三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎

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晋編3 天下統一、そして

賈充2  李家の女丈夫

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賈充前婦、是李豐女。豐被誅、離婚徙邊。後遇赦得還、充先已取郭配女。武帝特聽置左右夫人。李氏別住外、不肯還充舍。郭氏語充:「欲就省李。」充曰:「彼剛介有才氣、卿往不如不去。」郭氏於是盛威儀、多將侍婢。既至、入戶、李氏起迎、郭不覺腳自屈、因跪再拜。既反、語充、充曰:「語卿道何物?」(賢媛13)


賈充かじゅうには二人の妻がいた。

ひとりめは李豊りほうの娘。
ただ、李豊が司馬師しばしの暗殺を
企てたことから処刑されると、
離婚の上、辺境に移された。

その後特赦が出て賈充の元に
戻ってきたわけだが、
賈充は既に、ふたりめの妻として、
郭配かくはいの娘、郭槐かくかいを娶っていた。

今回のケースに関し、
武帝さま、特例を出す。
賈充に二人の正妻を置いていいよ、
と許可したのだ。

ただ、李氏は賈充の家に
戻ろうとはしなかった。
別宅に引き籠る。

郭槐は賈充に語る。

「李氏を見舞いたく思うのですが」

あーマウンティングね。
したいよね。わかるよ。

その辺りを見抜いたか、賈充は言う。

「おすすめはせんぞ。
 あれは男だとしたら英傑と呼ばれる類だ。
 お前が行けば打ちのめされるぞ」

何あのクソ夫!
いいわよ、見てらっしゃい。

郭槐、全力で着飾り、
多くの侍従を連れて、李氏の元に出向いた。

が、別宅から李氏が姿を表せば、どうだ。
知らず膝を屈し、
拝跪する格好になってしまった。

慌てて夫の元に戻る郭槐。

「な、何なんですかあの女丈夫!」

それを聞いて賈充、つれなく返す。

「先ほどお前には、何と言ったかな?」


 ○


李豊
 司馬懿しばい存命中に司馬師の排除を図ったエグい人。仕事はサボるわ暗殺計画は主導するわ財産はろくに残さないわ、すごいんだかへぼいんだかよくわからない人だが、その娘に英傑の才気ありというのであれば、暗殺計画の為に韜晦していた、というふうにも考えられるかな。その方が娘が引き立つ。

郭配
 魏の名将、郭淮かくわいの弟。そしてその娘である郭槐は、この時代を代表する悪女の一人にも数えられている。更に言うとこのひとと賈充の間に生まれたのが、あの賈南風かなんふうだ。ついでにオマケすると賈南風の妹の賈午かごもかなりフリーダムな女性。後で出てきます。

 まぁ何てんだろね、賈南風はこの時代で司馬炎並みにこき下ろさねばならない人物の一人だし、けど賈充はあんまりこき下ろし切れないし、そうなったらブック的には郭槐を雑魚に仕立てるしかないよね。
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