127 / 142
晋編3 天下統一、そして
武帝1 「一」を得る
しおりを挟む
晉武帝始登阼,探策得「一」。王者世數,繫此多少。帝既不說,群臣失色,莫能有言者。侍中裴楷進曰:「臣聞:『天得一以清,地得一以寧,侯王得一以為天下貞。』」帝說。群臣嘆服。(言語19)
武帝さま、遂に帝位に就く!
そこでこの国の命運を占ってみた。
結果は「一」。
みんなドン引きである。
この占い、皇帝が何代続くか、
の結果として見られている。
という事は……。
もう武帝さまちょう不機嫌になるし、
誰もフォローできない。
そんな中、すっと裴楷が進み出た。
「臣めは老子の言葉の現出である、
そう愚考致しました。すなわち、
天が一を得る、とは曇りなき青空の事。
地が一を得る、とは限りなき地平の事。
そして、
王が一を得る、とは偏りなき天下の事。
これが、占いの結果でありましょう」
武帝さま、裴楷のこの機転に大喜び。
みんなも感心した。
○
老子の言葉
「昔之得一者,天得一以清,地得一以寧,神得一以靈,谷得一以盈,萬物得一以生,侯王得一以為天下貞。」道徳経下巻第三十九章。まーた上手いこと韻を踏んでんのが小憎たらしい。なお老子において「一」は、大雑把に言ってしまうとこの世の根源原理、と説かれている。つまり裴楷は「一」と言う占いの結果を、通常の解釈から捻じ曲げて言い切ったのだ。司馬炎登極の際にはまだ呉も健在だったし、うまいこと言ったもんだよなーと言う感じではある。
で、ちょっと補足。東西両晋時代には「清談」、いわゆる哲学談議の上手さがステータスとなっていた。この時の議論ベースは老荘の思想に関する解釈である。なので論語や老荘は、結構この時代の慣用句的にもりもり使われる。
老荘思想は単純に沼みたいな深さがあって面白いんだけど、一方では屁理屈のオンパレード(特に荘子)なので、そう言う意味でも面白い。
武帝さま、遂に帝位に就く!
そこでこの国の命運を占ってみた。
結果は「一」。
みんなドン引きである。
この占い、皇帝が何代続くか、
の結果として見られている。
という事は……。
もう武帝さまちょう不機嫌になるし、
誰もフォローできない。
そんな中、すっと裴楷が進み出た。
「臣めは老子の言葉の現出である、
そう愚考致しました。すなわち、
天が一を得る、とは曇りなき青空の事。
地が一を得る、とは限りなき地平の事。
そして、
王が一を得る、とは偏りなき天下の事。
これが、占いの結果でありましょう」
武帝さま、裴楷のこの機転に大喜び。
みんなも感心した。
○
老子の言葉
「昔之得一者,天得一以清,地得一以寧,神得一以靈,谷得一以盈,萬物得一以生,侯王得一以為天下貞。」道徳経下巻第三十九章。まーた上手いこと韻を踏んでんのが小憎たらしい。なお老子において「一」は、大雑把に言ってしまうとこの世の根源原理、と説かれている。つまり裴楷は「一」と言う占いの結果を、通常の解釈から捻じ曲げて言い切ったのだ。司馬炎登極の際にはまだ呉も健在だったし、うまいこと言ったもんだよなーと言う感じではある。
で、ちょっと補足。東西両晋時代には「清談」、いわゆる哲学談議の上手さがステータスとなっていた。この時の議論ベースは老荘の思想に関する解釈である。なので論語や老荘は、結構この時代の慣用句的にもりもり使われる。
老荘思想は単純に沼みたいな深さがあって面白いんだけど、一方では屁理屈のオンパレード(特に荘子)なので、そう言う意味でも面白い。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河
墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。
三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。
全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。
本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。
おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。
本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。
戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。
歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。
※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。
※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。
鉄と草の血脈――天神編
藍染 迅
歴史・時代
日本史上最大の怨霊と恐れられた菅原道真。
何故それほどに恐れられ、天神として祀られたのか?
その活躍の陰には、「鉄と草」をアイデンティティとする一族の暗躍があった。
二人の酔っぱらいが安酒を呷りながら、歴史と伝説に隠された謎に迫る。
吞むほどに謎は深まる——。


女の首を所望いたす
陸 理明
歴史・時代
織田信長亡きあと、天下を狙う秀吉と家康の激突がついに始まろうとしていた。
その先兵となった鬼武蔵こと森長可は三河への中入りを目論み、大軍を率いて丹羽家の居城である岩崎城の傍を通り抜けようとしていた。
「敵の軍を素通りさせて武士といえるのか!」
若き城代・丹羽氏重は死を覚悟する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる