ケモミミ学園

楠乃小玉

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十四話 

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 八代師走に指示された手数通り、武は良太を公園に呼び出した。

 籠釣瓶も良太に付いてくる。

 武は良太に籠釣瓶を公園のベンチに座らせて待たせ、
 自分達は少し離れた場所に移動するよう良太に提案した。

 良太は何の疑いもなく、武の言うとおりにした。そして武は良太の耳元に口を近づけ、小声で言った。

 「いつも良くしてくれる籠釣瓶さんに良太くんからプレゼントをあげたらどうかな」

「え?でも物で釣ったりしたらダメなんでしょ」

「物じゃないよ、良太くんが自分で探して、
 感謝の気持ちを伝える事がメインだよ。プレゼントはその口実さ」

「それは良い考えだね!」

 良太は何の疑いもなく目を輝かせて頷いた。

 武は良心が痛んだが、これも良太が戦いに巻き込まれないためだ。

 本当は良太と籠釣瓶の仲はそっと見守ってあげたいのが武の心情であった。

 しかし、前の持ち主の悲劇的な死に方の話を聞いたあとでは、
 こうするしかないと思うようになっていた。籠釣瓶は何も知らない風な顔をして
 ベンチに座っているがすべて聞こえている。

 聞こえていなければ絶対に良太から離れるわけがない。

「ねえ神無、ちょっと用事があるから待っててくれないかな」」

 良太がそう言うと籠釣瓶はニッコリ笑って「はい」と言い頷いた。

 良太は少しでも籠釣瓶を待たせてはいけないと思ったのか、
 小走りで公園を出て、近くの雑貨屋に入った。

 そこでオルゴールを物色しはじめた。

 ひとつひとつ箱を開けて、音楽をたしかめる。

 そして「小さな恋のメロディ」の音楽が鳴るオルゴールを見つけると
 「これだ」
 と言ってそれをレジに持っていった。

 可愛いピンクのリボンの装飾と真っ赤なハート型のシールを貼ってもらって
 良太は喜びいさんで公園に向かった。

「ちょっと待って」

 良太が公園に入ると、弥生が呼び止めた。

「何ですか?」

「籠釣瓶さんは今おトイレに行っているの。
 女の子がおトイレに行ってること、男の子に知られたら恥ずかしいでしょ、
 特に好きな男の子には。だから、ここでちょっと待っていて」

「え、ああ、そうなんですか、わかりました」

 良太は素直に弥生の言葉を信じた。

「ぼくが籠釣瓶さんが帰ってきたかどうか見てくるよ。
 帰ってきたら、すぐに良太くんを呼びに行くね」

 言いながら武の心がズキズキと痛んだ。

 でも、やらなければならないのだ。

 良太を前の籠釣瓶の持ち主のように殺してしまってはならない。

 良太だけでも助けなければならないのだ。

 武は歯を食いしばって走り出した。

 しばらく走ると、急に体が軽くなった。

 卯月が武の首根っこをつまみ上げたのだ。

「おい、見つかるような走り方するな。すでに見つかっておろうがな」

 卯月はそのまま飛び上がって、
 籠釣瓶が座っているベンチから五十メートルほど離れた
 森林に着地した。

 籠釣瓶はものすごい怒りの形相で卯月と武が隠れている木陰の方を睨んでいる。

 弥生と武が良太に、籠釣瓶がトイレに行っていると言って
 騙したことが聞こえているのだ。

 武はそのすさまじい籠釣瓶の殺気に、武は背筋が凍り付きそうになった。

「卯月よ、そろそろ始めるかの」

 卯月の横に八代師走がやってきた。

「やれやれ、こんな所に隠れなくてもオレが一撃で倒すのに」

 奥坂長月が身をかがめて八代師走の後ろに続く。

「やってくれ奥坂の」

 八代師走がそう言うと奥坂長月は八代師走の背中に手をかざした。

 そこから大量の水を発射し、それが八代師走の体に吸収されてゆく。

「いくぞ卯月」

「来たか長さん待ってたホイ」

 八代師走は卯月の背中に手を密着させ、大量の水を卯月の背中に注入する。

「果てしない宇宙にっ、果てしないエネルギー!」

 卯月は叫びながら拳で地面を叩いた。

 すると、ものすごい勢いで籠釣瓶が座っている木製のベンチから芽が生えだし
 、蔓となって籠釣瓶の体に巻き付いた。

 その周囲からはケフナが大量に伸びだし、籠釣瓶の体を一瞬にして覆った。

「じゃあ、行くぜ、ラリホー!ラリホーラリルレロ!」

 叫びながら卯月は手のひらに火炎を発し、
 籠釣瓶の体を覆うケフナの林に投げつけた。するとケフナの林は一気に燃え上がる。
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