三國志 on 世説新語

ヘツポツ斎

文字の大きさ
上 下
132 / 142
晋編3 天下統一、そして

羊祜3  羊公の鶴

しおりを挟む
世目殷中軍:「思緯淹通,比羊叔子。」(品藻51)


東晋の時代、その智謀をもって
嘱望されたひと、殷浩いんこうについての
世の評判は、

「そのスマートな思考は、
 まるで羊祜ようこのようだ」

というものだった。


劉遵祖少為殷中軍所知,稱之於庾公。庾公甚忻然,便取為佐。既見,坐之獨榻上與語。劉爾日殊不稱,庾小失望,遂名之為「羊公鶴」。昔羊叔子有鶴善舞,嘗向客稱之。客試使驅來,氃氋而不肯舞。故稱比之。(排調47)


さて、そんな殷浩が、隠棲生活の末、
出仕した後の話となる。

殷浩の知る優れた少年の一人に、
劉爰之りゅうえんしと言う人がいた。
庾亮ゆりょうと話していた時、
殷浩はしきりに劉爰之を褒めやそす。

これは是非とも取り立てたい。
こうして劉爰之、庾亮の属官となる。

早速の召喚を受けて、
庾亮と会話する劉爰之。
だが、うまく会話が噛み合わない。
緊張なのか、不調だったのか。

ともあれ庾亮、期待ほどじゃないな、
とがっかりし、かれを
「羊公の鶴」
と呼んだ。

というのも、
羊祜は一羽の鶴を飼っていた。
この鶴、美しく舞う、
という事で評判だった。

ある日羊祜が、客人に
この鶴のことを自慢した。

それは見てみたい。
早速客人、鶴を追い立てる。

すると鶴はじたばたしてばかりで、
全然舞おうともしない。

庾亮は劉爰之を、
そんな鶴に例えたのである。


 ○


劉爰之
 ほぼ名前しか残ってないレベルの人である。挽回できなかったんだな……。

庾亮
 庾氏は八王の乱勃発時、逸早く江南の地に疎開している。この一件を見るだけでも行動力実行力の高さはよく窺える。八王の乱収束後赴任してきた、のちの元帝司馬睿しばえいに大層気に入られ、姻戚を結ぶ。その後順調に権勢を伸ばし、一時は王導おうどうをもしのぐほどとなった。しかしそのやり口はあまりに苛烈であり、多くの者からの反感を買う。結果蘇峻そしゅんの乱を招き、妹の庾文君ゆぶんくんを失った。庾亮は命からがら荊州に逃れ、陶侃とうかんに泣きつき、乱を平定してもらった。元々陶侃は庾亮の政策で痛い目に遭っていたから怨みを抱いていたのだが、実際にあったらあっさり籠絡されている。陶侃チョロいし庾亮怖い。以上をまとめると、蘇峻の乱を起こし、鎮めた人、となろうか。こう書くと、実に酷いマッチポンプである。
 陶侃亡き後、陶侃の軍府を継承。更にその軍府は西府として、弟の庾翼ゆよくを経て桓温かんおんへと引き継がれる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河

墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。 三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。 全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。 本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。 おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。 本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。 戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。 歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。 ※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。 ※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

鉄と草の血脈――天神編

藍染 迅
歴史・時代
日本史上最大の怨霊と恐れられた菅原道真。 何故それほどに恐れられ、天神として祀られたのか? その活躍の陰には、「鉄と草」をアイデンティティとする一族の暗躍があった。 二人の酔っぱらいが安酒を呷りながら、歴史と伝説に隠された謎に迫る。 吞むほどに謎は深まる——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

音速雷撃隊

黒いテレキャス
歴史・時代
アメリカ海軍戦闘機パイロットと日本海軍航空隊桜花搭乗員が沖縄の空で見た物は…

女の首を所望いたす

陸 理明
歴史・時代
織田信長亡きあと、天下を狙う秀吉と家康の激突がついに始まろうとしていた。 その先兵となった鬼武蔵こと森長可は三河への中入りを目論み、大軍を率いて丹羽家の居城である岩崎城の傍を通り抜けようとしていた。 「敵の軍を素通りさせて武士といえるのか!」 若き城代・丹羽氏重は死を覚悟する!

処理中です...